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ビッグモーター「月給20万円減額にボーナスなし」 旧ジャニーズとの共通点とは

2023年12月29日 15:00
ビッグモーター「月給20万円減額にボーナスなし」 旧ジャニーズとの共通点とは

なぜ不祥事が続発するのか? 2023年に発覚したビッグモーター、旧ジャニーズ、そして自民党裏金疑惑…。共通点や対策を聞いた。

■“賞与なし”社長からの突然のメールに現役従業員は…

「日々懸命に業務にあたられている皆様に対して大変申し訳ないのですが、十分な補填が出来ていない事務方の皆さんを除き、本年度は賞与を支給しないことを決断致しました」

2023年12月、ビッグモーターの和泉伸二社長から全従業員宛てに送られたメール。“賞与(ボーナス)を支給しない”という突然の連絡に、現在も整備部門で働く男性従業員は怒りをあらわにした。

「給与は生活に支障が出るほど激減しています。私の場合、以前の月給から約20万円ほど下がりました。私たちはお客様に安心してもらうために現在も頑張っているのに、このような“仕打ち”はないと思っています」

2023年に発覚したビッグモーターの保険金不正請求問題。CMでもおなじみだった企業が複数の店舗で前代未聞の悪質な行為を繰り返していた実態が連日明らかになった。誰にも止められなかったのはなぜなのか。経営倫理の専門家で、これまで企業不祥事の第三者委員会のメンバーを歴任してきた梅津光弘氏に話を聞いた。

■ビッグモーター、旧ジャニーズ、自民党の裏金疑惑、共通点は…

ビッグモーターの保険金不正請求に伴う悪質な行為。そして、旧ジャニーズ事務所の元社長による所属タレントへの性加害問題と自民党・安倍派の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑。これら3つにはある“共通点”があると梅津氏は話す。

「今まで当たり前にされていた慣習みたいなものが明らかになったというところですね。いろんな意味で薄々みんな知っていたけれど、見て見ぬふりをしてたと」

たしかに、旧ジャニーズ事務所の前社長の性加害を巡っては「40年以上にわたって、多数のジャニーズJr.らに対し、広範に性加害を繰り返していた事実が認められた」と再発防止特別チームが明らかにしている。自民党のパーティー券を巡る問題についても、ノルマ以上に売った場合に“キックバック”することは派閥内で長い間、慣習化していたとされている。

「おかしいなこれは、っていうふうに思っても誰も何も言わないで、そのままグダグダと何十年とああいった慣行が黙認されてきたと」

ビッグモーターや旧ジャニーズ事務所で起きた問題の要因は、「同族経営」や「非上場」であることだけではないという。コンプライアンスを徹底するために、社外の取締役を起用し外部の目を入れ、組織への牽制機能を働かせることはもちろんのこととした上で、さらにこう強調する。

「法的な問題だけではなく、ある意味法律よりも網の目の細かい行動規範をつくり、コンプライアンス体制を整えてください」

具体的には、会社として「して良いこと」と「しないこと」を明確にルール化する。従業員の声を反映できるように、通常の管理体制とは“別に”、声を上げられるホットラインをつくる。問題が起きたら、会社から独立した機関が処理する仕組みをつくり、そしてコンプライアンス研修は毎年行う。こういったことなどが重要だとしている。

■問題発覚後の体制や今後の再建に向けて現役従業員は…

「当社はコンプライアンスを最優先にする会社に変革する」

ビッグモーターの会見の翌日に兼重前社長と息子の宏一前副社長は辞任し、長年ビッグモーターを支えてきたとされる和泉社長が就任した。和泉社長は、ビッグモーターの立て直しを自身の責務とし、従業員らを鼓舞する冒頭のようなメッセージを定期的に発信している。この対応について梅津氏は…

「トップが現場に号令かけるっていうのは非常に重要なことなんですよ。今までのトップはそれすらやってなかったのかもしれないけれど」

一方で、和泉社長自身がコンプライアンスについて何をどうすればいいかということがわかって言っているのかが大事で、精神訓のようなものではなく、制度的な枠組みをつくる作業を伴うべきだとする。ビッグモーターでは名実ともに改善しているのだろうか

現場で働く男性従業員は日本テレビの取材に対し、「問題発覚後も過酷なノルマなどがある社内の体制の変化はほとんど見られなかった」と証言。“形だけの”コンプライアンス重視、企業風土改革で、実質が伴っていなければ、現場の反発を生むだけで、士気は下がるだろう

現在、総合商社の伊藤忠商事などがビッグモーターの査定を行っていて、支援するかどうかを2024年の春までに決定する予定だ。ビッグモーターの従業員は日本テレビに対し、「(買収は)会社が変わるためには必要なことなので皆そう願っております」と答えた。

企業の最大の財産といわれる人材。和泉社長には、全国6000人の従業員が再生に向けて前向きに力を発揮できるよう、従業員の声に本当の意味で耳を傾けてほしい。その仕組みづくりはできているだろうか?