ウクライナ隣国のモルドバ “親ロシア派”「独立宣言」地域の内部 街にレーニン像や「ロシア」冠するホテルも…
ロシアがウクライナ東部や南部の制圧を目指し攻勢を強める中、不穏な動きはウクライナ以外でも見られます。隣国モルドバの親ロシア派が支配する東部トランスニストリア地域では、4月下旬、電波塔が破壊されるなどの攻撃があり、“住民保護”を名目としたロシア軍の介入が懸念されています。NNNのカメラが4日、そのトランスニストリア地域に向かいました。
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ウクライナ東部ドネツク州では4日、工場がミサイル攻撃を受け炎上し、黒煙と炎が激しくあがっていました。この攻撃で、工場で働いていた10人が死亡しました。
第二の都市ハルキウでは、遊園地に設置されたカメラに、ロケット弾が次々と着弾する様子が捉えられていました。
ロシア軍は、東部の制圧を目指し、攻勢を強めています。
大勢の民間人が避難する南東部マリウポリの製鉄所では、ロシア軍が攻撃を再開し、敷地内に侵入しました。親ロシア派勢力が公開した映像には、製鉄所の中を進む戦車が映っていました。
マリウポリ市長は4日、“製鉄所の兵士と連絡がとれなくなった”と厳しい状況を訴えました。
マリウポリ ボイチェンコ市長
「(製鉄所で)何が起こっているのか、彼らが無事なのかどうか確認できない。昨日まで連絡をとりあっていましたが、今日は残念ながら何もコメントできない状態です」
その後、連絡はとれたといいますが、抵抗を続ける「アゾフ連隊」の司令官は4日、SNSに「敵が製鉄所の敷地に入ってきて2日目になります。血まみれの激しい戦闘が行われています」と悲痛な状況を投稿をしました。
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そのマリウポリから避難した一家に話を聞きました。一家が決断したきっかけはある“ウワサ”でした。
父親
「『(ロシア軍に)市民や子供たちが拉致された』というウワサを聞きました。(我が家は)子供が多いので、親から離してロシアに連れていかれると思って(避難を)判断しました」
4月16日、子供4人を連れ、150キロ以上離れたザポリージャ州の街まで5日間かけて歩いたといいます。
マリウポリ周辺ではロシア軍が“選別センター”と呼ばれる施設を設置して、住民らを連行し政府との関係を調べているとされています。この一家は連行されませんでしたが、“検査をパスしていない人がどうなっているのかは、わからない”ということでした。
母親
「(“選別センター”では)民間人を集めて、身分証明書や携帯電話、SNSなどの検査が行われます。『あなたはロシアに行くためにふさわしい人間かどうか』判断されます。検査をパスしていない人がどうなっているのかは、わかりません」
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ロシアの不穏な動きは、ウクライナ以外でも見られます。
NNNのカメラは4日、隣国モルドバの東部にあるトランスニストリア地域に向かいました。モルドバから一方的に独立を宣言した“親ロシア派”の支配地域です。
トランスニストリアにある最大の4つ星ホテルだというホテルの名前は、「ロシア」です。街の中には、旧ソ連によって使われていた戦車が飾られ、旧ソ連の支配の象徴であるレーニン像もありました。
トランスニストリアでは4月下旬、電波塔が破壊されるなどの攻撃があり、モルドバの大統領が“親ロシア派の自作自演”だと発表しています。ただ、この事件をきっかけに、「“親ロシア派地域の住民保護”を名目としてロシア軍が介入するのでは」と緊張感が高まっているのです。
トランスニストリアと接する村のプルタでは、住民から不安の声が聞かれました。
プルタ住民
「もちろん心配しています。でも、どこに行けばいいの? ここで私は働いて生活しているのに」
別の住民は「ロシアは今(モルドバ侵攻の)理由を探しています。そのタイミングが5月9日(戦勝記念日)かもしれません」と不安を口にしました。
(5月5日放送『news zero』より)