新築6割目標…どの住宅にも太陽光パネルを
■どの住宅にも太陽光パネルを〜2030年に新築6割目標
国土交通省・経済産業省・環境省の有識者の検討会は、太陽光の発電設備を、2030年には新築戸建て住宅の6割に設置する目標を打ち出した。
太陽光パネル設置などの「義務化」は見送られたものの、将来は「義務化」も選択肢の一つとしている。日本のどの家にもパネルがのる日が来るのだろうか。
■カーボンニュートラルに住宅の貢献は
菅総理大臣が去年宣言した「2050年カーボンニュートラル実現」は、あらゆる施策を総動員して届くかどうかの高い目標だ。
政府のエネルギー基本計画は、途中の2030年度に総発電量の36〜38%を再生エネルギーで賄う絵を描くが、そのためには、今現実に利用できる太陽光発電を最大限に活用する必要がある。
小泉環境大臣は4月、住宅で「太陽光パネル設置の義務化を視野に入れるべき」と発言し、国交省・環境省・経産省による有識者の検討会でも新築での義務化はひとつのテーマとなった。
地球温暖化が進む中で、政府は住宅の省エネ基準を底上げしている。さらに「創エネ」つまり、使う電力を自分の住宅から得ることができれば、環境にも家計にもプラスで、快適に暮らせるエコハウスになるという声があがる。
住宅を建てるときの初期投資は増えても、その後、電気代がタダになったり余った電力を売れば、元が取れるというのだ。京都市や横浜市など、独自の補助金制度を設けて太陽光パネルの設置を推進する自治体もある。
■住宅のパネル設置を「一般的」に
検討会は太陽光パネルの設置拡大で合意。2050年には住宅の太陽光発電設備の設置が「一般的になる」ことを目指すとし、途中の2030年には新築戸建て住宅の6割に設置されるという目標が掲げられた。
ただ「義務化」については、慎重な意見もあった。住宅密集地では太陽光が十分活用できない立地があり、また雪など気候の影響が大きい地域もある。また「義務」という、ほかの選択肢を許さない規制が適切なのかという声もある。将来の義務化も視野に、まずは国・自治体の建物で率先して進めることや、建築主への情報伝達、一層の低コスト化を急ぐことが示された。
■太陽光パネル推進の課題は
推進には課題も少なくない。今、大手メーカーによる新築注文戸建ての半分近くで太陽光パネルが設置されているが、着工が多い中小のメーカーや建売住宅ではわずかだ。
これを全体の6割まで増やすには、中小の工務店で、太陽光パネルのメリットデメリットなどの情報を詳細に建築主に説明することは欠かせない。
3年前の国交省の調査では、中小工務店で省エネの計算ができると答えたのは半分にとどまっていて、知識や説明能力の底上げは急を要する。
太陽光パネルの将来の値段やFIT制度終了後の電気料金は収支に影響する。また、将来は費用を回収できるとしても、新築する時点での建築費用が上がることで住宅建築市場が冷えないかという心配の声もある。
しかし、風力や地熱などの再生エネルギー活用に厳しい条件もある日本で、住宅での太陽光発電は期待が大きい。
新築するタイミングを逃すと建てた後のパネル設置はコスト高になるため、新築住宅への対応はできる限りの前倒しが求められている。