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部門売却へ…揺れるシャープ液晶開発の現場

2015年12月28日 6:10
部門売却へ…揺れるシャープ液晶開発の現場

 スマートフォンでもおなじみの液晶パネル。この「液晶」でかつては世界市場をリードしていた「シャープ」は今、液晶事業の売却を余儀なくされている。揺れる液晶開発の現場に潜入した。

■いざという時…技術開発部長の胸中は?
 シャープの研究開発の総本山「天理事業所」(奈良・天理市)。シャープの最先端技術を担当するデバイス技術開発部の伊藤康尚部長は、100人近い技術者を指揮している。

 伊藤部長「日々研さんしている程度にしか、いざという時もあまり力は出ないと思う。ですから、日々研さんを惜しまないで、がんばっていただきたい」

 「いざという時」-伊藤部長の胸中にあったのは、自分たち液晶部門が、シャープから切り離される時のことだった。今年10月の会見で、シャープの高橋興三社長は、複数社と液晶部門売却の協議をしていることを明らかにした。

■液晶事業の自力再建を断念
 液晶事業を経営の柱に据えてきたシャープだが、韓国や台湾勢との価格競争に苦戦。さらには、日立・東芝・ソニーの中小型ディスプレー部門が統合した「ジャパンディスプレイ」とも顧客の奪い合いとなった。液晶の不振から、シャープは4月からの半年間(4~9月連結)で836億円の最終赤字を計上。ついに、液晶事業の自力再建を断念した。

■“透明ディスプレー”の完成を急ぐ
 売却を宣告された液晶部隊。そんな中、彼らは、最先端の液晶の完成を急いでいた。それは、透明の板に動画も映し出すディスプレーで、透明にすることで、パネルを使っていない時に空間の圧迫感がなくなることを目指している。東京メトロ・豊洲駅のホームドアで実験中のこのディスプレー。画面にホーム上の様子が映り込み、反射して見づらくなってしまうという問題がわかり、さらに改良を重ねることになった。

■技術の海外流出を食い止められるか?
 シャープは1973年、世界で初めての液晶パネルを搭載した電卓を発売した。その後、テレビ、携帯電話への応用、そして、技術的に四角でなくては無理だと言われていた液晶を円形にすることにも成功。しかし、海外勢が割安な液晶を販売する中、技術力の高さはそのまま収益にはつながらなくなっていた。

 高橋社長「(中国で)高精細の液晶の比率が増えると思ったが、完全にはずれた」

 液晶事業の自力再建を断念したシャープに、莫大(ばくだい)な資金力を持つ台湾のメーカー「ホンハイ」が買収提案を行っている。この状況に政府関係者は、「これだけ日本が先行している液晶技術なのに、それを一企業が事業運営に失敗したからといって、手放していいはずがないでしょう。お金を入れてでも守るしかない」と話した。

 国の関与の高い官民ファンド「産業革新機構」が、シャープの液晶技術の海外流出を食い止めようと、「ジャパンディスプレイ」と統合させることなどを調整している。

■存在価値は「新しいモノをつくり出すマインドと技術」
 透明ディスプレーの会議から1週間後、伊藤部長らは実験中の液晶パネルの改良を進めていた。東京メトロからも要望を聞き取り、完成を目指す。

 液晶部門が売却される見通しの中、担当者たちはどのような気持ちなのだろうか。

 伊藤部長「我々の存在価値はどこにあるか。新しいモノをつくり出すマインドと技術、これ抜きには我々の価値はない。それだけは維持して強くしていけば、たとえどんな形になっても、幸せな未来が待っていると思う」

 シャープの液晶事業の売却先や方法は、今年度内に決まる見通し。