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成功例ゼロ「食のネット販売」に挑んだ男4

2017年12月18日 19:55
成功例ゼロ「食のネット販売」に挑んだ男4

オイシックスドット大地・高島宏平社長に聞く「飛躍のアルゴリズム」。3つ目のキーワードは「相次ぐ新規参入、脅威ではなく『歓迎』」。食品宅配の現状とこれからを、「大地を守る会」との経営統合の意義を含めて、語ってもらった。


■他社の参入、実は「ネガティブな影響」少ない

――生鮮食品のネット通販はアマゾンやセブン&アイ・ホールディングスも参入が相次いでいます。こうした動きについての影響というのはあるんでしょうか?

そうですね。歓迎って書いてますが、すごく歓迎はしていない(笑)。歓迎は、強がりで言っているみたいなところもあるんですが、でも、まあ実際のところはですね、僕らが2000年から会社を立ち上げてから、かなり多くの方々がですね、食品のeコマースにチャレンジはされてます。

最近で言うと、イトーヨーカドーさんはずっと前からやられてますし、楽天さんもスーパーをやられたりとか。で、アマゾンさんがこられて、セブン&アイさんもやられるみたいな感じなんですが、どんどんプレイヤーさんが増えてくる今までの歴史の中で、私たちがネガティブな影響を受けたことは、あまりないんですよね。そうやってその食品のインターネットで買うということ自体が普通のことになっていった方が我々にとっては、ありがたいかなというふうに思っています。

最初の方は、「ネットでキュウリを買うとか意味わかんない」っていう感じだったので、その頃に、それは「全然、意味わかることなんですよ」っていうのを説明する方が、やっぱり大変だったので、増えるのはいいですよね。


■「便利」よりも「プレミアム」に特化

――今後も食品宅配事業の市場っていうのは、まだまだ余地があるとお考えですか?

そうですね。余地があるというよりは、本当にまだ始まったばっかりという感じなので、これから2倍とか3倍とかっていう話ではないと思いますね。10倍とかもまだまだ小さいと思ってまして、何十倍か、何百倍かにはなるかなと思いますね。その時に、誰が残ってるかっていうのは、私たちも含めて、様々な努力が必要だとは思いますが、マーケット自体は、本当にまだ始まったばかりだと思いますね。


――その始まったばかりの「食品×ネット」。まあ、いろいろな販売方法はあるとは思うんですけれども、オイシックスとして最大のネットでの売り方の特徴っていうのは何なんでしょうか?

そういう意味では、私たちは比較的、自分ではプレミアムというふうに言っているんですが、わざわざ「ネットで買う必要のあるもの」を売ってるんですよね。ネットの方が便利だよねっていうネットスーパーさんもすごく多いと思うんですが、私たちは便利というよりは、ネットで買う価値があるよねっていうものを――ピーチかぶにしても、ミールキットにしてもですね、商品そのものに価値があるということが、私たちの特徴だと思いますし、ネットの領域で、そのカテゴリーに特化してるところはあまりないので、僕らがマーケットを作る義務があるというふうに思っています。


――会員の方にもおすすめのリストっていうのを提案するっていう、提案型っていうような売り方っていうのは、どんな狙いがあるんでしょうか?

やはりですね。買い物を普通にしてると、普段買うものしか買わなくなっていくんですよね。そうするとちょっとしたチャレンジの食材とか、なかなか買われなくなってしまって、そうすると変化のない食卓になるので、無理のない変化をちょこっと提案する。あるいは、いま旬で何がおいしいかっていうのは、僕らが一番よく知っているので、それをお客様にお伝えすると、そういう意味ですね。


――やっぱりネットの強みを生かしながら、データ分析とかそういったところにもやっぱり?

もちろんそうですね。もちろん一人一人のお客様に応じて違ったものを提案しているんですが、それはお客様の好みとか、過去ご購入いただいているもの、あるいは、ご購入いただかなかったもの、そういったものをベースにこのお客様にはこういった商品がいいんじゃないかっていうことで提案しています。


■「切磋琢磨している場合でない」経営統合のワケ

――有機野菜など宅配業界トップのオイシックスなんですけれども、今年10月、業界3位の「大地を守る会」と経営統合されたと思うんですが、その狙いを教えてください。

経営戦略というよりは、この小さな、これから大きくなっていくような有機宅配業界において、小さな会社同士が、切磋琢磨している場合ではないなと思ったんですよね。

やっぱり力を合わせた方が日本のためだというふうに思ってまして、僕らが売ってる食べ物は、作った人が食べられる食べ物なんですが、作った人が食べられる食べ物がまだニッチなんですよね。それはあんまり良い社会じゃないなというふうに思っていて、それが普通の選択肢になるようにするには、まあ、力を合わせた方がいいだろうというふうに考えて、一緒になりました。


――オイシックスと大地を守る会、それぞれターゲットも、中身も違うような気がするんですけれど、それはブランドをそれぞれ残していくっていう形で?

そうですね。オイシックスの方は比較的若い小さなお子様のお母様・ご夫妻がメインですね。あとは妊娠中の方とか、DINKSの方。大地を守る会の方は、どっちかというと、お客様がもう独立されたようなぐらいの年齢で、丁寧な暮らしをお二人で過ごしていこうという方がメインのお客様になります。


――そうした中、今後、一番の課題っていうのは、こういう「ネット×食品」っていったら、何なんでしょうか?

そうですね。まあ、伸びていく業界なので、しっかりと対応していかなきゃいけなくて、ひとつだけ課題を挙げるのは、なかなか難しいんですけれども、もちろんいいものを提供して、お客様にご満足いただくと、お客様の期待値は上がるので、それを超えるサービスを常に提供していかなきゃいけないし、あるいは、いい農家さんを常に増やし続けなくちゃいけないので、その辺も課題ですね。