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それって、パクり?知的財産が経済成長のカギ

2023年6月9日 22:17
それって、パクり?知的財産が経済成長のカギ
今回のニュース1から解説は、経済部の宮島香澄解説委員とお伝えします。今日のテーマは「それって、パクり?知的財産が経済成長のカギ」。

宮島香澄解説委員
「6月9日、政府は『知的財産推進計画2023』を決定しました。知的財産は、知的な活動で作り出したアイデアや発明、技術などです。その価値を最大限に生かすことが大事だと。計画の中には、スタートアップや大学のエコシスデジタル時代のコンテンツ戦略などが120ページ以上にわたって書きこまれています」

橋口秀一キャスター
「そういうお話聞くだけでも、少し難しそうだなっていう印象があるんですけれども」

宮島委員
「そうですね、身近ではないかもしれません、今、日本テレビ系列の地上波で水曜日に放送中のドラマは、企業の中の知的財産を守って生かす部署で主人公が奮闘するお仕事ドラマで、知的財産を巡る話がいろいろ出てきて話題になっています。子供の絵を悪気なく商品につけてしまったり、開発した技術の特許をめぐる企業の攻防などがテーマになっていまして、若い視聴者から、大事な『知的財産』を理解するのに勉強になるという声もいただいています」

橋口キャスター
「私もそうなんだと思いながら見てるんですけれども、この知的財産がドラマになる時代なんですね」

宮島委員
「それだけ大事なんですね」

宮島委員
「知的財産にはこうしたものがあります。著作権は絵や文章を書いたり、創作活動が行われたその瞬間に権利が生まれます。一方で、主に企業などの産業財産権は、企業がそれを申請して権利を取るものです。特許権や商標権、実用新案権、意匠権などがあります」

宮島委員
「最近ではこんなニュースもありました。こちら内閣府が発注したもので、性暴力被害予防の啓発ポスターですが、ここに書いてあるイラストが、イラストレーターのたなかみさきさんの作品に似ているということで、指摘をうけて調べたところ、制作を請け負った企業がポスターを作る過程でたなかさんの作品を参考にしていたことがわかりました。これは著作権を侵害した可能性がある。内閣府も企業もたなかさんに知らせずにいたということで、内閣府はポスターを回収する事態となりました」

橋口キャスター
「内閣府でさえこういった事態に陥っているわけですね」

宮島委員
「ほかにも、これまで裁判になっています。こちらは『白い恋人』と『面白い恋人』」

橋口キャスター
「北海道のお土産ですよね」

宮島委員
「パロディー商品ということかもしれませんが、やはりこれは『白い恋人』の商標権を侵害したということで裁判になりました。結局こちらがパッケージを変えるなどで和解しました」

宮島委員
「それからもう1つ、サトウの切り餅。この餅の横に切れ目を入れたということで、これが他の企業の特許権を侵害したということで訴えられ、敗訴しました」

橋口キャスター
「ちょっとしたことでも裁判になるんですね」

宮島委員
「そうですね、知的財産というのはその発明、そのアイディアがイノベーションをもとになりますし、企業の大きな収益にもつながります。ですから、気楽に使ってしまうということは許されない。活用するにもしっかりとルールを守る必要があります」

宮島委員
「そうした中で日本にとって問題になっていることがあるんです。日本の漫画やアニメは大人気ですが、海外のサイトで不正に公開している海賊版サイトがあります。漫画などのただ読みができてしまうんです。それだと制作側にお金は全然入らない。著作権の侵害です。コンテンツの流通を促進する団体の調査によりますと、このただ読みなどの被害額というのが、映像、出版、音楽、ゲームで2兆円にも上っているということなんです」

橋口キャスター
「すごい額ですよね」

宮島委員
「本来はそうした漫画やアニメを創ったクリエイターやコンテンツ業者に渡るべきお金とも言えますので、本当に莫大なんです。気楽に読めていいと思ってしまうかもしれませんけれども、そういうことをすると結果的に日本のクリエイターが育たないなど、全体の被害になってしまいます。私達はSNS時代、いろいろ発信ができる時代ですので、つい作品をコピーしたり、気楽に発信してしまうかもしれない。ですけれども、ちゃんと知的財産を守ることで制作者の権利をしっかり守る、そして育てる必要があります」

橋口キャスター
「海賊版サイト自体も良くないですけれども、利用する側もそういったものを使わないんだっていう意識が大事ですね」

宮島委員
「本当に皆が知る必要があるんですがなかなか、難しいなというところはあります」

宮島委員
「4月26日、この日は世界知的財産の日。その重要性を確認する日で私もシンポジウムに出てきました。今回のテーマは『女性と知財』で、いろいろな立場の人の知的財産を最大限活かすことが今キーワード。多様性、さまざまな人のアイデアや技術を活かすとことが知的財産の強みになり、全体のイノベーション、社会や経済の変革に繋がるというお話がありました」

橋口キャスター
「日本では知的財産はしっかり認識されているんでしょうか?」

宮島委員
「なかなか難しいですね。いろいろなところで努力はされているんですけれども、こうした課題があります」

「まず、企業が金融機関からお金を借りるときの判断なんですけれども、企業が技術の特許を持っていても、なかなかその重要性、価値が、金融機関の融資の判断のところで、十分に評価されないということが課題になっています」

「それから、学校教育。こういった知的財産の話は学校でもしっかり教育をしてほしいと思うんですけれども、その教育の現場では著作権などは特別な扱いがあるんです。授業で使う音楽をコピーしたり、試験に出すということを教育の場ではやっていいことになってるので、なかなか、自由に使える学校の現場で著作権の重要性を教育するだけでは、ちょっとわかりにくいのかなと思います。学校教育をしっかりすることは大事。例えば、高校生が文化祭でイラストを書いたところ、卒業した後、次々にそれに手を加えられて、知らないうちに使われていた、そういう訴えもあるんです。意識は学生の中でもそれぞれ違うかなと」

「さらに今、デジタル時代でいろんなものが出て、生成AIのつくったものの著作権ですとか、チャットGPTは、そもそもどれをどういうふうに使ったのかがわからないということもあります。ですから、新たなルールが必要になっています。今日まとまった知的財産推進計画でも、新たに流れに対応することが非常に重要だとされています。私達も、ネットやAIを使ったり、発信をするということが多くなってきているんですけれども、その時に、知的財産を少し意識したいです」

橋口キャスター
「私自身もしっかり知的財産を意識していきたいなと思います。ニュース1から解説は、経済部の宮島解説委員とお送りしました」