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いまさら聞けない「定額減税」 3兆円規模、今年度限り……“手取りUP”で効果は 専門家「期待持てぬ」【#みんなのギモン】

2024年5月30日 10:30
いまさら聞けない「定額減税」 3兆円規模、今年度限り……“手取りUP”で効果は 専門家「期待持てぬ」【#みんなのギモン】
物価高が続く中、「手取り増を実感してもらいたい」と政府が狙う定額減税が6月から始まります。給与明細への減税額明記をめぐり疑問の声も上がりますが、家計に入るお金は増えます。3兆円超の予算を使う政策として、どれだけの効果が見込めるのでしょうか?

そこで今回の#みんなのギモンでは、「定額減税で手取り増える!?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●定額減税で家計への恩恵は
●お得感実感? 効果は

■カレーの具材とキャベツで1757円

小野高弘・日本テレビ解説委員
「物価が高いです。その対策として、定額減税が6月から始まります。手取りが増えるのを実感してもらいたいと政府が狙う制度ですが、実際どうなのでしょうか?」

「まず、物価高を実感する話です。夕飯のメニューをカレーにするとして、スタッフが都内のスーパーで具材を買ってきました。にんじん、たまねぎ、じゃがいもに、コールスローサラダを作ろうとキャベツも買いました」

「買ってみたら、この値段です。新じゃがいもは6個で519円、にんじん5本で378円、新たまねぎ5つで430円、キャベツ1玉で430円。合わせて税込み1757円でした」

鈴江奈々アナウンサー
「ここにお肉を足すと考えると…」

森圭介アナウンサー
「お肉にお米にガス代にとなると、お店で食べた方が安いんじゃない?っていう…」

鈴江アナウンサー
「自炊したら節約になるっていうのも、ちょっともう違うかもって思っちゃいますね」

■菓子も電気料金も…また値上げの波

小野解説委員
「さらに6月、また値上げの波がやってきます。カルビーは6月納品分から68商品を3~10%程度値上げします。例えば、かっぱえびせん(77グラム)は160円前後だったのが170円前後に。明治は6月出荷分から54商品を約3~33%値上げします」

「そして電気料金です。政府の補助金が縮小するため、大手電力10社の6月請求分(5月使用分)の家庭用電気料金は値上がりします。電力会社にもよりますが、東京電力の場合は標準的な使用量の家庭で、前月より401円アップします」

「7月請求分からは補助金がゼロになるため、さらに値上がりする見通しとなっています」

河出奈都美アナウンサー
「夏に向けてエアコンを使うことが増えてくると思うので、そう考えると痛いですね」

森アナウンサー
「ずっと値上げのニュースをやっています。私はチョコをよく食べるんですけど、自分の好きなものが値上がりすると実感がわきますよね」

鈴江アナウンサー
「痛感しますよね」

■所得税は3万円、住民税は1万円

小野解説委員
「あれも高い、これも高い。このように物価高で家計への負担が重くなっています。それを支援する策が今年度行われます。政府が6月から実施する定額減税とは、どういう仕組みなのでしょうか?」

「給与明細には『所得税』と『住民税』の記載があり、給与から引かれています。この部分を減税するのが定額減税です。1人あたり年間で、所得税は3万円、住民税は1万円が減税されます。納税者に扶養家族がいる場合、本人だけでなく子どもや家族も対象です」

刈川くるみキャスター
「1人あたり4万円の減税が家族の人数分、減税されるということですか?」

■子ども多い世帯ほど減税額が大きく

小野解説委員
「はい。例えば、夫婦と子ども2人の4人家族の場合、共働きか片方が働いているかにかかわらず、世帯全体では所得税が12万円、住民税が4万円で合計16万円が減税されます。ちなみに、年収が2000万円を超える高額所得者や、海外在住の扶養家族は今回対象外です」

「子どもが多ければ多いほど減税額が多くなることから、岸田首相は『過去に例のない子育て支援型の減税だ』と強調しています」

森アナウンサー
「言われてみれば…」

鈴江アナウンサー
「私は2歳児がいますが、2歳児でも大人でも同じだけ減税してもらえるということですもんね」

小野解説委員
「そういうことになります」

鈴江アナウンサー
「とはいえ、一気に16万円が減税されるわけではないんですよね?」

小野解説委員
「会社員などの給与所得者で毎月の給与やボーナスから所得税が天引きされている人は、早ければ6月に受け取る給与やボーナスから順次反映されます。住民税は7月から分割して減税されます。減税されるということは、手取りがアップするということになります」

■減税額は給与明細に記載…疑問の声も

刈川キャスター
「野菜の値段もすごく高かったので、手取りが増えるのはすごくうれしいです。どうやって私たちは確認することができるんですか?」

小野解説委員
「給与明細を見ると分かることになっています。毎月の給与明細に『定額減税○○円』などと、定額減税という言葉を表記していくら控除したかを記載すると、国税庁は説明しています」

「ただ、給与明細を出す会社などでは作成する事務手続きが増えます。『大丈夫かな』『大変じゃないか』という声もあちこちから出ています」

「確かに減税によって家計に入るお金は増えますが、減税が複数回に分かれるので、1回でまとめて給付金を受け取るよりも効果を実感しにくいかもしれません」

■財務相「複数年度の実施は考えず」

小野解説委員
「続いては効果について考えます。政府は定額減税の狙いをこう考えています。今年の春闘の賃上げは、33年ぶりの高い水準でした。それに定額減税を加えることで、物価高を上回るような所得の実現につなげたいとしています」

「ただ、政府はこの定額減税は今年度の1回限りだと説明しています。財務省の鈴木大臣は28日の会見で『複数年度にわたって実施することは考えていない』と話しています」

森アナウンサー
「減税自体はとてもありがたいんですけど、そもそも物価高がいつまで続くのか。賃上げが果たしてそれに追いついていくのか。それが全く不透明な中で『複数年度にわたって実施することは考えていない』と言い切られちゃうのが、ちょっとな…というところです」

■エコノミストは定額減税どう見る?

小野解説委員
「みずほ証券チーフエコノミストの小林俊介さんに、今回の定額減税について尋ねました。その見方は手厳しいものでした」

小林さん
「減税をうたってはいるが、実態は一時給付金と同じではないか。一時金を給付されてもあまり消費につながらなかったのと同じことで、この先持続的に所得が増える期待は持てないのではないでしょうか」

「政府が定額減税だけでも3兆円規模の財源を使って行う政策でありながら、経済効果は限定的だと考えます」

小野解説委員
「では、家計を助けるためにはどうすればいいかについても聞きました」

小林さん
「まずは賃上げを、政府がもっと旗を振って推し進めること。そして、目先のことだけなくもっと大事なのは、物価高の原因をいま一度考えることです。円安や、輸入に頼り過ぎていること、日本製品の輸出が減ってしまっていること」

「こうしたことを変えていかなくてはいけない。そのために日本の技術力などを上げることです。消費者1人1人から見たら遠く感じるかもしれませんが、とても大事なことです」

小野解説委員
「今回の定額減税には、3兆円を超える予算が使われます。効果を検証することが欠かせません」

(2024年5月29日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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