【特集】若者たちが活躍する農業法人 社員の半数は20代 担い手不足が深刻な農業 その未来とは《新潟》
担い手不足が深刻な農業ですが、若者たちが次々に就職し、社員の半数が20代という、ある農業法人を取材しました。
黄金色に実った稲穂。
実りの秋を迎えコンバインの音が響きます。
新潟市南区にある田んぼで収穫作業を行っているのは若者たちです。
農業法人「盈科」 入社1年目 伊藤広貴さん
「大きい機械や新しいことできますし、景色が毎回変わって違うのでそれが楽しいなと思います」
農業法人「盈科」 入社3年目 斎藤愛里さん
「毎日楽しいですし、やりがいを感じてやっています」
田んぼを管理するのは新潟市の農業法人「盈科(えいか)」。
社員16人のうち半数は20代の社員です。
今、固定給をもらいながら農業に携わる働き方が若者の就農を後押ししています。
この日の出勤は朝8時。
打ち合わせを終えた後、それぞれ軽トラックに乗り、田んぼに向かいます。
こちらの農業法人は、約100ヘクタールの田んぼでコメ作りをしています。
先輩から指導を受けていたのは、ことし入社した新人社員の伊藤広貴さん(20)です。
農業法人「盈科」 入社1年目 伊藤広貴さん
「コンバインに乗る前は不安だったんですけど、一回やって慣れてからはすごくスイスイと行って、だんだん感覚がつかめてきて楽しくなってきました」
三条市出身の伊藤さん、実家も農家です。
農業高校を卒業後、農業大学校に進学しましたが、実家で就農せずに農業法人への入社を決めました。
農業法人「盈科」 入社1年目 伊藤広貴さん
「今、祖父が農家をやっていますが、高齢で以前は作付面積も多くありましたが、年を取るにつれて面積が少なくなってきて。1人で現実的な話、食べていくことを考えるときついと思って、農業法人に就職を決めました。」
コメ王国と呼ばれてきた新潟。しかし現在、岐路に立たされています。
県内の農業従事者はこの20年で約4割近く減少。
65歳以上が7割を超え、平均年齢は68.9歳です。
一方で、農業の法人化が進んでいます。
県のまとめでは、10年間で増えた農業法人は372にのぼります。
新たに農業を始めた人のうち、半数以上が農業法人に就職しました。
新潟のコメ作りを未来につなげるために、法人化がカギとなっているのです。
農業法人「盈科」 児玉智志社長
「やはり、高齢化の方で辞めていかれる方がほとんどなので、そういった方の田んぼですね」
盈科では、病気や高齢により田んぼを手放した人の農地を積極的に引き継いできました。
作付面積はこの10年間で2倍ほどに増えたといいます。
農業法人「盈科」 児玉智志社長
「離農者が多い、担い手がいないと言われている中で、じゃあ担い手を育てないといけないと気持ちを切り替えた」
コメ作りの担い手を育てたい。
盈科では、これまで経験者を中心に採用していましたが、おととしの春から新卒採用を開始。
すると、この春までに新卒で4人、中途も20代を3人採用することができました。このうち3人が女性でした。
担い手不足が深刻化する中、なぜ若い人材が集まるのでしょうか。
農業法人「盈科」 児玉智志社長
「うちの会社で思っているのは“誰でもできる農業”。イネの管理で分かりやすく言うと、中干し、田んぼを乾かす時期がありますが、一律で田植えした順番で作業していく」
これまで個人の勘や経験に頼ってきた作業は、マニュアル化し初心者でも取り組みやすいように変えました。
また、社員の労働時間や休みも管理。若者に選ばれる職場をめざしています。
新発田市出身の斎藤愛里さんは23歳。専門学校を卒業後、おととし盈科に入社しました。
Q農業やっていると言うとどんな反応される?
農業法人「盈科」 入社3年目 斎藤愛里さん
「すごく驚かれます。まず女性というので、びっくりされたみたいで軽トラとか作業しているとすごく見られたりしました。この会社を調べたとき休みも全然ありましたし、実際働いてみて休みもたくさんありますし、そこが魅力だと思いました。労働時間とか休みがきっちりしていて」
盈科では、農業の魅力を伝えるための発信も。斎藤さんが持っていたのはカメラです。
ピークを迎えた稲刈りを撮影していました。
農業法人「盈科」 入社3年目 斎藤愛里さん
「ユーチューブと、ティックトックとインスタグラムに動画を上げているんですけど。主に毎日の作業動画ですね。この時期であれば稲刈りの動画を上げたり…」
こちらはユーチューブの公式チャンネル。農業法人の日々を楽しく動画にまとめています。
中には10万回再生を超えるショート動画も。
農業法人「盈科」 入社3年目 斎藤愛里さん
「ユーチューブとか上げてから、ことし新卒で入った方とかもSNSを見てきたという人が多くて、そういうところで反響があります」
この日は社員がそろっての昼食です。収穫したばかりの新米を味わう試食会。
去年は猛暑に苦しんだということですがことしの出来には自信があります。その味に思わず笑みがこぼれます。
新卒で入社して3年目の斎藤さん。植物の成長を見守りみんなで収穫する農業に大きな魅力を感じています。
Q農業という道を選ばれて良かった?
農業法人「盈科」 入社3年目 斎藤愛里さん
「はい良かったです。私は本当に素直に良かったです。私の小さな力ではどうにかできるとは思っていないけどSNSとかの力を使って若い人がもっと農業に興味を持ってくれたらいいなと思っています」
おいしい新潟のコメを守るために。
児玉社長は今後も若い人材を雇用して担い手として育ていきたいと話します。
農業法人「盈科」 児玉智志社長
「今後も新潟って米どころとずっと言われているじゃないですか。そういった景観、田んぼだけじゃなくて、暮らしという意味でも田んぼを守っていかなきゃいけないと考えています。担い手がいなくなってきている中で私たちが担い手をつくっていくというイメージで農地を耕してく」
担い手不足、高齢化で帰路に立つ新潟の農業……そんな中、農業の道を志した若者たちが奮闘しています。
2024年9月24日「夕方ワイド新潟一番」放送より