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【解説】電気自動車開発の要「全固体電池」とは――例えばタピオカとミルクティーの関係です

2022年4月10日 12:00
【解説】電気自動車開発の要「全固体電池」とは――例えばタピオカとミルクティーの関係です
実験用の全固体電池のサンプルを持つ日産自動車の内田誠社長

日本テレビがテレビ局として初めて日産自動車の次世代バッテリーの開発現場に潜入しました。日産の内田社長が私たちのインタビューで「早く実現したい」と語った電気自動車の次世代バッテリー「全固体電池」とは一体どのようなものなのか。一から解説します。

■電気を生み出すための要素

「あれ、あと何%だっけ」とスマートフォンの充電残量をいつも気にしてしまうほど、いまや私たちの生活には欠かせないバッテリーですが、そもそも電池はどのような仕組みで電気を生み出しているのでしょうか。

電池には、電気を取り出すためのプラスとマイナスの「電極」、化学反応により電気を発生させる物質「活物質」、プラスとマイナスの電極の間にあって電気を運ぶための「電解質」の3つの要素が必要です。乾電池やスマートフォン用のバッテリーなど電池の種類によって「電極」「活物質」「電解質」の物質の材料が異なっています。

スマホやノートパソコンや電気自動車のバッテリーには、「リチウムイオン電池」が使われています。

「リチウムイオン電池」は固体の「電極」固体の「活物質」液体の「電解質」が使われています。液体なのにスマホを振ってもちゃぽちゃぽと聞こえないのは、液漏れしないよう密閉された頑丈な入れ物に入っているためです。一方、全固体電池とは電池に使われている“全て”の材料を固体にしたものを「全固体電池」と呼びます。

■リチウムイオン電池はタピオカミルクティー!?

一大ブームになったタピオカミルクティーを例に、従来のバッテリーと全固体電池を比べてみたいと思います。

スマホやパソコンで使われているリチウムイオン電池。2本のストローを「電極」、タピオカを化学変化を起こす「活物質」、ミルクティーを電気を運ぶ役割の「電解質」に例えてみます。そうすると、全固体電池はこのミルクティーの部分が固体になったものとイメージすることができます。

■全固体電池のメリット

「全固体電池」にはこれまでのバッテリーに比べて優れている部分がいくつもあります。

まず、液体ではなく、固体の材料が使われているため、液漏れの心配がなく密閉された頑丈な入れ物が必要ありません。タピオカミルクティーもミルクティーが固体だったらこぼれる心配はありません。

また全固体電池はバッテリーの形状を薄くしたり折り曲げたりすることも可能です。形も薄く出来るので、何枚も重ねて使用することで省スペースで大容量かつ充電時間も短縮できます。

今回テレビ局として初めて取材した日産総合研究所。

作業をする場所は水分で品質に変化を起こさせないため人の汗も許さないほどの乾燥した場所でした。そこでの開発のカギは、“いかに均等に圧力をかけて薄い固体にするか”。固体の正体は実は粉末。原料となる粉に圧力を均等にかけて、薄くして固めます。

わずかな圧力のかけ方の違いで、性能が大きく変わるということです。研究員は何度も繰り返してちょうどいい圧力のかけ方を実験しています。実験を見学した内田社長は「本当に繊細な作業を繰り返しやって、課題を解決している。形として見えてくると、未来がここから生まれてくると感じられる」と驚いていました。

この夢のようなバッテリー「全固体電池」はもう間もなく自動車に搭載される予定です。

日産には自負があります。

他社がここ数年で電気自動車を発売してきたのに対し日産は2010年に初めての電気自動車リーフを発売しています。「他社に先駆けて販売しているので、全固体電池の電気自動車を早く世に送りたい」と内田社長は語ります。

今後日産は2024年度までに全固体電池の試作ラインを横浜工場に作り、その4年後の28年度までに量産化を目指す予定です。そして、30年には世界で電気自動車「リーフ」の550万台分の電池の生産能力を目標にしています。