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5人に1人…南アフリカ、HIV感染の実情

2010年6月19日 22:31

 「2010 FIFA ワールドカップ 南アフリカ」が行われている南アフリカで、治安とともに心配されているのがHIV(=エイズウイルス)感染の問題。成人の5人に1人が感染しているとされる南アフリカに世界中からファンが集まることで新たな感染拡大も懸念され、政府も対策に乗り出している。

 ヨハネスブルク市内で客を待つ売春婦・シンディーさんは、HIV感染者だ。「(ワールドカップは)とてもいい商売になると思っているわ。(Q客にうつしてしまうことは考えない?)それはないわ。いつもコンドームを使うようにしているから。コンドームなしではしない。かばんにいつも50個以上、持ち歩いているわ」と話す。

 国連合同エイズ計画によると、07年の南アフリカでの成人のHIV感染率は18.1%で、世界最悪レベルとなっている。世界中からファンが集まるワールドカップによって感染拡大を懸念する南アフリカ政府は、スタジアムでコンドームを配るなどの対策をとる方針だという。また、大会期間中、各地で行われるサッカーイベントに集まる人々に対して、感染予防を呼びかける活動も行われている。

 一方、あまりに多くの感染者を抱える南アフリカでは、HIVに対する意識にも変化が生じている。

 18年前に設立された、あるHIV患者専門のホスピスには、現在、約50人が治療を受けながら暮らしている。しかし、症状が悪化してから運ばれてくる患者も多く、最期を迎える人もいる。しかし、「感染後は死を待つしかない」ととらえられてきた見方は変わりつつあり、看護師は「快方に向かった時、家で普通の生活を送ることこそ、感染後の人生です」と話す。

 1年前に重い症状で運ばれてきたドゥドゥさん(33)は、ケアハウスから退院できることになった。「退院後も自分の病状は受け入れるわ。どうしようもないことだから。サッカーが好きなの。もちろんワールドカップは見るわ。いつも神様にワールドカップが始まるまでに退院できるように祈ってきたわ。願いがかなったの」と話したほか、試合は自宅でテレビ観戦したいと語った。

 サッカーの祭典は、病気と闘う人々にも希望を与えている。