大企業の働き方改革“中小企業にしわ寄せ”
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「大企業の働き方改革、中小企業にしわ寄せ」。日本テレビ経済部・安藤佐和子解説委員に聞いた。
中小企業庁は今月、長時間労働の要因についての緊急調査結果を公表した。その結果、6割の中小企業が、大企業から短期間での納入を迫られ、長時間労働につながっていることがわかった。また、中小企業からは、「取引先の大企業が残業を減らすために、下請けの納期が厳しくなっている」などの声が寄せられた。
――フリップをお願いします。
『共倒れ回避、他人の庭先も掃こう』と書きました。共倒れというのは大企業と中小企業なんですが、日本の企業のうち99%が中小企業ですよね。大企業は働き方改革で、労働時間を短縮したりすることで、“自分の庭先を掃いている”わけですが、気づいてみたら中小企業のほうに、掃いたものが行ってしまったというのが今の現象ではと思います。
大企業が労働時間を短縮しようとするときに何が起きるかというと、「業務を外部に発注」すると下請けは「業務は増加して、納期は同じ」となると、その場合、下請けは残業したり休日出勤したりしなければならなくなると。そういう声が実際に寄せられています。
また、大企業が「残業させない」となると、朝早く来て仕事をすることになりがちです。その際、朝から仕事したいということで、必要なものを「先に納品しておく(朝いちの納品)」ということが発生して、下請け企業の社員に負担がきているというのも出てきています。4月から労働時間に関する法律がより大企業にとっては厳しくなりますので、そのしわ寄せが中小企業にきてしまっているという状況です。
――どうすればいいんでしょう。
実は大企業にできることはあるんです。本来、中小企業にとって注文が増えることには、利益面から見るとうれしいことなんですね。でも、大企業は長いデフレの間に、中小企業に対して、支払いを値切ってきたりしてきました。それを今、円安もあって、大企業は過去最高益をあげているのに、その分をまだアップしていないというのがとても問題になっています。だから短納期にするなら、その分プラスアルファしますとかで適正な価格を払う、そうすれば、中小企業が利益を得て、そのお金で人を増やすとかできるので、今のような長時間労働も防げるというのがひとつです。
もうひとつは、中小企業もサクサク仕事ができるように、ITとかロボットなどを導入できるように大企業が支援してあげる――これはボランティアじゃなくて、取引先の企業が倒れたりすると、結局は大企業に跳ね返ってくることなので、そのためにも『他人の庭先も掃こう』ということですね。
■安藤佐和子プロフィル
日本テレビ経済部・解説委員。ライブドアの球団買収騒動から取材し、当時の堀江社長の衆院選出馬などをスクープ。また、シャープや東芝の経営問題を報道してきた。現在は、民間企業の取材キャップを務めながら、経済ニュースを分かりやすく伝えている。
【the SOCIAL opinionsより】