今年は豊作の大根“大量廃棄処分”のワケ
寒い時期ほど甘みが増すといわれ、今が旬の大根が大量に廃棄処分される事態となっています。今年は豊作だという大根。熱々のおでんやお鍋など、需要が高まるはずのこの時期に何が起きているのでしょうか。
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お客さん
「ちくわぶ2個、じゃがいも2個」
次々と“おでん指名”するお客さん。指名率ナンバー1は、やはり大根です。
お客さん「大根2つ」
――大根2個?
お客さん「うん、2個」
丸忠蒲鉾店・日高幸子さん
「大根が一番売れますよね、まずおでんというと大根を注文して、足しても足しても買ってくださる」
おでん界、不動のエースは大根。今、店にとっては嬉しい状況が続いているといいます。
丸忠蒲鉾店・日高幸子さん
「(大根は)安いですよね」
大根1本あたりの仕入れ値は、去年と比べて半分ほどです。
丸忠蒲鉾店・日高幸子さん
「(農家が)たくさん作って、安くなったのかなと思うけど」
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今年は天候に恵まれ、豊作だという大根。千葉・市原市の産地へ向かうと、農協には取れたての大根が大量に持ち込まれ、1本1本、手早く出荷作業が行われていました。
ただ、豊作ゆえの問題があるといいます。
JA市原市 経済部・東城尚幸さん
「収穫数が多いということなので、(市場に)出てしまうと、赤字になってしまうというのがある」
市場に出しても売れ行きが悪く、余っている状態になっていて、廃棄せざるを得ない状況にまでなっているというのです。
――どこまでが廃棄?
JA市原市 経済部・東城尚幸さん
「全部。本当はおいしく食べられるんですがね…」
畑一面、8000本ほどの大根は全て廃棄予定だといいます。一角には、すでに廃棄されたものもありました。
育てた農家は「本当に子どもと一緒で、せっかく手塩にかけて育てたものなので、出荷ができなくなるのは非常に残念で、心が痛いです」と話していました。
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今年は豊作貧乏と嘆く農家。千葉に限らず、全国で同じ現象が起きているといいます。
東京シティ青果・時得太郎さん
「なかなか価格低迷から抜け出せないような状況です。業務筋、ようするに飲み屋さんとか、なかなかお客さんが戻らない状況」
大根の消費で重要だと話すのが、飲食店の需要です。しかし、新型コロナウイルスの感染再拡大で、今後ますます需要は冷え込むとみられます。
さらに、取り扱いが減っているというのが、コンビニのおでんです。
東京シティ青果・時得太郎さん
「加工して納める業者さんがいるんですけど、『需要が減ってるよ』と」
そうすると、大根にとって頼みの綱は、私たちの食卓での消費です。
ベニースーパー・赤津友弥本部長
「きょうは128円、通常は158円~198円くらい」
買い求めやすい価格となっている大根。しかし、取材中、手に取る人はなかなか現れません。
ベニースーパー・赤津友弥本部長
「10~20年前に比べて、大根の消費は若干落ちているのかなと」
主婦からも「余っちゃいますよね、まるまる1本だとね」「やっぱ(日が)持たないから」といった声が聞かれました。
ただ、「安いから買おうと思って、『大根おろし』でも『おみそ汁』でも『煮物』でも『おでん』でも」といった人もいました。
味わい方は様々。安くなっている今こそ、食卓に並べてみてはいかがでしょうか。