日銀・黒田総裁「家計の物価許容度」発言から初会見(4)
日銀の黒田総裁は17日午後3時半からの会見で、最近の急速な円安への認識などについて、次のように述べました。
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――10年ものと10年より短い国債の利回り逆転は、日銀の金融政策によって生じたゆがみでは? 日銀は指し値オペを実施しているが、金利抑制に限界がくるとの見方について見解は?
イールドカーブコントロールについては従来から申し上げているとおり、短期の政策金利について、いわゆる政策、預金残高に対してマイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、10年もの国債の金利を0%程度、プラスマイナス0.25%の範囲内におさめることによってイールドカーブ全体を低位で安定させて、それによって経済の回復をしっかり支えるということで行ってきている。この考え方には変更はない。
そのために、国債の買い入れを弾力的に行っているし、海外の長期金利の高騰を反映しつつ、長期金利に上昇圧力が生じたということで、それに対しては2連続指し値オペを行って、全体としてのイールドカーブを、イールドカーブコントロールという形で低位に安定させてきている。
今後も日銀としては10年もの国債金利が0%程度で推移し、10年もの以外のゾーンについても、概ね整合的なイールドカーブが実現するように、指し値オペ、あるいは国債買い入れ金額の増額など、必要な措置を講じてまいる所存であり、イールドカーブコントロールに限界が生じていることはないと考えている。
――円安は経済全体にとってプラスという見解に変更はないか?
従来から為替レートについては特定の水準を目指すのではなく、あくまでも経済金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが最も好ましいと申し上げてきた。
そうした意味で、このところ起こった急速な円安の進行というのはそういったことに反しており、経済にマイナスになるということであるので、そういったことを明確に申し上げるとともに、今後とも、金融・為替市場の動向についてはよく注視していく必要がある。
特に、欧米では長期金利がかなり急速に上昇しており、その影響が、わが国の金利にもそれなりのインパクトを与えてきた。
適切なイールドカーブコントロールをしっかりとやっていく必要があるし、金融、為替市場はよく注視していく。
為替の問題につきましては、具体的な水準についてコメントすることは差し控えたいが、過去数週間に起こったような急速な為替の変動は企業の計画策定に大きな不確実性をもたらすことで、好ましくない、経済にマイナスになると考えている。
そういった意味で、具体的にそれが今、設備投資等に影響が出ているかというと、今のところは企業収益は高水準で推移しているし、設備投資も一部に弱さはみられるが、全体としてはかなりしっかりした動きをしているので。
今のところ直ちに、その為替の変動が企業の心理とかそういうものに大きな影響を与えたということではないかもしれないが、やはり様々な経済界の人も言っているように、急激な為替の変動は好ましくないというのはまったくそのとおりだと思っている。
なお、日本経済全体として回復途上にあり、そういう中でしっかりと支えていく必要が金融政策にあると思う。
また、仮に、さらに必要があれば、躊躇なく金融のさらなる緩和をする用意があるということだが、今のところ日本経済は内外のいろいろな状況を反映して、一部弱めの動きも残っているが、他方でやはり感染症の影響が和らぎ、消費が回復しつつあり、設備投資も高水準の企業収益を反映してかなりしっかりした動きをしているので、今の時点でさらなる金融緩和をしなければいけないということではないと思うが、必要あれば当然そういうことも行うということだ。