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【解説】高値続く電気・ガス・ガソリン代… 「補助金」延長も霞が関からは“ため息”…そのワケは?

2023年9月29日 20:55
【解説】高値続く電気・ガス・ガソリン代… 「補助金」延長も霞が関からは“ため息”…そのワケは?

高値が続く電気・ガス・ガソリン代。“今月末まで”とされていた政府の支援策は、いずれも“年末まで”延長されることに。家庭にとっては嬉しい支援策ですが、霞が関の官庁から聞こえてくるのは“ため息”。気になるそのワケを、経済部・戸田記者がイチから解説します。

■一時は“過去最高値”も…ガソリン代

今週月曜日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は、先週より1円50銭安い180円50銭でした。価格の推移を見ると、一時は186円50銭と過去最高値を更新するなどしていました。

■なぜここまで高く…ガソリン高騰のワケ

主な理由は3つです。1つめは、原油価格の高騰です。去年6月以降、原油価格は下落傾向だったのですが、ことし7月からサウジアラビアなどの産油国が、原油の生産量を本格的に減らすなどしたため、価格が上がってしまったのです。

さらに2つめは、円安の進行です。「ガソリン補助金」が開始された去年1月時点では1ドル=115円台だったのに対し、現在は148円台と、30円以上円安が進んでしまったため、輸入する際の価格が上がってしまったのです。

3つめは、補助金の縮小です。元々、政府はガソリン価格の負担軽減策として実施してきた「ガソリン補助金」を今月末で終わらせるため、ことし6月以降、補助を段階的に縮小させていました。つまり、その縮小分、直近の価格が上がってしまったのです。

■一転“3週連続の値下げ”に…ガソリン代

ところが、今月中旬からは一転、3週連続の値下がりとなりました。政府が「ガソリン補助金」の「拡充」を決めたことが大きな要因です。

■政府の新たなガソリン補助金“拡充”策

先月末、政府は「ガソリン代が高い」などの国民の声を受け、この補助金を年末まで延長すること、さらに1リットルあたりのレギュラーガソリンの全国平均価格をまもなく始まる10月中には175円程度に抑えることを決めました。

ある政府関係者は、「国民が値下がりを実感できる水準に抑えることが必要だった」と振り返っています。

■電気・ガスの支援も“年末まで”延長に

政府はさらに、電気とガスについても今年1月使用分から高騰対策を行ってきました。8月使用分までは標準的な家庭で電気は毎月およそ2800円、ガスも毎月およそ900円の負担軽減となりました。

ただ、政府は「ガソリン補助金」と同じく、この支援も今月末で終了させるため、9月使用分はこれまでの半分となる、電気は毎月およそ1400円、ガスも毎月およそ450円の負担軽減としていました。

しかし、これがガソリン同様、年末まで延長されることになりました。

■補助金“延長”に経産省からは“ため息”…

しかし、この「延長」の判断ですが、支援策を所管する経済産業省の関係者でさえ「一刻も早くやめたい」「『ガソリン補助金』の延長を決めたから、電気・ガス代の支援もセットで延長しようとなっただけ」「単なる選挙対策でしかなく、“ため息”が出る」など、不満を相次いで口にしているのです。

■スタートした背景は? 政府の電気・ガス・ガソリン支援

そもそも、この「ガソリン補助金」は、コロナ禍から徐々に経済が回復する中、エネルギー需要が増加し原油高に見舞われたことを踏まえ、生活への影響を最小限に抑えるため、去年1月に始まったものなのです。

しかしその後、ロシアによるウクライナ侵攻により、先進国が石油などロシア産のエネルギー資源に禁輸措置を講じたこともあり、エネルギー価格の高騰に拍車がかかることになりました。そのため、すでに支援策が講じられていたガソリンに加え、電気・ガス料金についてもことし1月使用分から補助を始めることになったのです。

つまり、開始当初はどちらも「あくまで一時的な補助」であった支援策が、今回結局、年末まで延長。「ガソリン補助金」に至ってはおよそ2年も続けることになり、官庁から不満が相次いでいるのです。

■“ため息”なのに“延長”のワケ

その理由は、「電気代・ガス代が高い」「ガソリン代はもっと高い」との国民の声です。ある経産省幹部は「国民の声に耐えきれなくなった」「特に地方の方々にとっては、ダメージが大きい」と話していました。

■かかった総額は“約6兆円”にも…電気・ガス・ガソリン支援

しかしこの支援策、ガソリンには約3.6兆円、電気・ガスには約2.3兆円、合わせてこれまでに、約5.9兆円もの税金が使われているのです。ある政府関係者も、「補助金でまやかしを続けていても、日本にイノベーションも起きない。こんなものはさっさとやめたほうが良い」とバッサリでした。

■“今をしのぐ”か“将来への投資”か…税金はどう使うべき?

あるエネルギー業界関係者は、「税金は、国の将来に関わる中長期的な投資に使われるほうがよい」と話していました。いまだ日本のエネルギーは、価格変動にさらされやすい石油や石炭などの化石燃料が中心で、その大部分を海外に依存しています。

エネルギーは誰にとっても必要不可欠なものであるため、今後もこれらのリスクは回避しなければなりません。そのためにも、水素やアンモニアをはじめとした次世代エネルギーの研究開発や世界的に普及が見込まれるEV=電気自動車への投資などにお金を使うべきとの声もあるのです。

■補助金“延長”で「増税」も?

国民にとっては、「目の前の生活」のほうが大事だという側面もある一方、ある経産省幹部は、「補助金を続けると言うことは、ゆくゆくは“増税”になりかねない。それでいいのか」などと、補助金延長に疑問を呈しています。

また、ある政府関係者は、「岸田総理は支持率の低迷もあり、いまは国民の声を無視できない状況にある。国民が“高い”と言い続ければ、いつまでも補助金はやめられない」と政権基盤の弱さを不安視していました。

■支援の「出口」が見えない日本…今後の政府の対応は?

G7の主要国などが補助を終了させる中、「日本だけ、出口戦略が見えない」という声もあります。政府には、物価高などで生活が厳しい国民の声を聞きつつも、未来を見据えたお金の使い方を考えて欲しいと思います。

来月中に取りまとめるとされる経済対策でも、これらの支援が今後どうなるか、注意してみていきたいです。