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庄内で「低利用魚」「未利用魚」と呼ばれる魚の活用を探る動き 将来的に食卓に並べたい

2024年2月23日 18:40
庄内で「低利用魚」「未利用魚」と呼ばれる魚の活用を探る動き 将来的に食卓に並べたい
未利用魚

鶴岡市でいま、市場に出回ることがほとんどない「低利用魚」「未利用魚」と呼ばれる魚の活用を探る動きが出ています。これまで食べられてこなかった魚を“未来の食材”として将来、食卓に並ぶことを目指す活動を取材しました。

1月、鶴岡市で開かれた「日本海寒鱈まつり」。

庄内の冬の味覚「寒だら汁」の店舗がずらりと並ぶ会場の一角で、凍った小袋を準備しているブースがありました。

「こちらのテントではただいま普段、市場に出回らない魚を使ったパスタソースを無料で配布しています」

来場者に配られているのは冷凍のパスタソース。

ソースの具材は「寒ダラ」ではなく、「キツネダラ」とも呼ばれる「タナカゲンゲ」という魚の切り身と、「ノロゲンゲ」という魚から作った魚醤です。

「(ゲンゲご存じでしたか?)知らないです」「(馴染みは?)ないです。初めてです」「名前だけは知っていますね。(食べたことは?)ないかもしれません」

パスタソースを配っていたのが、低利用魚などの活用を目指す「ネクストジェネレーションフィッシュ研究会」です。

鶴岡市農山漁村振興課の森居 光司専門員「実際には取れているが様々な理由で市場に出回らない魚、一般的には低利用魚・未利用魚と呼ばれているものを庄内でもたくさんあるのでまず広く知ってもらうことを目的に設立した研究会」

「低利用魚」「未利用魚」と呼ばれる魚は「調理に手間が掛かる」、「大きさが揃いにくく出荷しづらい」といった理由で市場に出回ることがほとんどありません。タナカゲンゲやノロゲンゲも「低・未利用魚」に該当します。研究会は今年度立ち上がり、鶴岡市と県水産研究所の職員や漁業者、料理人などがメンバーとなり、庄内浜で取れる「低・未利用魚」の活用方法を探っています。活動が始まった背景には近年、これまで取れていた魚が獲れなくなっている状況があります。

県漁協によりますと、庄内沖の去年1年間の漁獲量は約2648トン。これは平成以降で最も少なく、3年連続で過去最低を更新しました。庄内浜で水揚げされる魚の種類は150ほどですが、前の年に比べてサケが6割減り、ハタハタが9割以上減るなど一部を除いて全体的に減少傾向となっています。

温暖化で魚の生息環境が変化し、水揚げ量に影響が出ているとみられています。

森居専門員「庄内だけに限らず、日本全体もそうだが、魚の漁獲量そのものがいま年々減ってきている状況にある。水揚げされるものをしっかりと活用していくという観点から取り組みを進めている」

県水産研究所は低・未利用魚が庄内沖の底引き網漁でどのぐらい取れるのか調査しました。

県水産研究所の五十嵐 悠 研究員「大体一回の漁獲物の重さのうち2、3割くらいは売られても値段がすごく安かったりまったく活用されていない魚でした」

低・未利用魚は漁で取っても売り物にならないとして、いまはすぐに海に戻してしまうということです。そのため、どのぐらい数がいるのかといった生息状況は分かっていません。

研究会はこれらの魚を使って一般家庭にも普及する”未来の食材”づくりを目的に活動しています。

去年の秋。低・未利用魚を活用して料理を提供している東京都内のイタリアンシェフを講師として招き、料理教室を開きました。

講師の前田祐二さん「低・未利用魚というが食べたらおいしい魚もいっぱいあるのでただ知られていないだけ、食べ方を知らないだけなので」

食材は地元・鼠ヶ関で水揚げされた「エイ」や「ガンコ」、「タナカゲンゲ」など5種類です。

さらに、調味料として、県水産研究所が開発した低・未利用魚から作った魚醤を使います。

五十嵐研究員「底網漁で混獲するゲンゲノロゲンゲ、クロゲンゲ、 アゴゲンゲという魚がいるがそれを原料にした魚醤」

県水産研究所では3年ほど前から低・未利用魚を使ってこれまでに魚醤やジャーキーなどを試作し、商品化に繋げる技術を研究してきました。

五十嵐研究員「新たな資源、新たな収入源としていままで使われてこなかった魚がもともと一定数いたので注目をして最大限に活用する目的にして研究を進めている」

料理教室ではカツレツやパスタなど4品が出来上がりました。

研究会のメンバー「魚の旨味があっておいしい」「こうやって実際に食べて使えるのが分かっていけばどんどん使いたいと広がっていくのかなと」

研究会は、低・未利用魚がおいしく食べられることを広く知ってもらおうと加工品の試作を重ねました。そして、「タナカゲンゲ」の切り身と「ノロゲンゲ」の魚醤を使ったパスタソースの試作品を完成させました。

日本海寒鱈まつりでは100人に配布。また、鶴岡市内のフランス料理店シェフが実際に調理している様子を インターネットで公開しました。

ポム ド テールの有坂公寿オーナーシェフ「(市場の魚、現状)少なく高い。となったときに同じ海の恵みには違いないのでいかに有効に活用するかどうしても馴染みがないものは浸透しづらいことがあるのでこういうのがきっかけで認知してくれる人が増えればそれはそれでいいと思う」

2月20日、研究会は今年度最後の会合を開きました。

そこで、パスタソースを食べた22人から寄せられたアンケートの結果が報告されました。

鶴岡市の森居専門員「味の評価についてはおいしいという方が半数ですので一定の評価は得られた。ただおいしくないと回答した方も3割近くいた」

味の評価は「普段食べない魚で抵抗はあったが、美味しかった」「臭みやくせもなくおいしく食べられた」と半数が評価する一方で、「臭いがきつい」「生臭さが気になる」との声も3割ほどに上りました。

商品化されたら購入したいかという質問に対してはー

森居専門員「実際に買ってみたいという方よりもそう思わない人の方が多いという形になった」

また、購入する場合の価格として最も多かったのは「200円以下から600円まで」で、スーパーで販売されているレトルト食材と同様の価格帯を希望していることがわかりました。

しかし、今回ソースの製作費は1袋当たり2400円ほど。「タナカゲンゲ」の原価は一袋当たり100円ほどでしたが、加工方法を模索した結果、加工費は1800円ほどに上りました。

メンバー「次に商品として出すというときにいくらくらいで出せるかなと思って」「これを量産するとしてある程度、型が決まってしまえば加工費はグッと抑えられるのかな」「多分消費者にとってはレトルトパウチと同じと考えると300円から400円」「手間賃などをいれると最低でも400円、500円はないと利益の出る商品にはならない」「いくらうまくても買う人が手間掛かって食べたとかだとそれでは売れない。売れて初めて漁師も助かるわけだから」

商品化に向けた課題も浮き彫りとなる中、自然環境の変化に伴い、漁獲量は年々減少しています。これまで知られていなかった魚が将来、食卓に並ぶ日を目指してー。研究会の模索が続きます。

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