【NNNドキュメント】20兆円の経済効果!? 台湾の半導体大手"TSMC"が熊本へ 地域にもたらす光と影 NNNセレクション
半導体の巨人、台湾のTSMCが進出した熊本県菊陽町。工場の最寄りの無人駅は通勤客で溢れ返り周辺はマンション建設が相次いでいる。地価は高騰、一気にバブル状態に。一方、この地域に長く暮らす人々の間には不安と戸惑いが。令和の黒船がもたらす光と影とは。
◇
半導体業界の巨人、台湾のTSMCがやってきた。
TSMC創業者 モリス・チャン氏)
「日本における“半導体製造のルネサンス”の始まりになると信じています」
のどかだった農地に突如、巨大工場が現れました。
「やっぱ半導体だよね」
「半導体」
台湾のTSMC。半導体を様々なメーカーから依頼を受けて製造する、世界最大手の企業。時価総額は、アジアトップです。
TSMCの第1工場ができた、熊本県菊陽町。第1工場だけで、1700人を雇用します。関連企業も増えたため、周辺の道路では交通渋滞が深刻化。
「地元住民としては、すごい交通渋滞」
しかし、渋滞解消への道筋をつけたのも、TSMCの存在でした。
菊陽町・吉本 孝寿町長)
「今まで町が計画していた道路整備は、ほぼ動いていなかった。国策ということもあり、(周辺の)道路整備については、(国から)10年間で300億円という予算をつけていただいた」
さらに、今後の人口増加を見越して始まっているのは、マンションなどの建設ラッシュ。TSMCの工場にほど近い場所に、賃貸マンションが建ち並んでいます。
アズマシティ開発 東伸彦社長)
「あそこがTSMCです。車で10分くらいです」
家賃は、2LDKの部屋で8万3000円。TSMCが進出する前の相場から、1~2万円ほど高くなりました。
アズマシティ開発 東伸彦社長)
「入居する方は半導体関連企業が大半で、法人契約で借りていらっしゃる方が多いです。予想していた以上に、入居が早かったです」
半導体バブルに熱狂する町。経済波及効果は10年間で20兆円とも言われています。
8月。益城町で行われた、半導体関連企業の説明会。TSMCのブースには、多くの学生や社会人が押しかけました。
熊本県出身・20代)
「Uターンで就職をしようかなというところです」
北海道出身・40代)
「北海道から。熊本に住もうかと思いまして」
しかし、以前からこの地域に暮らす人々の間には、不安と戸惑いが、広がっています。
菊陽町の青果店、フレッシュパークの社長、森田賢一さん。
森田さん)
「不動産会社の方から『家賃の相談があります』ということで、現在の家賃の3.5倍ほど(約140万円)の金額の提示があったので、『ちょっと、それじゃ払っていけないよ』と」
TSMCの進出で、商業地や工業地などの地価が急激に上昇。森田さんは閉店を余儀なくされました。
森田さん)
「もう、僕の人生も終わるのかなって。この後、どこかに移転してやっていくとか、そういった気持ちというのは全くなくなりました」
客)「びっくりしました。マンションができるとか」
半導体関連企業の社員などでにぎわう、ラーメン店。
「いらっしゃいませ」
ニンニクパウダーをふりかけたラーメンが人気。店は常に繁盛していました。
しかし、店主の小田さんは、うかない顔。
小田さん)「4月もね、(求人広告に)40万かけたんだよ。1人も来なかったよ。ひどいね」
パートを募集しても、人が全く集まらなくなったといいます。
熊本県の最低賃金は、時給898円(取材当時・現在は952円)。ところが、半導体関連企業の進出などにより、求人が大幅に増加。時給も上昇し、人材の争奪戦が起こっているのです。
小田さん)「“時給戦争”みたいな感じですよね。ラーメン屋で出せる時給なんて、たかが知れているところもありますんで。もう続けていくのは、難しいかな」
店は菊陽町から撤退することになりました。
8月。台湾にあるTSMCの本社に、熊本県の木村知事が訪れました。
木村知事)
「これからも、長くお付き合いをしていきたいということで、第3工場の建設についてもご検討を願いたいということは申し上げました」
半導体の製造に欠かせない大量の水を、豊富な地下水でまかなえる熊本県。知事は3つ目の工場も誘致したい考えです。
菊陽町の青果店が、閉店に追い込まれた森田さん。隣の熊本市で再スタートを切っていました。ある温泉施設の社長から、駐車場の一角を借りることができたのです。
森田さん)「TSMCが悪いとか全然思っていませんし、ただ、あれ(TSMC)が来たことによって、元々いた地域の方とか、地域のコミュニティーとか、いろんなものが失われていくとか。地域の方も、喜んでいる方ばっかりじゃないみたいなので」
半導体バブルがもたらす光と影。
巨人の棲む町は、今も膨らみ続けています。
2024年9月29日放送 NNNドキュメント’24『巨人の棲む町 半導体バブルの光と影』をダイジェスト版にしました。
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半導体業界の巨人、台湾のTSMCがやってきた。
TSMC創業者 モリス・チャン氏)
「日本における“半導体製造のルネサンス”の始まりになると信じています」
のどかだった農地に突如、巨大工場が現れました。
「やっぱ半導体だよね」
「半導体」
台湾のTSMC。半導体を様々なメーカーから依頼を受けて製造する、世界最大手の企業。時価総額は、アジアトップです。
TSMCの第1工場ができた、熊本県菊陽町。第1工場だけで、1700人を雇用します。関連企業も増えたため、周辺の道路では交通渋滞が深刻化。
「地元住民としては、すごい交通渋滞」
しかし、渋滞解消への道筋をつけたのも、TSMCの存在でした。
菊陽町・吉本 孝寿町長)
「今まで町が計画していた道路整備は、ほぼ動いていなかった。国策ということもあり、(周辺の)道路整備については、(国から)10年間で300億円という予算をつけていただいた」
さらに、今後の人口増加を見越して始まっているのは、マンションなどの建設ラッシュ。TSMCの工場にほど近い場所に、賃貸マンションが建ち並んでいます。
アズマシティ開発 東伸彦社長)
「あそこがTSMCです。車で10分くらいです」
家賃は、2LDKの部屋で8万3000円。TSMCが進出する前の相場から、1~2万円ほど高くなりました。
アズマシティ開発 東伸彦社長)
「入居する方は半導体関連企業が大半で、法人契約で借りていらっしゃる方が多いです。予想していた以上に、入居が早かったです」
半導体バブルに熱狂する町。経済波及効果は10年間で20兆円とも言われています。
8月。益城町で行われた、半導体関連企業の説明会。TSMCのブースには、多くの学生や社会人が押しかけました。
熊本県出身・20代)
「Uターンで就職をしようかなというところです」
北海道出身・40代)
「北海道から。熊本に住もうかと思いまして」
しかし、以前からこの地域に暮らす人々の間には、不安と戸惑いが、広がっています。
菊陽町の青果店、フレッシュパークの社長、森田賢一さん。
森田さん)
「不動産会社の方から『家賃の相談があります』ということで、現在の家賃の3.5倍ほど(約140万円)の金額の提示があったので、『ちょっと、それじゃ払っていけないよ』と」
TSMCの進出で、商業地や工業地などの地価が急激に上昇。森田さんは閉店を余儀なくされました。
森田さん)
「もう、僕の人生も終わるのかなって。この後、どこかに移転してやっていくとか、そういった気持ちというのは全くなくなりました」
客)「びっくりしました。マンションができるとか」
半導体関連企業の社員などでにぎわう、ラーメン店。
「いらっしゃいませ」
ニンニクパウダーをふりかけたラーメンが人気。店は常に繁盛していました。
しかし、店主の小田さんは、うかない顔。
小田さん)「4月もね、(求人広告に)40万かけたんだよ。1人も来なかったよ。ひどいね」
パートを募集しても、人が全く集まらなくなったといいます。
熊本県の最低賃金は、時給898円(取材当時・現在は952円)。ところが、半導体関連企業の進出などにより、求人が大幅に増加。時給も上昇し、人材の争奪戦が起こっているのです。
小田さん)「“時給戦争”みたいな感じですよね。ラーメン屋で出せる時給なんて、たかが知れているところもありますんで。もう続けていくのは、難しいかな」
店は菊陽町から撤退することになりました。
8月。台湾にあるTSMCの本社に、熊本県の木村知事が訪れました。
木村知事)
「これからも、長くお付き合いをしていきたいということで、第3工場の建設についてもご検討を願いたいということは申し上げました」
半導体の製造に欠かせない大量の水を、豊富な地下水でまかなえる熊本県。知事は3つ目の工場も誘致したい考えです。
菊陽町の青果店が、閉店に追い込まれた森田さん。隣の熊本市で再スタートを切っていました。ある温泉施設の社長から、駐車場の一角を借りることができたのです。
森田さん)「TSMCが悪いとか全然思っていませんし、ただ、あれ(TSMC)が来たことによって、元々いた地域の方とか、地域のコミュニティーとか、いろんなものが失われていくとか。地域の方も、喜んでいる方ばっかりじゃないみたいなので」
半導体バブルがもたらす光と影。
巨人の棲む町は、今も膨らみ続けています。
2024年9月29日放送 NNNドキュメント’24『巨人の棲む町 半導体バブルの光と影』をダイジェスト版にしました。
最終更新日:2024年11月2日 13:57