ガソリン、リッター200円超えも補助金終了? 物流、行楽地、悲鳴
ガソリン価格は先週1リットル当たり180円を超え、15年ぶりの高値となっている。エネルギー価格高騰の中で始まった政府の“ガソリン補助金”。9月末で終了が予定されているが、ガソリン価格は上昇を続けていて、来週には統計開始以来の最高値185円10銭を超える可能性もある。
【ガソリン高騰の中、補助金終了期限】
全国のレギュラーガソリンの平均価格は上昇を続けていて、先週1リッター当たり180円30銭をつけた。来週には統計開始以来の高値となる185円10銭を超える可能性も出てきている。
原油価格をめぐっては、コロナ禍からの海外経済の回復で値上がりに拍車がかかり、政府は経済対策として2022年1月、国内のガソリン価格が1リットル当たり170円を超えた際に「激変緩和措置」を発動。“ガソリン補助金”の給付を開始した。
石油元売り各社(出光、ENEOS、コスモ石油など)に補助金を給付し、ガソリンスタンドなどでの販売価格を抑制する事業だ。この補助金事業は期限が来月末に迫っている。
【「補助金は麻薬」…】
ガソリン補助金は、車のユーザーがガソリンの購入価格を抑えられるだけでなく、物流費を抑制することで、様々な商品やサービスの価格を抑える効果も見込まれている。
補助金があってもガソリン価格の高騰が続く中、補助金の延長を求める声も出ている。国民民主党の玉木代表は「これだけガソリンが値上がりしても、与党は何もしない。決めているのは補助金の縮小だけ。少なくとも元の水準で春ぐらいまで延長すべきだ」と発言。
一方で、ガソリン補助金を所管する経済産業省の関係者からは「ガソリン補助金は、麻薬みたいなものだ。見かけ上、ガソリン価格が下がっているように見えても、実際は下がっていないのだから、永続的に続けるのは得策ではなく、どこかでは区切りをつけないといけない」と懸念する声もあがる。加えて「円安に補助金を出し続けるわけにはいかない」とも言う。
つまり、このところの原油価格は補助金事業が始まる前の2021年11月の水準に戻ってきているにもかかわらず、円安が主な要因でガソリン価格が高騰しているというのだ。円相場は、2021年11月は1ドル=114円近辺だったものが、現在は1ドル=145円台まで値下がりしている(8月16日現在)。
また、経済界からも、かねて補助金に異議を唱える声がある。7月20日に開かれた経済財政諮問会議では、民間議員から“今後は経済・物価動向を見極めつつ、激変緩和対策を段階的に縮小・廃止すべき”と提案が出された。物価高の影響を強く受ける低所得者や地域等に重点を絞って、きめ細かく支援すべきとしている。
提案の意図について、諮問会議の議員を務める新浪剛史氏(経済同友会代表幹事)は、こう説明している。「国が補助金をつける形になって、どうやったらエネルギーコストが下げられるかとか、こういう工夫をしないで、ずっとこれを受け入れてもらっていたら、国家財政厳しいですよね」。原発をどうするかも含めて、エネルギーコストを下げる工夫が必要だということを伝えたかったとしている。
【10月以降、リッター200円も】
石油情報センターは先週の時点で、今週のガソリン平均価格は先週の180円30銭より、さらに値上がりすると予想している。補助金がなかった場合、200円目前の195.5円となる見込みだ。10月以降は200円前後の価格に落ち着く可能性があるという。ピンチをチャンスに変えて、コスト削減やイノベーションを進められるだろうか。