焦り、楽観、期待…企業トップらは対日投資をどう見ているか 新浪同友会の経営者発言録
(日本テレビ解説委員・安藤佐和子)
◆海外のマネーが日本に流入 経営者たちの見解は
「米中対立で、中国に投資されていた海外マネーが何もしなくても日本に振り分けられている」。投資ファンド「ユニゾン・キャピタル」の川﨑達生会長はこう認識を示した。「デフレが終わりインフレになりそうだとか、コーポレートガバナンスが改善しているとかなどで日本の企業への期待値が上がっている」という。その上で「割安だから」との理由で投資されるのではなく、将来性を磨くことで、長期的な期待から投資を呼び込むべきだと話した。そして「もう少し言えば、企業はM&Aを進め、外資から資金を得るのがこれからますます大事になる」と付け加えた。
一方で、アクセンチュアの元会長である程近智氏は、「ウィンブルドン現象が起きて全部もっていかれてしまうのではないか」と警戒感を示した。ウィンブルドン現象とは、イギリス・ウィンブルドンで開かれるテニスの国際大会でイギリス人以外のプレーヤーのほうが活躍する状況を経済の世界に例えたもので「外国企業によって国内企業が淘汰される」ことを言う。その上で、程氏は「それなりの投資資金が必要になるかも知れないが、最先端の研究を日本に持ってくるなど(産業政策も含めて)戦略的に動く必要がある」と強調した。
また、このセッションを仕切ったみずほフィナンシャルグループの今井誠司会長は、政府の補助金などによる大型の半導体案件への投資に言及しつつ、「電力供給の逼迫や人材不足が課題だ」と指摘。高付加価値の先端技術をどう育成するかについて、インテルの鈴木国正会長に意見を求めた。
インテル・鈴木会長は「日本の強さをさらに強くする。すでに強い日本の装置産業をより強くし、中国、韓国に負けない強さを維持するのが重要」と語った。そのためにインテルは、今、東南アジアなどで労働集約型で行われている作業を、日本の16のキープレーヤーと組んで自動化する計画を明らかにした。
日本アイ・ビー・エムの山口明夫社長は、「日本に投資を呼び込むためには、モノ、サービス、ソリューション、何であっても国内で作らなくてはいけない」との見解を示した。30年間、海外で安く生産してきたことで産業の空洞化を招いたが、企業が自ら国内に投資する姿勢を見せなければ、海外から日本が魅力的な市場だと見られないのではないかと言う。その上で、海外でソフトウェアを作っていた人員3000人を国内にシフトしたことを明らかにした。その結果、親会社IBMからも「ちょっと単価が高いが、日本で作った方が品質が良い」と評価され、「日本で投資しよう」という流れになってきているとして、「1回踏み出さないといけない」と述べた。
この経営者らによる会議で、複合的な背景からではあるが日本への投資が増えていて、これを機にもっと拡大すべきとの認識が共有される中、新浪剛史代表幹事は、政府を巻き込むためか、あえて強い言葉でこう言い放った。「日本は安倍政権の時から対日直接投資の目標を達成したことがない」「官僚の“アホ”さ。そして政治家の“アホ”さ。日本国は世界の投資の中心になる国ではなくなっている。どうしてこんなことになったのか考えないといけない」。語気を強めてこう話した。新浪氏は、シンガポールが海外から日本の8倍もの投資を呼び込んでいることから、政府にシンガポールを見習って、「骨太の方針」にも取り入れるよう働きかけたものの、そこまで踏み込んでは盛り込まれず、「経済産業省が耳を傾けないのが問題」と不満をにじませた。
「企業も正直言って日本にいる必要はないんですよ。だってやはり儲かるところに行かなきゃいけないから。でも日本の良さって言うのはこれだけの経済人が集まって、日本をなんとかしたいと思っている(というところです)」、新浪氏はこう述べた。「世界になくてはならない日本」を取り戻したいとしている。