ロシアの“インフラ攻撃” 発電所の3割以上を破壊 真冬を前に…“ほぼ半日”停電も
松野官房長官は、ウクライナでロシア軍と戦っていた20代の日本人男性が亡くなっていたことを明らかにしました。また、ウクライナ全土では、ロシア軍によるインフラ施設を狙った攻撃が相次いでいます。発電所の3割以上が破壊され、大規模な停電が発生するなど、深刻な影響を受ける市民の暮らしを取材しました。
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9日、ロシアがウクライナ南部ヘルソン州の戦略的な要衝からの撤退を発表しました。その日に公開された映像では、ウクライナの兵士が勝利のポーズと共に、国旗を高く掲げていました。
こうした中、ウクライナ側に立って戦っていたとみられる日本人男性(20代)が、9日に死亡していたことが明らかになりました。
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収束の兆しが依然見えない中、ロシア側の標的となっているのが発電所などのインフラ施設です。私たちは、キーウ市内の住宅を訪ねました。薄暗い部屋で出迎えてくれたのは、住人のガリナさん(83)です。
キーウに住むガリナさん(83)
「つかない、これもつかないね。中の物は全部ダメになってしまっている」
停電で、家の中の電化製品は全て使えません。最近では、1日8時間停電する日もあるといいます。その間は携帯電話の電波も届かなくなるため、ガリナさんは不安な毎日を過ごしています。
キーウに住むガリナさん(83)
「(ロシア軍の行為は)非人道的なやり方です」
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今、ウクライナで何が起きているのでしょうか。
先月中旬ごろから、キーウをはじめ、ウクライナ全土でロシア軍によるインフラ施設を狙った攻撃が相次いでいます。キーウ市内のインフラ施設の周辺では、攻撃を受けた建物がそのままになっていました。すぐそばにある発電所を狙ったミサイルが、目標を外れ着弾したとみられています。
ウクライナにある発電所のうち3割以上が破壊された結果、大規模な停電が発生し、市民の暮らしは深刻な影響を受けているのです。真冬の気温が約マイナス20℃にまで下がるウクライナでは、電気が遮断されれば命に関わる事態となります。
キーウ郊外の村に住むペトロさん(58)は、ロシア側の攻撃で家は全壊し、今は仮設住宅で家族とともに暮らしています。
キーウ郊外に住むペトロさん(58)
「(電気が)つかないね」
昼になると始まる計画停電。ペトロさんは、壊れた家から出た廃材をのこぎりで切って、おので割り、まきを作ります。
キーウ郊外に住むペトロさん(58)
「これで体が温まるよ」
キーウ郊外に住むペトロさん(58)
「これはロシア人が作ったものだ。前はなかった」
地下室には、自宅を占拠していたロシア兵が作ったという「まきストーブ」がありました。料理を作ったり暖を取ったり…皮肉にも敵兵が残したストーブが、ペトロさんの暮らしを支えていました。
停電すると水を送るポンプが動かなくなるため、水道も止まってしまいます。水をためるのも、すっかり習慣になりました。さらに、停電の時間は次第に長くなり、今後は12時間に延長されることになるといいます。
キーウ郊外に住むペトロさん(58)
「ロシアがウクライナに何を求めているのか分かりません。私たちは何もしていないのに…。(電気が完全になくなったら)ここで、生きていくことはできないでしょう」
本格的な冬の到来を前に、ウクライナの住民の生活は厳しさを増すばかりです。