×

最終利益好調のメガバンク3社 トップが語る「円安」と「経済再生実感のカギ」

2024年5月16日 6:00
最終利益好調のメガバンク3社 トップが語る「円安」と「経済再生実感のカギ」

東京証券取引所に上場する企業の昨年度の決算が15日、ほぼ出そろった。多くの企業で最終利益が昨年度を上回る中、メガバンク3社も軒並み大幅増益となり、最終利益の合計は初めて3兆円を超えた。

一方で、足元の円安やマイナスが続く実質賃金など、日本経済回復に向けた課題も多い。円安の影響や経済再生の“実感”を持つためのカギなど、3社長の主な発言をまとめた。

■メガバンク3社はそろって大幅増益…好環境が後押し

昨年度(24年3月期)のメガバンク3社の決算は、最終利益(連結)が三菱UFJフィナンシャルグループで1兆4907億円(*前年度比3742億円増=過去最高)、三井住友フィナンシャルグループが9629億円(*前年度比1571億円増=過去最高)、みずほフィナンシャルグループが6789億円(*前年度比1234億円増=14年3月期に次ぎ過去2番目)と、軒並み大幅増益となった。3社の最終利益の合計は初めて3兆円を突破。3社長らからは、企業努力に加え、円安や株高などの環境が増益を後押ししたとの発言が相次いだ。

三菱UFJフィナンシャルグループ 亀澤宏規社長
「最高益になっている。もちろん我々の場合はかなり構造改革をやったが、それに加えて円安と株高が、銀行の決算という意味ではプラスに(なっている)。そこの(環境要因の)数字と、それ以外の要因をちゃんと分けて分析しなきゃいけない」

三井住友フィナンシャルグループ 中島達社長
「業務環境が非常に良かった。円安、内外での高金利の継続、それから株高。内外見て、相場環境やお客様の行動など、ほとんど全てのものが、銀行業績にプラスに働くような形だった。そういう意味では昨年度の好業績、良かった数字については、若干、げたを履いた数字というふうに受け止めるべきだろうと思っている」

みずほフィナンシャルグループ 木原正裕社長
「国内の企業も、投資を積極的にやっていくモードに変わってきたということで、資金需要が出てきた。その中でしっかりとそこを捕捉できた」

■円安が日本経済に与える影響にも懸念の声

一方で、足元1ドル=160円に迫る円安によって、回復途上の個人消費がさらに冷え込むことも懸念されている。業績にはプラスになった円安だが、3社長とも、そのリスクを気にする発言が目立った。

三菱UFJ 亀澤宏規社長
「この半年、1年ぐらいの動きというのは、金融取引で円安に行ってる面があると思う。実体経済と少し乖離(かいり)があるとすると、やはりいろんなひずみも出てくる。ここはよく見ていく必要がある。我々としては、あまりどちらか(円安・円高)に動くというよりは、安定した形で推移していくのが良いと思っている」

三井住友 中島達社長 
「微妙なレンジになっているということだと思う。150円を超えるところまで円安が進んで、確かに円安によるマイナス面も経済でいろいろ出てきている。一方でここから先、円安になったらもう日本経済に大きくマイナスなのかというと、そこまではっきり言える感じも個人的にはしていない。やはり日本の企業の多くは、円安になると企業業績が上がる。企業業績が上がれば、それを賃上げの原資にすることができて、また来年に向けて賃上げが続く可能性も大きくなるということもある」

みずほ 木原正裕社長 
「やっぱり日本の国力みたいなことが、海外では注目になってるのかもしれない。そうするとやはりネガティブインパクトがあるんだろうなと思う。それからやはり中堅・中小(企業)には、この円安は相当苦しい、きついと思う。私はやはり円高方向に行ってもらいたいという思いが強い」

■景気回復の実感のために…カギはやはり賃金

好調な企業業績の一方、円安の影響などもあり、国民の景況感は上向かない。こうした「ギャップ」がなくなり、景気回復を実感できるようにはどうすればよいのか。こう問われた3社長が挙げたのは「国内への投資」と「賃金」だ。

三菱UFJ 亀澤宏規社長
「日本全体で言えば、やはり国内の投資が増えるかどうか、ここが大きいと思う。今までどうしても、我々も海外の投資をやってきたが、いよいよ国内でお金が動き出す。企業に対するニーズをちゃんと我々が捉えること(が必要)。景気自体は、持ち直しを明確化してくるような流れに日本はあると思っている」

三井住友 中島達社長
「日本の経営者は非常に前向きに物事を捉えて、積極的に行動しようとしている。ここのマインドが間違いなく数年前から変わってきている。(一方で)一般の個人が、そこまで日本の状況が良いと感じてないというのは事実だと思う。やはりこれは実質所得が上がってないということに尽きる。ここは確かに私自身も少し懸念を持っているが、6月以降は減税などの措置も出てくるので、今年のどこかから、実質賃金がプラスになっていく、そうなると消費ももう少し盛り上がってくるのではないか」

みずほ 木原正裕社長
「多くの企業が投資に前向きになっているのは事実で、それが実際に(結果として)出てくることが重要だと思う。そうはいっても実質賃金はマイナスなので、賃上げがされて、結果として実質賃金がプラスになっていくのが一番重要だ。(一方で)円安が物価にどういう影響を与えるかということは懸念かと思う」

■日銀17年ぶりの利上げ 銀行業績と経済への影響は

一方、3月に日銀が17年ぶりの利上げを行い、「金利のある世界」が戻りつつある。3社長は利上げを前向きに捉えつつも、マイナスの影響とのバランスを取る姿勢を強調した。

三菱UFJ 亀澤宏規社長
「24年度以降に(3月の利上げが)プラス要因になってくると思う。金利がある世界に入ると、事業活動のリターン(収益)を上げていかなきゃいけないとか、インフレに負けない資産価値の強靱化をやっていかなきゃいけないというニーズが増えてくると思うので、そういうニーズに対応していく。日本経済が復活していくチャンスだと思うので、そこに貢献していきたい」

三井住友 中島達社長
「家計は住宅ローンを借りているお客様は負担が増えるが、預金・金利収入の増加が今後上回ってくると思うので、基本的には家計にもプラスの影響が出てくると思う。ただし負債比率が高い企業や財務基盤が弱い中小企業など、非常に困難な状況を迎える方も出てくる可能性がある。そういった方々にはしっかり寄り添いたい」

みずほ 木原正裕社長
「景況感が良いということであれば、当然貸し出し金利の利ざやが拡大するというメリットがある。一方で、インフレ(=物価上昇率)2%が継続ということになれば、当然コストに響いてくる。両者しっかりコントロールしながらやっていく」