【解説】デパ地下でみる「円安」 日銀・金融政策の影響は
日本銀行は、18日から2日間にわたり金融政策を決める会合を開き、金利を低く抑える現在の大規模な金融緩和策を維持することを決めました。
今回、日銀はいまの金融政策を修正しなかったものの、来年には政策を変更するという見方が強まっているということですが、もしそうなると、私たちの暮らしにはどう影響してくるのでしょうか? 経済部・渡邊記者の解説です。
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私はいま、都内の百貨店の地下の食料品売り場、いわゆる「デパ地下」にきています。夕方、かつ年末も近いということで、多くの人が買い物に訪れています。
今年1年間で値上げした食品の数は“3万2395”。売り場を少し歩いてみても、オリーブオイルやパンなどが値上がりし、輸入品であるワインも、こちらでは1割ほど値上がりしたということです。
この物価高の原因のひとつは、“長引く円安”です。
19日も、日銀が政策を変更しないとわかってから、さらに植田総裁の会見が行われた時に、少し為替が円安に動いています。
直近2年間の円相場のグラフを見ても、円安傾向が続いているのがわかります。先月には一時、1ドル=152円近くまで円安が進みました。日銀が金利を低く抑える政策を続けていて、円が売られやすい状況になっているため円安が続いているのです。
買い物客からも、家計への負担になるという声が聞かれました。
買い物客
「食品、あと生活用品。少し前より何十円、何百円と上がっているのを日々感じる」「だいたいの想定金額より1割~2割上がっていて、非常に生活に影響あると感じています」
ウクライナ情勢などを受けて、原材料高、エネルギー高となっているところに、円安がさらに輸入価格を押し上げました。専門家によると、その影響で今年も値上げする企業が相次いだということです。
ーー円安の影響は、家計にはマイナスですが、逆にプラスになる面もあるのでしょうか?
はい、こちらの百貨店でも円安のプラスの影響がでています。外国人客による免税品の売り上げが好調です。先月はコロナ前の2019年度と比べて倍以上の売り上げとなり、百貨店全体の売り上げとともに、過去最高を記録したということです。
円安によって、外国人観光客は日本で「安く」買い物ができるようになり、日本の化粧品、さらにブランド品の購入も増えているそうです。
ーー日銀の金融政策、今回は変更はなかったということですが、このまま暮らしには厳しい状況が続いていくのでしょうか?
日銀の会合後、植田総裁は会見で、「賃金物価の好循環が実現するかどうか、もう少し見たいというのがメンバーの考えだ」と述べ、慎重に見極める姿勢を強調しましたが、一方で現在の大規模な金融緩和について、「平常時ではやらないような措置を実行している」とも述べ、今後、政策の修正を検討していく考えもにじませました。
もし、日銀が政策変更して金利が上がっていくと、私たちの生活にどんな変化がでてくるのか? 専門家などへの取材によりますと、まず、いまは円は金利が低いので、売られて、円安が続いているのですが、円安に歯止めがかかるとみられています。そうすると、食料品などの物価高は抑えられていく可能性があります。
そして、すぐに、大きく、ということではありませんが、私たちに身近な金利も上がっていく可能性があります。例えば、銀行預金の金利も、少しずつですが上がっていきます。一方で、同じ金利が上がるといっても、住宅ローンの金利や、企業の借り入れの金利も上がっていく可能性があるということです。
ーーそうした変化は、いつごろ起きそうなのでしょうか?
日銀は物価上昇に伴い、確実に賃上げが行われるかも重視していますので、来年春の賃上げ、例えば春闘などの結果も見極めながら判断していく見通しです。