2024年 どうなる住宅ローン金利 マイナス金利解除で変動金利も上昇?
2023年、日本銀行の政策修正で長期金利は上昇傾向となりました。その影響で住宅ローンの固定金利が上昇。一方、市場では日銀による早期マイナス金利解除の見方が広がり、いよいよ変動金利が動く可能性も。2024年の住宅ローン金利の動向を探る。
■2023年7月 日銀が金融政策を修正
2023年7月28日、金融市場に動揺が広がりました。この日、外国為替市場では円相場が乱高下、株式市場では日経平均株価が一時、下げ幅が800円を超える急落となるなど市場が揺れ動きました。日本銀行が金融政策の修正に踏み切ったためです。日銀が修正したのはYCC(=イールドカーブコントロール)と呼ばれる10年債の利回り(=長期金利)をコントロールするという政策です。
日銀は長期金利について、それまでプラスマイナス0.5%としていたものを事実上1%に引き上げました。これを受け、長期金利は上昇傾向をたどっていきます。10月には金融政策の再修正で、長期金利は1.0%を超えても容認されることになり、2023年11月1日、ついに長期金利は一時0.97%をつけ、およそ10年5か月ぶりの水準まで上昇しました。
長期金利の動向は、為替や株価、預金金利にも影響しますが、身近で大きく影響するのは住宅ローンの金利ともいわれています。
そもそも住宅ローンには大きく分けて固定金利と変動金利のローンがあります。固定金利は借り入れする際に適用される金利が一定期間変わらず、変動金利は借り入れ後、市場の動向によって6か月ごとに見直しがなされるものです。借入期間がおなじ場合、一般的には変動金利の方が固定金利よりも低く設定される一方、固定金利は返済計画が立てやすいのが特徴です。
固定金利は長期金利を指標に各銀行が決めるもので、長期金利が上昇したことで2023年は大手3銀行が住宅ローンの固定金利を相次いで引き上げるなど、長期金利に連動する形で住宅ローンの固定金利も上昇傾向となりました。
2023年の大手3銀行の12月の店頭金利を1年前と比較すると、10年固定金利は三菱UFJ銀行が3.52%から3.90%に、三井住友銀行が3.53%から3.84%に、みずほ銀行が3.20%から3.50%に引き上げた形になります。
一方、変動金利は日銀の決める短期金利を指標に決まります。日銀は短期金利についてはマイナス金利政策を続けているので、大手銀行の変動金利は変わりませんでした。最近の動向をみると、住宅ローンは固定金利よりも変動金利に連動したローンを組んでいる人が圧倒的に多く、今の日銀の金融政策を素直に反映した形となっています。
変動金利については、ネット銀行の間で相次いで金利を引き下げるキャンペーンを打つなど競争が激化し、2023年は「固定金利は上昇・変動金利は低下」という状況になりました。
■2024年 住宅ローン金利の展望を聞く
果たして、2024年の住宅ローンはどうなっていくのか。
上昇傾向だった固定金利について住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSの塩澤崇取締役COOは「固定金利はやや下がり傾向に変化する可能性もある」と分析しています。日銀の金融政策の修正によって上昇傾向だった日本の長期金利がアメリカの利下げ観測によって落ち着いてきたためとしています。
2023年12月、アメリカの中央銀行にあたるFRB(=連邦準備制度理事会)が、2024年には利下げの回数は少なくとも3回あるとの予測を示したことなどを受け、これまで急速に上がり続けてきたアメリカの長期金利が低下傾向になっています。日本の長期金利もアメリカの長期金利に連動しやすくなっていることから、住宅ローンの固定金利も下がる可能性があるとみています。
一方、変動金利についても2024年、変化が起こるのでは、との見方が出ています。鍵を握るのが日銀の決める短期金利です。短期金利については、日銀が長く続けてきた大規模な金融緩和策の一環として、マイナス金利政策を続けてきましたが、これを2024年にも解除するのではとの見方が広がっているためです。
ただ、MFSの塩澤氏は住宅ローンの変動金利の動向について、「日銀のマイナス金利の解除だけでは、そのタイミングで銀行側が変動金利を上げるかどうか不透明。銀行間で競争環境が激化しているのですぐには上がらない可能性もある」とみています。
一方でニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長は「変動金利は、日銀の政策金利、すなわち短期金利と連動するので、日銀がマイナス金利を解除すれば新規で借り入れる人にとっては、従来より少し金利が上がる可能性がある。その後、日銀が利上げに向かっていけば、変動金利も上昇する可能性が大きい」としています。
このように住宅ローン金利の動向は、日銀の金融政策の行方と深い関係があり、日銀がマイナス金利の解除に踏み切るとなると、本格的な転換を意味します。
2023年の首都圏新築マンションの平均価格は、年間で過去最高値となることが確実視されています。不動産価格が高騰する中でも変動型で高額のローンを組む動きも広がっており、家計にとってはリスク要因となる可能性もあります。住宅の購入を検討している人にとっては、日銀の金融政策の行方から目が離せない状況になりそうです。