三菱地所社長が語る“丸の外”の戦略図 4
三菱地所株式会社・吉田淳一社長に聞く「飛躍のアルゴリズム」。4つ目のキーワードは「“丸の内の大家”から世界へ」。働き方改革などで、オフィスをめぐるニーズや価値観が刻々と変化していく中、“丸の内の大家”はどこへ向かおうとしているのか。
■“オフィス不要論”もささやかれる中で――
――やはり三菱地所というと“丸の内の大家さん”というイメージが強いのですが、今、働き方改革で在宅勤務が広がっていくと、オフィスの需要がそこまであるのかと心配してしまうのですが。
そうですね。人口減少社会というのはもう避けて通れません。働き方改革も、各企業で進んできているということで、一時、オフィス不要論というようなものも、ささやかれてきました。
しかし、我々は、やはり人と人がコミュニケーションをとって新しい価値を見出していくということの大切さというものを、常に意識しながら、本当に求められる空間づくりを考えていかなければならないと思っております。
海外でも、フェーストゥフェースというのは、重要性が高まっていると思います。それは、やはり人と人が交流してこそ、新たなアイデアが生まれますし、本当の信頼というものを築けるかというのは、やはりフェーストゥフェースが大事になってくると思っています。
やはりそういったことに役立つオフィス空間・エリアづくりというのは、これからも重要性はあると自信を持っているところです。
■丸の内から丸の外へ…日本の魅力を世界へ発信
――まさに大手町の本社にその哲学が生かされているなと思ったのですが、やはりあそこはモデルオフィスとしての意味合いもあるのですか。
はい。実際、外部の人たちと自由に色々な闊達(かったつ)な議論ができるようになっております。あるいは、新しいオフィスを使って実証実験という形で、外部の企業と協力しながら、新しいオフィスの中での協業というものをどんどん進めているところです。
――フェーストゥフェースで新しいものが生まれるという話もありましたが、今年まさにラグビーワールドカップがあります。そして来年には東京オリンピック・パラリンピックの開幕が控えています。さらに世界からも日本が注目されてまたいろんな人がフェーストゥフェースで交流も生まれると思うのですが、三菱地所として挑戦したいこと、考えていることは。
まずは丸の内エリアを中心に、日本の魅力を再発見できるような情報発信をしていきたいと思っています。日本は生活がしやすい、魅力たっぷりだ、ここでビジネスをしたら本当に快適なんだろうなというようなことを発信できたらいいなと思っています。
国がすすめている観光立国という意味でも、我々が行っている空港ビジネスとか、アウトレットモールなどを生かして、世界の人たちに日本の魅力がこんなところにもあったんだというのを、新たに感じていただけるような仕掛けができると面白いなと思っています。
■沖縄・宮古島に2つ目の空港
――先ほどワーケーションしてみたい場所として、宮古島を挙げました。
実は来月末に、宮古島の2つ目の空港ということで、“みやこ下地島空港”がオープンします。こちらは本当に空港全体がリゾートのような環境です。すぐにリゾート気分になれるということで、海外の方、あるいは国内の方にも、本当に愛される空港になるんじゃないかなと思っています。沖縄を皮切りに日本も観光産業を大いに盛り上げていきたいというふうに思っています。
――屋根も木材でできているんですね。
そうですね。今、国が推進をしているCLT(Cross-Laminated-Timber)というもので、これは非常に軽量で、かつ構造はしっかりしていて、耐火性能も備えているものです。これからどんどん、日本発展のためにも、あるいは地方創生のためにも、CLT事業を拡大していきたいと思っています。
■大手地所がトマトを育てる理由
――それ以外にもいま、様々なことに挑戦をしていますよね。
従来、皆さんが考えている不動産業という枠組みにとらわれないで、生活全般、あるいは日本を盛り上げていくためのものであれば何でもチャレンジしていきたいなと思っています。
――最近驚いたのが、ソフトバンクと一緒にやっている掃除ロボットとか警備ロボットなんですが、今、モニターに映っていますが、スター・ウォーズのR2-D2に似ていますよね。
R2-D2も警備など色々なことを十分にやってくれるので、将来的には人の気持ちの分かるR2-D2のようなロボットが出てくるとうれしいなと思います。
――でもこれは今までの三菱地所のイメージからすると、こんなものもつくっているんだと少し驚きました。
そうですね。ただこれはオフィスとか商業施設の人手不足を解消するという目的にもつながりますし、あるいは、人がなかなか勤務することが難しい夜間などでも活躍をしてくれます。
これはもう本当に日本中どこでも、建物という建物、あるいは空間、公園みたいなところでも将来的に活用していけるのではないかと期待しています。
――もうひとつ驚いたのが、農業にも参入されました。
農業といっても、現在、まだミニトマトの栽培で、これは特許を取得している土壌技術を持ったところと連携しています。非常に糖度の高いトマトですので、あるスーパーを経由して販売もしております。
年間で今のところ、80トン生産販売ということで、これも丸の内のオフィスや商業施設やレストランなどでも活用してもらって、既存事業との関連性という意味でも、これからどんどん我々としても伸ばしていきたい領域です。
これを積極的にやることによって地方の活性化というか、色々なところとの連携や日本全体を盛り上げることに将来的につながってくると思っています。
――正直、これだけバラエティに富んだアイデアが色々と出てくるなと思います。
色んな外部の人たちと連携をするという取り組みをやっていまして、我々とコラボレーションして新しいアイデアを募集をしたりしています。2017年には150件、2018年が200件の応募があるぐらいですので、色々なアイデアを取り入れて頑張っていきたいと思っています。