【独自解説】『北陸新幹線』関西延伸で“京都新駅”3候補地発表も、問題視される“カネと水” 地元住民に不安が広がる中、負担に見合うメリットの提示はできるのか?
『北陸新幹線』の関西への延伸計画で、京都の新駅の候補地3か所が発表されました。経済効果や災害時の第2ルート確保などのメリットが。ただ、『お金』や『地下水』といった問題も懸念されています。物価の上昇によっては、5.3兆円にもなるといわれる費用を誰が負担するのか?古都の大事な地下水にどんな影響があるのか?現地で取材を続ける『読売テレビ』藤枝望音記者の解説です。
■『北陸新幹線』関西延伸、“京都新駅”の3候補地発表!期待される2つのメリット
『北陸新幹線』京都新駅として提示された3つの案ですが、1つ目が、JR京都駅を西から東に行く『東西案』。2つ目が、北から南に通り抜ける『南北案』。そして3つ目が、JR京都駅から2駅離れたJR桂川駅周辺に作る『桂川案』です。
関西の延伸により、2つのメリットが期待されています。関西経済連合会などの資料によると、全線開業で年間約2700億円の経済波及効果があるとみられています。また、災害などで東海道新幹線が使えなくなった際、東京(関東)と大阪(関西)を結ぶ第2ルートとしての期待も高まっています。
■最大で5.3兆円の負担は誰が?想定より莫大に膨らんだ『費用』と『工期』
ただ、問題が2つあります。1つ目が、『お金』です。
『小浜-京都ルート』を決定した2016年は約2.1兆円の試算で、想定工期は15年となっていました。しかし、明らかになった新たな試算では、なんと約3.4兆~3.9兆円と、値段が約1.8倍に。想定工期もおおむね25年とかなり伸びてしまい、物価上昇で4.8兆~5.3兆円になるのではないかといわれています。この費用を負担するのは、国と地方自治体です。JRへの貸付金を除いた額を、2対1で負担することになっています。
■日本酒、和菓子、ゆば…京都の伝統産業を脅かす「トンネル工事」の影響
2つ目の問題は、『水』です。
トンネル・駅は地下深くに作られる予定なのですが、懸念されるのが、京都の地下に眠る『琵琶湖と同じぐらいの量の地下水』です。かなりの水が溜まっているといわれています。
3Dシミュレーションで説明しますと、上(黄色)の周りの高い所が山・平たい所が京都市内の中心部、下(水色)の部分が地下水です。
京都の地下水は三方を山に囲まれていて、おおむね北から南に通っているのですが、『北陸新幹線』の新ルート候補の中には、そこを東西方向に横断するものもあります。そして、その場所の南のほうには、日本酒が作られている伏見酒造のエリアがあります。
トンネルが東西方向に走ると、北から南に流れる地下水が切れてしまうため、『伏見酒造組合』増田理事長は「水脈を切られると水の流れが変わる」と懸念を示しています。
「トンネルは地下水を引き込まないように掘削する」としていますが、過去には、1990年代に京都市営地下鉄・東西線の工事で地下水位に一時的な変化がみられるなど、影響が出ていることは事実です。
水の影響を受けるのは、酒造業界だけではありません。『京都の伝統を支える水』ということで、和菓子や湯葉など京都の伝統産業にも大きく関わっていて、水は京都にとって重要なものとなっています。
■記者が取材を通して感じたこと―
私の思いとしては、やはり「負担に見合ったメリットを提示できるか」ということだと思います。お金のことなどいろいろ問題はありますが、地元住民の方に「作って良かったな」と思ってもらえるような『北陸新幹線』の建設になってほしいと思いました。(報告:『読売テレビ』藤枝望音記者)
(「かんさい情報ネットten.」2024年8月7日放送)