【解説】過去最大の21兆円超の赤字…貿易赤字で我々も損してる?
財務省が20日、昨年度1年間の日本の貿易統計を発表した。それによると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は、21兆7285億円で、過去最大の赤字となった。そのワケを近年のデータを分析しながら解説する。
■昨年度の赤字の要因は?
過去最大の赤字となる中、実は輸出額も99兆2265億円で、過去最高となっている。自動車の輸出は回復を見せ、アメリカなどへの自動車の輸出は前年から28.0%も増えた。
しかし、輸入額も120兆9550億円と大幅に増え、輸出を大きく上回り過去最大の赤字となった。この赤字の要因は、ロシアによるウクライナ侵攻や去年一気に進んだ円安の影響。原油や石炭などのエネルギー価格は顕著に上昇し、輸入額は77%増えて35兆円を超えた。
さらに、最大の貿易相手国である中国からイヤホンやヘッドフォンなどの輸入が増加。赤字額は134.7%も上昇し6兆8000億円以上となったことも響いた。
財務省幹部は、貿易収支の今回の結果を受け「良い傾向ではない」と漏らす。貿易収支の悪化は海外に日本の所得が流出しているということになるためだ。市場関係者は「景気にもマイナスの要因になる。赤字の額が大きすぎる」と警鐘を鳴らす。
■「生きているだけで…」輸入が増えるカラクリ
2000年代に入ってからの貿易収支のグラフを見てみると、日本は黒字が続いていたものの、2008年のリーマンショックの年に一時赤字に転落。2011年頃から赤字の回数が増えてきていることが読み解ける。
ある財務省幹部は「日本は生きているだけで45兆円が流出している」とつぶやく。
昨年度は原油等の輸入額は大きく膨らみ35兆円になった。また、食品の輸入も大きく年間で10兆円も輸入している。資源の少ない日本は生活するだけで単純計算で45兆円ほどが海外に流出していることになるのだという。
■赤字で私たちの生活にも影響が…
市場関係者は「日本のエネルギー構造は3・11をきっかけに大きく変わった。原子力の割合が減り、化石燃料に頼るようになったので、エネルギー価格が上がると、輸入額も増加しやすい」と指摘する。原油価格などの上昇分が家計にも直撃する構造になっているのだ。
また別の関係者も原油や食料品など「コストの増加分が家計の負担になりしわ寄せが来ている」と指摘する。
貿易収支が赤字になることは一見、私たちの生活とは関係ないように思えるかもしれないが、家計を直撃する問題になっている。
■「生産は消費地」という流れが…
日本の強みである自動車やバイクなどの輸出額は20兆円ほどあり、また機械類の輸出も多い。ただ、製造の現場は「生産は消費地」という流れから、海外に工場を置く企業も多く、日本に工場を戻すことは効率的ではない面もある。
ただ、戦争や感染症など有事の際に、食品やエネルギーの輸入価格が高騰し、貿易収支が悪化している状況を鑑みると、経済安全保障上のリスクにも目を向け、国内でのエネルギーや食品の生産を増やすなど構造自体を見直していく必要がありそうだ。