“反トランプ”大物女性議員が落選危機に… 「刺客」「殺害の脅迫」異例の選挙戦 アメリカ
アメリカのトランプ前大統領に対して、同じ共和党内から批判の声をあげていた大物女性議員が、落選の危機に立たされています。さらに、「殺害の脅迫」により、公の場では選挙活動ができないといいます。“異例ずくめ”の選挙戦を取材しました。
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アメリカ・ワイオミング州。西部開拓時代の面影を残し、「カウボーイ・ステート(州)」の愛称でも知られています。
私たちが向かったのは、地元の夏のお祭りです。そこでは、豚など家畜の品評会が開かれ、多くの市民が集まっていました。
トランプ前大統領を支持しているか聞いてみると、「はい」「もちろん」「アメリカを偉大にしてくれるわ」などと答えてくれました。
人気健在のトランプ前大統領。今年5月にトランプ節でこき下ろしていたのが、トランプ氏と同じ共和党で、ワイオミング州選出のチェイニー下院議員についてです。
トランプ前大統領
「ワイオミング州の有権者はこう言うだろう。チェイニーお前はクビだ! ここから出て行け!」
地元の人たちからも、「もうチェイニーは信用しない」「もうこりごりだわ」「チェイニーはワイオミング州の代表にはふさわしくない!」といった声が聞かれました。
現職のチェイニー氏は、11月の中間選挙に共和党の代表として出馬を目指しています。元副大統領を父に持つ、共和党の大物議員です。
チェイニー氏が激しい攻撃にさらされるワケは、共和党内で数少ない「反トランプ」を鮮明にした存在だからです。
共和党・チェイニー下院議員(去年5月)
「トランプ氏が二度とホワイトハウスに近づけないように、全力を尽くします」
チェイニー氏は議事堂占拠事件をめぐって、トランプ氏の責任を追及する大統領弾劾決議に「賛成票」を投じるなどしていました。
一方、ワイオミング州にある、共和党の地元の事務所には、トランプ前大統領の写真が今も飾ってあるなど、トランプ氏は共和党内で、いまだ強い影響力を持っています。
自らに歯向かうチェイニー氏に刺客候補を立て、共和党代表の座を決める「予備選挙」は、「トランプ派」「反トランプ派」2人の争いになっています。
ただ、共和党の事務所には、トランプ氏が推薦する候補のチラシや看板だけが置かれていました。
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その選挙戦について、20年以上親交がある支援者は――
チェイニー氏を20年以上支援 石油企業幹部
「残念ながら、チェイニーは身の安全に関わる脅迫を受けていて、公の場では選挙活動ができません」
「殺害の脅迫」などが、本人だけでなく支援者にも相次ぎ、選挙活動の日程は一切非公表となっていて、支援者の自宅などで、招待した人のみの少人数の会合を重ねているといいます。
どんな選挙戦なのか、私たちはチェイニー氏が滞在しているとの情報を基に探し回り、ついに居場所を特定しました。
チェイニー氏“極秘会合”出席者
「彼女はついさっきまでここにいたわ」
しかし、集会は完全非公開で、会員制のゴルフ場のクラブハウスで開かれていました。
チェイニー氏“極秘会合”出席者
「FBI(=連邦捜査局)がトランプ氏の自宅に家宅捜索に入ったニュースの話をしてたわ」
20分ほど滞在し、慌ただしく次の会合へと向かっていったといいます。
そんなチェイニー氏に、「異例の応援」がありました。何と、本来ライバルである民主党の党員や無党派の人たちが、共和党の選挙に参加するため、続々と共和党に登録しているのです。
中絶や銃規制などでは、チェイニー氏の考えには同意できないとしながら、「反トランプ」では一致する民主党員たちです。
共和党に登録した民主党員
「トランプ派の候補が権力を握ることだけは避ける。この結果が得られればいいんです」
日本時間の16日夜、ワイオミング州の共和党予備選挙の投票が始まります。“トランプ氏に逆らえばつぶされる”これが現実のものとなれば、党内は恐怖に支配され、トランプ氏の影響力は一層強まることになります。