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ユニクロ柳井氏の“日本人滅びる”に台湾の政府高官が反応 日本より少子化深刻な台湾は

2024年9月22日 7:00
ユニクロ柳井氏の“日本人滅びる”に台湾の政府高官が反応 日本より少子化深刻な台湾は

「TSMC」が象徴するようにデジタルで存在感を示す台湾。成長戦略をリードする国家発展委員会の劉鏡清委員長が日本テレビの単独インタビューに応じた。日本同様に人口減少が深刻な問題となる台湾。日本ではファーストリテイリングの柳井正会長が、日本テレビのインタビューで発した「(このままでは)日本人は滅びる」という発言が企業経営者らの間で反響を呼び、賛否両論出ているが劉氏の見解は…

――ファーストリテイリングの柳井会長が、人口減少で人手不足が進む中、海外から高度人材の受け入れを拡大し、労働生産性を上げていかないと“日本人は滅びる”と発言した。台湾でも少子高齢化を受けて海外からの労働者受け入れを拡大したが、日本の外国人労働者の受け入れや働き方をどう思うか?

台湾の方が日本よりもっと深刻だと思う。具体的には、2070年までに65歳以上の人口が249万人増えて、16歳から64歳の人口が972万人減るとみられている。その時、最も深刻な少子高齢化に直面するのは韓国と言われていて、次が台湾だ。日本も深刻ではあると思うが、台湾の方がもっと深刻だ。今でも、日本の出生率の方が台湾よりも高い。

各国がとっている政策と同じで、やはり台湾でも海外から労働力を得ている。日本と同じで、東南アジアの方々をターゲットに受け入れている。現在、世界中が東南アジアの人たちに注目している中で、東南アジア自体の経済も成長しているので、2034年頃には東南アジアから人が受け入れられなくなるということも言われている。一方で、世界の人口はまだ2083年まで増え続けるとされている。そうすると、今度は例えばインドやアフリカに目を向けるのだろうか。それでは、おそらく最終的な解決策にはならないと思う。

■「産業のAI化」「AIの産業化」の両輪で生産性を高めつつ労働力への依存を減らす

そこで、私たちが角度を変えて最近定めた戦略というのが「台湾国家人材戦略」だ。この戦略の下で進めているのが、海外から労働者を受け入れるだけではなく、もっと台湾の一人当たりの生産性を高めていくことだ。つまり、一人当たりの生産性を高めることによって、人手への依存を減らしていこうという考えだ。

例えば、製品の検品をAIが取って変わることで、ベトナムの工場で392人の労働者を削減したという例がある。だから台湾の小規模な小売店80万店舗に無料のソフトを配ろうと思っている。それで小売店80万店で従業員を一人ずつ減らせれば、必要な人手を80万人分減らせることになる。

AIやロボットを活用することも労働力不足を解決する一つの重要策だ。世界にも新たなトレンドがあって、出生率が低い国ほど、ロボットの導入率が高いという傾向がある。そのため、台湾では5大産業推進プランで「産業のAI化」「AIの産業化」という政策を進めている。狙いは、台湾の生産性を高めると同時に、労働力に対する依存を減らそうということだ。

■優秀な外国人材受け入れ政策も 将来を見据えた台湾の労働生産性向上

現在、台湾政府は優秀な外国人材に対して、就業ゴールドカード(※)を発行している。これによって優秀な人材が増えると税収も増えるという見込みから、「増えた税収で低所得の人を支援していく」ということを考えている。

※ビザや就労資格をまとめたもので、外国人材の呼び込みやつなぎとめを図る狙いがある。

2070年には、台湾の人口は現在の2300万人から1500万人まで減る見込みだ。私たちはそれだけ長いスパンで見ていて、すでに対策をスタートしている。

◇◇◇取材を終えて◇◇◇

日本以上に、少子化による労働人口不足が心配される台湾。ファーストリテイリングの柳井会長と同様、劉委員長も海外の高度人材を招き入れて生産性を上げる必要性を強く示した。そのための優遇制度なども設けているだけでなく、台湾が力を注いでいるAI産業は労働力への依存を減らすためにも大きな役割を果たす。産業をAI化することで人手を減らし、そのためのAI化を国家一丸となって強力な産業に育てていく。“AI産業の正のスパイラル”とも言える好事例から、日本も学ぶことが多いと感じた。(経済部・城間将太)