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肥満と貧困を解消する仕組み、米国進出へ

2010年8月4日 14:54
肥満と貧困を解消する仕組み、米国進出へ

 日本で始まった「肥満と貧困を同時に解消しよう」という取り組みがアメリカに進出した。ニューヨークで開かれた日本の縁日を再現するイベントに現れた男性は、社会起業家の小暮真久さん(37)。小暮さんは、「Table For Two」という団体を日本で立ち上げ、そのアメリカ進出のためにニューヨークにやってきた。そのようすをニューヨーク支局・正田千瑞子記者が取材した。

 「Table For Two」とは、「2人のテーブル」の意味。小暮さんは社員食堂やレストランにカロリー数の少ないヘルシー・メニューを導入してもらい、その一食分の代金のうち20円がアフリカの子供の給食代になる仕組みを作った。「肥満と貧困を一度に解決できる」というコンセプトの元、肥満に悩む人とアフリカの子供双方が一度に健康になれる…それが、「2人の食卓」の意味だ。

 このニューヨークのイベントで軒を並べた屋台のうち、約半数がこのアイデアに参加した。ニューヨーク市民からは「(購入したメニューの)一部が海外の子供を助けるために使われるなんて素晴らしい」などと評判の声もあがる。「ほとんどの所がやってくださってびっくり」と小暮さん自身も驚きを隠せない。結局、この日のイベントで集まった寄付金で、アフリカの子供達の給食約1600食分がまかなえた。

 小暮さんは、「世の中のためになる仕事がしたい」と、サラリーマンを辞めてこの団体を作った。今や、日本で多数の団体が「Table For Two」に参加し、アフリカの学校に400万食以上といわれる給食を届けている。その小暮さんの、次の狙いが成人の3分の1が肥満という「肥満大国」アメリカへの本格進出なのだ。

 小暮さんは、ニューヨークで、いち早く参加を申し出た日系高級ホテル内のレストランを訪れた。導入されたヘルシー・メニューは健美膳。フルコースで500キロカロリー以下。野菜がたっぷり使われているのが特徴で、利用者からは「このメニューは芸術作品のよう。世界の人たちを助ける活動に参加出来るのはとても幸せ」と賛同する声もあがった。

 日本では、参加団体が増えている「Table For Two」。しかし、アメリカでは、まだまだ少ない。小暮さんは金融大手のゴールドマン・サックス証券を訪れた。社員食堂に、「Table For Two」のヘルシー・メニューを導入してもらうためだ。「みんなが知っている企業なので、従業員も多いし、始まったら成果が大きい」と小暮さんはその狙いを語る。「あまりお金がないので、なるべく濃縮してやりたいが、できるだけ足を運びたい」…アメリカを舞台にした小暮さんの挑戦は、まだ始まったばかりだ。