ふるさと納税“現金キャッシュバック”物議醸す 総務相「本来の趣旨と合わない」
ふるさと納税で返礼品の代わりに現金を受け取ることができるサービスが、波紋を広げています。金子総務相は「制度の趣旨から大きく外れたものである」などと述べ、担当部局に対応の検討を指示したことを明らかにしました。また、ふるさと納税をめぐり、“産地偽装”も発覚しました。
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10日、ふるさと納税を利用しているか、街の人に聞いてみました。
ふるさと納税の利用者
「もう10回以上はお願いしてますね。ずっと東京に住んでいるので、地元にふるさと納税しているというのが半分以上と、 あとはおすすめに出てきたおいしそうなお肉とかをお願いしたことはあります」
昨年、初めて利用したという人も――
ふるさと納税の利用者
「いつも食べないようなものを、食べるきっかけになったりするのがいいなと。(去年の年末)ギリギリに頼んだので、冷凍庫パンパンになりました」
制度開始の2008年度の寄付件数は5万3671件でしたが、2020年度は3488万7898件と約650倍に増えるなど、ふるさと納税は年々拡大しています。
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こうした中、今週、ふるさと納税をめぐり物議を醸す出来事がありました。東京都内にあるWEBサービスなどを手がける会社が今週、始めた「キャシュふる」というサービスです。返礼品の代わりに、現金がキャッシュバックされるというものです。
通常、ふるさと納税を利用し自治体へ寄付すると、返礼品がもらえます。ただ、このサービスでは、返礼品を欲しくない人が、「返礼品を受け取る権利」を仲介会社を通してほしい人に販売しています。こうすることで、寄付した額の2割を現金で受け取れるといいます。
ただ、新潟県の魚沼市役所のホームページには、『「キャシュふる」と当市は関係がありません』と表示されていました。魚沼市や宮崎市などは「このサービスとは一切関係なく、無断で名前を使われた」と抗議する事態になりました。
そのため、「キャシュふる」の運営会社は「サービスをいったん中止にし、全額返金する」と発表しました。
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返礼品ではなく、現金でキャッシュバックされるこのサービスについて、ふるさと納税を所管する総務省の金子恭之総務相は次のように述べました。
金子総務相
「寄付に対する返礼品は、寄付を受け入れた自治体がお礼の気持ちを表すものであります。寄付者が返礼品の代わりに現金を受け取ることは、制度の趣旨から大きく外れたものである」
金子総務相は、担当部局に対応の検討を指示したことを明らかにしました。
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ふるさと納税をめぐっては、「産地偽装」が発覚する事態も。北海道利尻町の特産品として有名なウニ。しかし、10日に開かれた利尻町の会見で、ふるさと納税の返礼品の冷凍ウニについて、水産加工会社の1社がロシア産を利尻産と偽って出荷していたことが明らかになりました。産地を偽っていたのは、厚岸町にある協力事業者です。
利尻町の調べによると、この業者は利尻産のウニにロシア産のものを混ぜて商品としていたとみられ、これまでに約3000件のうち、400件の冷凍ウニについて産地の偽装が確認されたということです。
利尻町では、この業者のふるさと納税協力事業者の登録を取り消しましたが、他の事業者には「品質や規格上の問題がないことを確認した」としています。