2017年度予算案から見る日本の将来像
政府は過去最大となる97兆4500億円の2017年度の予算案を閣議決定しました。この予算から見えてくる日本の将来像を検証します。
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国の一般会計の総額は膨らみ続け、過去最大を5年連続で更新しました。膨張の要因は、社会保障費が初めて32兆円台に乗ったことです。政府は医療や介護で高齢者の自己負担を増やすことにして、社会保障費の伸びの目標を5000億円に抑えました。しかし、高齢者は今後も増え続け、このままでは、社会保障費が毎年1兆円は膨らみ続けてしまいます。
総務省によりますと、2012年は65歳以上1人に対して20~64歳が2.4人だったのが、2050年には1.2人になると推計され、1人の高齢者を1人の若者が支えるという厳しい状況になるのです。社会保障費に思い切ってメスを入れなければ、予算の膨張を食い止めることはできず、若者世代にツケを回すことになります。
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また、防衛費も過去最大を更新し、5兆1000億円を計上しました。背景にあるのは、核実験を繰り返す北朝鮮や海洋進出を活発化させる中国への対応で、防衛費の増加は、5年連続となります。ただ、この中には、アメリカのトランプ次期大統領が公言する「同盟国の負担増」の要素は入っていないため、トランプ氏の出方次第では、新たな課題も突きつけられることになりそうです。
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さらに、安倍政権が力を入れる施策も盛り込まれました。まず、保育士の給与を月額6000円アップし、経験を積んだ人にはさらに4万円の賃上げを行います。また、介護士の給与は月額平均で1万円増やすなど、人材確保のために処遇の改善を図ることになりました。
次に、所得の低い世帯を対象にした大学生などの給付型奨学金制度が創設されます。成績など一定の条件をクリアすれば、返済義務のない給付金を受けられるというもので、2018年度の本格的な導入を前に、月額2万円から4万円の支給が2017年度から前倒しで始まります。
そして、科学技術振興費は約1%増の1兆3000億円となりました。この中には、人工知能、いわゆるAIやロボット開発などに75億円、自動走行システムの開発などに63億円が計上されましたが、成長戦略につながる施策としては、小粒にとどまったという見方もあります。
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歳入では、新たな借金となる新規国債の発行額をわずかに減らしたものの、国債への依存度は35%と、借金頼みの構造は変わっていません。税収は57兆7000億円を見込んでいますが、経済成長率が名目で2.5%の伸びと極めて高い見通しのもとで達成できるものです。さらに、国が政策のために使うお金をその年の税収などでまかなえるかどうかを示す「基礎的財政収支」は、10兆8000億円を超す赤字となっています。
歳入と歳出のつじつま合わせが限界となり、2020年度に「基礎的財政収支」を黒字化するという目標の達成はかなり厳しいものとみられています。