NTT、ドコモ完全子会社化 3つの狙い
■国内企業では過去最大のTOBに
NTTは上場子会社であるNTTドコモに対して株式公開買い付け=TOBを実施し、完全子会社化すると発表しました。
NTTドコモの株式のうち一般の株主が持つ、およそ3割のドコモ株をすべてNTTが持つことにより完全子会社化を目指します。買収金額はおよそ4兆2500億円で国内企業へのTOBでは過去最大となります。
携帯電話の料金をめぐっては菅政権が料金の引き下げを強く求めていますが、会見でNTTドコモの吉澤社長は、NTT側から完全子会社化したいと申し入れがあったのは菅政権発足前の今年6月として政府の要請を受けた決定ではないと強調しました。
では、その狙いとは?
■完全子会社化のねらい1「格安スマホをサブブランドに」
競合他社のKDDIやソフトバンクにはそれぞれ「UQモバイル」や「ワイモバイル」など格安スマホプランがありますがNTTドコモにはありません。一方で、NTTグループにはNTTコミュニケーションズが展開している「OCNモバイル」があり、今回NTTドコモを完全子会社化することにより、ドコモのサブブランドとする可能性もあります。
■完全子会社化のねらい2「5G普及のスピードアップ」
5G通信は高速・大容量・低遅延の接続を可能にしますが、遠くまで届きづらい特性のため基地局数をこれまで以上に増やす必要があります。
そこで、グループの連携を強化し、例えば、NTTが所有する電柱にドコモの5Gの基地局を設置することにより、これまでよりも効率的に5Gエリアを広げることができるようになります。
■完全子会社化のねらい3「『NTT』のブランド向上」
自宅での固定電話の利用が少なくなる中、NTTとしてもドコモのブランドイメージを利用することでドコモショップで固定電話などの販売活路も見いだすことが可能となります。
■ドコモの競争力を立て直すには、完全子会社化が「最短かつ確実な手法」
ドコモの吉澤社長は、このようなNTTグループの強力なアセットを活用することで競争に対応していくことが「最短かつ確実な手法」として、昨年度の売上高と営業利益が国内で3番手に落ち込んでいるドコモの競争力を立て直す考えを示しました。
NTTの今回の動きについて通信行政の所管担当である総務省の武田大臣は「社会環境に合致した“健全”なやりかたを期待したい」と容認しました。
■携帯料金の値下げは?
NTTの澤田社長は、ドコモの完全子会社化により財務基盤が強固になるため「値下げの余力」が出てくると値下げに前向きな姿勢を示しました。
一方、競合他社であるKDDIは「NTTの経営形態のあり方は電気通信市場全体の公正競争という観点から議論されるべきと考える」と、資本力を武器にした独占的な市場支配になるのではないかと牽制しました。
今回のドコモの完全子会社化を通じて、健全な競争の中で料金に見合い、利用者が満足できるサービスとは何なのか、考えるきっかけになるのではないでしょうか。