マネーフォワード生んだ発想と意志 1/5
キーワードを基にビジネスのヒントを聞く日テレNEWS24・デイリープラネット「飛躍のアルゴリズム」。今回のゲストは、自動家計簿アプリ「マネーフォワード」で知られる、株式会社マネーフォワードの代表取締役CEO・辻庸介氏。
辻氏は1976年生まれの39歳。京都大学農学部を卒業し、ソニーへ入社。その後、マネックス証券を経て、2012年に株式会社マネーフォワードを設立。個人向けの自動家計簿アプリ「マネーフォワード」の開発などを手がけた。
■「家計簿を自動化する」という発想
ひとつ目のキーワードは「手入力をなくし、自動的に家計簿を作成。カギは徹底したユーザーインターフェースの改善だった」。自動家計簿アプリ「マネーフォワード」の開発の背景やコンセプトを聞いた。
――ユーザーインターフェースの改善とはどんなことだったのでしょう。
みなさんは、お金について「自分がいくら持っているんだろうか」「いくら使っているんだろうか」とか、なかなか把握できていなかったのが今までだったと思うのです。家計簿をつけようとしても、忙しいので毎日記すのが難しいと―そういう現状を考えて、じゃあ、銀行口座などを登録すると、後はもう全部自動で機械が勝手に情報をもってきて、自分の代わりに家計簿をつけてくれる、そういうサービスにすればいいんじゃないかと。
さらに、そのインターフェースも、グラフでパッと見たら、「自分がどのくらい使っているか」「どういうことに多く支出しているか」とか、そういうのがわかりやすくなるようにしようと。そういった理由で開発しました。
■セキュリティーは特に重視
――マネーフォワードを実際に使用してびっくりしているのは、本を買ったり、洋服を買ったりすると、自動的に仕分けがされるんですが、これはどういう仕組みが使われているんですか。
システムの裏には、巨大な“辞書”が入っていまして、例えば「○○に行ったらこれは飲食費」とか「こういう店で買ったら衣装代」とか、そういうことを学習して、賢くなっていくような仕組みがあるんですね。その人に応じた家計簿ができていくというかたちになります。
――自動だと便利ですが、その半面、セキュリティーが気になると思うのですが、そのあたりはどうなのでしょう。
我々のようなインターネットサービス―特にお金を扱うものは、セキュリティーが大事ですので、経営の一番大事なプライオリティーに置いています。セキュリティーというのは、我々のような金融機関出身者がつくっているので、かなり堅牢(けんろう)なシステムをつくっているんですけども、セキュリティーというのは仕組みと、そのシステムをどう運用するかという、この2つが大事なんです。
例えば、仕組みの問題では、「暗号化通信をしっかり行う」「データを分離しておく」などで、運用の問題では、「人が簡単にアクセスできない」「アクセスする場合は、三者から承認が必要」だとか、そういういろんな仕組みを使っています。
■金融業界も大きく変わっている
――そのようなシステムを構築する上での苦労はありましたか。
これは本当にゼロから始めたサービスで、ユーザーの意見を聞きながら、スマートフォンで毎日使っていただくようなアプリなので、「もっとこういう風にして欲しい」という要望をたくさんいただきながら、ひたすら開発をするものでした。もの作り、サービス作りを毎日毎日しているという感じですね。
――銀行とかカード会社と連動しているというのが、このマネーフォワードの特色のひとつだと思いますが、銀行をはじめとする金融機関などと、どのような経緯で連動できるようになったんでしょうか。
我々はいくつかの銀行とは、資本提携をさせていただいています。銀行もいま、ITで、金融業界が大きく変わってきているというのがあります。まさに「フィンテック(金融の『finance』と、技術の『technology』を組み合わせた造語)」という言葉をご存じかと思いますが、そういったサービス、新しい取り組み、ユーザーにとって本当に新しい金融サービスを届けようという金融機関が増えています。そういう意味では、本当にユーザーに新しいサービスをつくっていこうという、そういう新しい流れができているんじゃないかと思います。