ふるさと納税 3年連続で過去最高を更新 トップ奪還した自治体の“戦略”とは? お手軽「自動販売機」も登場
8月1日、石川県七尾市に北陸で初めて、ふるさと納税の自動販売機ができました。使い方は、まずタッチパネルで「宿泊券」や「お食事券」など返礼品を選択します。そして、決済したあとに施設内のお店でレシートを渡すと、返礼品と引き換えることができるという簡単な仕組みです。
七尾市は有名な和倉温泉もあり、温泉旅館の宿泊券などが人気で、訪れた観光客にその場で簡単にふるさと納税してもらおうと自販機を設置したということです。
●トップ奪還に“戦略”あり
●“流出”どうする?
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
自治体同士の激しい争いが続いている中、最新のふるさと納税ランキングが発表されました。全国の自治体に寄せられたふるさと納税の2022年度総額は、9654億円となりました。3年連続で過去最高を更新して、1兆円に迫る勢いとなっています。
そして、都道府県別の寄付額ランキングでは第5位が佐賀県(約416億円)、第4位が鹿児島県(約425億円)、第3位が宮崎県(約466億円)、第2位が福岡県(約551億円)となっていて、第1位は北海道(約1453億円)です。
北海道は金額が約1453億円と大きく、2位の福岡県の3倍近くになります。なぜ、これほどの差がついたのでしょうか?
自治体をさらに細かく「市区町村別」にしたランキングでは、第2位が紋別市、第3位が根室市、第4位が白糠町と北海道勢が占めています。返礼品はホタテやイクラです。
実は、北海道が人気の理由はグルメだけではありません。
寄付額が全国2位の紋別市ならではの返礼品があります。それは、オホーツク海の流氷です。なんと重さは1トン、寄付額200万円でもらうことができます。SNS上でも「ロマンを感じるが使い道がわからない」などと話題になりました。
残念ながら、高額のためまだ申し込みはないそうですが、小ぶりのサイズもあります。5キロの流氷が寄付額1万円でもらえます。すでに20件ほどの申し込みがあったそうです。
ユニークな返礼品は、全国4位の北海道白糠町にもあります。
記者
「車で山道を行っていますが、これもふるさと納税の返礼品。実はエゾシカのハンティング体験です」
ハンター体験ができる返礼品で、寄付額は7万円です。狩猟免許がなくてもハンターと一緒にシカを探して仕留めるところに立ち会うことができるかも、という返礼品です。
白糠町ではシカによる農業被害も深刻で、返礼品の体験を通して「こうした現実も知ってもらいたい」といいます。
食べ物やお酒のようにすぐに楽しめるふるさと納税もあれば、アイデアや工夫によって“市や町を知ってもらう”ことも、ふるさと納税の別の効能といえます。
ただ、さきほどの市区町村ランキングでは1位は北海道の自治体ではなく、宮崎県の都城市です。実は、2位の紋別市と毎年のように熾烈なトップ争いを繰り広げてきました。
昨年度は見事2年ぶりにトップを奪還したわけですが、話を聞くとそこには“大胆な戦略”がありました。それは「“二点突破”のブランディング」です。
宮崎牛に代表される「お肉」と、都城の酒造メーカー霧島酒造が作る「黒霧島」に代表される「焼酎」。この2つに絞って、売り込む戦略をとったのです。
この戦略を始めた10年前の2013年度、寄付額は約960万円でした。しかし翌年、一気に増えて50倍の約5億円に! いまや全国トップクラスの常連になっています。やはり1位には理由があるのです。
ふるさと納税での“流出額”ランキングでは、約272億円の横浜市をトップに、以下ずらりと名古屋市、大阪市、川崎市、世田谷区と大都市が並んでいます。これは、どうすればよいのでしょうか?
慶応大学総合政策学部の保田隆明教授は「老舗料亭のおせちなど“京都ブランド”で、寄付額を大幅に伸ばした京都市のような自治体もある。都市部もやり方次第で黒字化できることを京都が証明した。都市部もポジティブに可能性を探ってほしい」といいます。
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地方と都市部の格差があり、“完全に平等”な制度というのは難しいと思いますが、より良く改正を重ねながら、日本全体を元気にする原動力になってほしいと思います。
(2023年8月2日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)