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リアル半沢直樹!?ANAが“異例”再建案

2020年10月28日 2:08
リアル半沢直樹!?ANAが“異例”再建案

ネット上で“リアル半沢直樹”と話題になっているのは、過去最大5100億円の赤字となる見通しのANAホールディングス。立て直しのために打ち出したのは、飛行機の大幅な削減や、社員の給料カット、さらに、スーパーなどグループ外の企業への出向まで──


◆過去最大5100億円の赤字見通しを発表

27日午後3時すぎに始まった、注目の記者会見。

ANAホールディングス・福澤一郎常務「当期の最終損失は5100億円となる見通しです」

大手航空会社ANAホールディングス。最終損益が前年の276億円の黒字から一転、今年度は過去最大の5100億円の赤字になる見通しと発表しました。

ANAホールディングス・片野坂真哉社長「国際線は依然厳しい状況が続いています」

コロナの影響が直撃している航空業界。成田空港はこの日も『欠航』だらけ。ANAは、国際線の利用者がおよそ9割減っていて、これまで進めてきた国際路線の拡大が裏目に出た形となっています。

そこで、迫られたのは──

片野坂真哉社長「コロナを乗り切り、その先、再び成長していくため、ビジネスモデルを劇的に変革して参ります」

一から経営を立て直す、再建案が必要となった航空会社。この境遇に、ネット上では「これ、リアル半沢直樹w」「なんか最近、同じような話を見たと思ったら半沢直樹だった」「ANAの再建案、
これは半沢さんに頼むしかないのでは…」などの声が。


◆再建案には“異例の決断”も

徹底的に議論を重ねつくったというANAの再建案。盛り込まれたのは、社員の給与削減、大型航空機を手放すといったコストカットや、マイレージ会員の情報を利用したマーケティングといった新事業。

そして、異例の決断も。

片野坂真哉社長「グループ内の人員配置の変更、グループ外への出向とともに、賃金・雇用に関するあらゆる施策を行う」

人件費削減のため、社員を別企業へ出向させると発表。すでに決まっている出向先は、家電量販店の『ノジマ』、スーパーの『成城石井』など異業種のおよそ10社。来年の春までに400人を出向させる方針で、社員は主に接客を担当するということです。

このほかにもホテルのコンシェルジュや、企業の受け付け業務などへの出向を想定していて──

片野坂真哉社長「飛行機だけで暮らしてきた人が、飛行機以外の方々と交流することで、本人も勉強になるでしょうし、会社にも大いなる刺激になる」


◆ANA現役社員の胸中は…

この日の夜、他業種への出向について、ANAの現役社員が胸の内を明かしました。

──他業種への出向について

ANAの現役職「人間関係だったりとかも一から作り直さなければならない。それが不安だったりストレスになったりということが考えられると思う」

──出向はすでに始まっている?

ANAの現役職「何人か出向が始まっている件があって、テレビ局(の受付)や携帯電話会社が始まっている。いただいた給料や、上長のボーナスが下がっているのが目に見えている状態。退職して、その先のことを、正直、今考えられる状況ではないので、もし『出向してください』という命令がきたら、やってみようという気持ちではあります」

ANAは社員の出向について、あくまで強制ではなく「本人の意思を尊重する」としています。


◆“他業種への出向”は、すでに様々な企業で

一方、コロナによる他業種への出向は、すでに様々な企業で始まっています。

東京・日本橋にある『アートアクアリウム美術館』。金魚と光で作る、幻想的なアートを展示しています。ここでスタッフの作業を確認する男性は、実はもともとIT企業の社員ですが、コロナによる人件費削減で5月からこの美術館に出向しています。

IT企業から美術館に出向「(元の職場では)デスクワークが中心で、がらっと180度業務内容は変わった」

館内の見回りや、券売機で売り上げをチェック。打ち合わせの内容も、これまで経験してこなかったもの。

IT企業から美術館に出向「(異業種への出向は)新しい経験が得られるという仕組みでもあると思うので、とりあえず目先のことを全力でやって成長して、1年後なにが待っているかは、その時考えたいなと」


◆CAを目指す学生は

他業種への出向や給与削減など、コロナで多くの企業が厳しい決断を迫られる中、客室乗務員を目指している大学4年生の黒木良華さん(22)は……

──ANAの今回の発表を聞いて率直にどう思いました?

黒木さん「目指してきた業界がコロナの打撃を受けてしまった。採用が何年先になるのか、いつスタートされるのか、見通しがきかない状態なので、そこに対する不安はある」

ANAやJALは、すでに来年度の新卒採用を中断すると発表。黒木さんは、1年休学することを決めたといいます。

黒木さん「夢に見てきた職業なので、(採用が始まるまで)無駄のないように過ごしたい」


◆生き残りへ、あらゆる手を

いま、航空会社各社は、苦境を乗り切ろうと様々なイベントを企画。

今年度の最終損益が過去最大の赤字となる見込みのJALは、国際線の飛行機で国内を周遊し、ハワイ線で出る機内食を食べられるイベント。福岡県に本拠地を置くスターフライヤーは、上空で眺めるプラネタリウム。

あの手この手で、生き残りを図っています。

ANAホールディングス・片野坂真哉社長「あらゆる手を打ち、必ず黒字化を実現したい」

ANAに融資する銀行のある幹部は、「このまま何年も需要が戻らなければ、もっと大胆なコスト削減が必要になってくる」と、先の見えない状況を危惧しています。

(27日放送『news zero』より)