日銀がサプライズ――金融政策の修正で“事実上の利上げ” 「大規模緩和」副作用の軽減狙う 物価高と景気どうなる?
日銀が20日、大規模な金融緩和策を修正すると発表しました。市場は「事実上の利上げ」と受け止め、大荒れとなりました。このタイミングで金利変動の許容範囲を変更した狙い、そして円安や物価高、景気といった私たちの生活への影響などを考えます。
■大荒れの金融市場…20日に何が?
有働由美子キャスター
「びっくりした方もいらっしゃるかもしれませんが、20日正午過ぎに突然、円相場で一気に円高が進みました。これまでに5円ほど円高が進み、1ドル132円台をつけました」
「このタイミングに何があったかというと、日銀が今までの大規模な金融緩和策を修正すると発表しました、黒田総裁は『利上げではない』と言っているものの、市場にとっては『事実上の利上げだ』と大変なサプライズになりました」
「日経平均株価も19日の終値に比べて一時800円以上も下がるという、大荒れとなりました。私たちの暮らしに関わる円安や物価高、景気にどんな影響があるのでしょうか?」
■金利の基準と経済への影響は?
小野高弘・日本テレビ解説委員
「日本の景気を回復させるため、これまで日銀は金利を低く抑えてきました。金利が低いと、例えば家を買いたい、企業が新しいプロジェクトをやりたいという時に、お金を借りやすくなり、経済活動が活発になります」
「長期金利のグラフを見ると、低いところで横ばいです。これまで日銀は、金利が変動する許容範囲をプラスマイナス0.25%をめどに抑えていました。実際の長期金利も、基準となってきた0.25%をめどに推移しています」
「20日、これをプラスマイナス0.5%にまで広げると発表しました。つまり『ここまでは許容範囲だ』と広げた形です。するとその実際に、その基準の近くの0.46%にまで上がりました」
■大規模な金融政策の「副作用」は?
有働キャスター
「今、許容範囲を広げたのなぜでしょうか?」
小野委員
「例えて言うと、金利を低く抑える大規模な金融緩和策は、日本経済に活力を与える強い薬です。ただ金利の低い日本の円より、金利の高いドルが買われて、円安が加速。これも1つの要因となり、物価高も進むという副作用が起きていました」
「そのため、副作用の軽減を狙い、いわば薬を優しいものにしました」
有働キャスター
「物価高は収まると考えていいのでしょうか?」
小野委員
「少しは期待できそうです。日本総研主任研究員の下田裕介さんは『食品のなかでも円安に起因する値上がりは和らぐかもしれません』と話しています」
有働キャスター
「暮らしは少しは楽になりますか?」
小野委員
「賃金アップが伴わないような、物の値段だけが上がっていく状況は抑えられる可能性もあります。ただ、金利が上がれば景気を冷やすことにもなりかねないという指摘もあるため、先行きは分かりません」
■落合さん「円安と景気対策の実験」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「今の状況なら円安に進むのを防ぐためにはある程度分かる判断ですが、今後どうなるかの予想は結構難しいと思います」
「岸田首相は『投資に力を入れる』というコンセプトで減税などを発表していますが、今回は一般的な企業投資にお金が向かわない動きです」
「円安対策と景気対策、両方取ろうとしたらどちらが残るかの実験だというのが率直な感想です。つまり、やってみないと分からないからやってみる、という感じがします」
有働キャスター
「その先がどうなるかも注目していきたいです。日銀の黒田総裁は2023年4月に任期満了が迫っていますが、賃金の上昇や景気に関わる金融政策がどうなっていくのか、私たちもできる限りかみ砕いてお伝えしていきたいと思います」
(12月20日『news zero』より)