北海道で真冬に「マンゴー」収穫 温泉と“秘策”で温度調節
日本テレビなど民放キー局とNHKの6局が参加する気温上昇を止めるためのキャンペーン「1.5℃の約束」です。夏のイメージが強いマンゴーですが、実は今、北海道でも栽培されています。しかも、収穫は真冬。栽培を可能にしているのは自然エネルギーの利用でした。
◇◇◇
みずみずしい果肉が光る南国フルーツの代表格マンゴー。夏に向け出荷される宮崎県産が有名ですが、実は北海道でも栽培されているのです。
作っているのは北海道十勝地方の音更町。真冬には氷点下20℃になることもあります。栽培しているビニールハウスを案内してもらうと、たくさんのマンゴーが実っていました。
なんと、収穫は12月だといいます。一般的な旬とは、ほど遠い「真冬のマンゴー」。肝心のお味は――
池田有里記者
「とても甘くて繊維質を感じない、なめらかな食感です」
条件を満たしたものは、ブランドマンゴー「白銀の太陽」として東京などに出荷されています。ただ、冬に向けマンゴーを作るとなると、気になるのはハウスを温める燃料代ですが、この農家が使っているのは、この地域にわき出ている「温泉」です。
ノラワークスジャパン・中川裕之さん
「これがうちの裏山から出ている温泉の一部なんですけど」
ハウスの地面に配管を巡らせ、冬でも温泉の熱でマンゴーの栽培に適した温度を保ち続けることができます。
なぜ、ここまでして冬のマンゴーを作りたいのでしょうか。
ノラワークスジャパン・中川裕之さん
「この地域の新しい産業にならないかなっていうのが、最初のきっかけなんですけど」
地元出身の中川さんは、通常なら流通していない冬のマンゴーを音更町の新しい産業にしたいと語ります。中川さんは、12年前から冬のマンゴー作りに着手しました。しかし、冬にマンゴーを収穫するには“ある課題”がありました。
宮崎では夏頃の収穫に向け春頃、花が咲きます。この花を咲かせるために、冬に涼しい環境でマンゴーの木を休ませなくてはいけません。一方、北海道では逆に冬に収穫するため、木を休ませるのは夏になります。しかし、休眠には涼しい環境が必要。最高気温が30℃を超えることもある夏の北海道では、暑すぎるのです。
そこで、“ある秘密兵器”を使います。それは、冬に降った「雪」。冬の間に集めた雪を木の皮などで保存しているのです。この雪で夏のハウス内を涼しくしています。
では、なぜ温泉や雪など自然の力を利用しているのでしょうか。
ノラワークスジャパン・中川裕之さん
「自分が石油を販売しているということ、地球に負荷をかけるものを売っているというのが、なにか自分の中で違和感を持っていた」
石油販売の仕事をしていた中川さんは、「地球温暖化が深刻化する中、CO2を少しでも減らしたい」という思いから、環境に優しい農業を目指し、農家に転身しました。
実際に温泉などを使用しない場合と比べると、石油の使用量は3分の1ほどに抑えることができているといいます。
ノラワークスジャパン・中川裕之さん
「自然エネルギーを使って、北海道で作ってるんだって思っていただくだけでも1歩」
自然エネルギーを使って栽培したマンゴーを食べてもらうことで、“環境について考えるきっかけになってほしい”ということです。