「尖閣諸島や台湾に近づくな」中国が東シナ海での漁解禁も強い制限 北京と台湾つなぐ鉄道は工事進む
中国は16日、沖縄県の尖閣諸島や台湾周辺を含む東シナ海での漁を解禁しました。一方で中国当局は、政治的に敏感な海域には行かないよう漁師たちに指示しています。台湾海峡の緊張が続いていますが、台湾統一を「中国の歴史的任務」と位置づけている中国政府は、北京と台湾をつなぐ鉄道を計画、すでに中国本土の路線は完成しています。ターミナル駅が建設された、台湾に最も近い福建省の平潭島を取材しました。
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NNN 長谷川敬典記者(中国・福建省、16日)
「漁の解禁を祝う爆竹の音が鳴り響く中、数百隻の漁船が出港していきます」
中国南部・福建省の漁港から、漁船が一斉に向かったのは東シナ海です。16日、中国が設定している禁漁期間が終わり、一斉に出港したのです。解禁された海域には沖縄県の尖閣諸島や台湾海峡なども含まれていますが、中国当局はこうした敏感な海域での漁を行わないようにと指導しました。今年は例年より強い制限がかけられているといいます。
地元漁師
「(政府は)敏感な海域へは行かせない。もし行ったのがばれたら、処罰されるよ。台湾海峡にももう行けない」
――なぜですか?
地元漁師
「(中国軍が)軍事演習をやっているからね」
中国軍はアメリカの議員団の台湾訪問に反発して、15日も軍事演習を実施しました。台湾海峡の緊張が続いています。
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中国 習近平国家主席(2021年12月)
「祖国の完全なる統一の実現は、中国台湾の同胞にとって共通の願いだ」
習近平国家主席は、台湾統一を「中国の歴史的任務」と位置づけています。“台湾統一”に対する中国の本気度がうかがえる場所がありました。台湾に最も近い中国・福建省の平潭島です。
記者
「このあたりは非常にのどかな光景が広がっている地域ですが、奥を見ると、不釣り合いなほど立派で巨大な駅が完成しています」
駅舎の中に入ってみました。
記者
「立派ですね。駅の待合室ですが、まるで宮殿のような豪華な造りになっています」
のどかな町に巨大なターミナル駅が建設された理由とは――
駅のスタッフ
「この先は将来、台湾行きの列車が向かいます。今は終点駅ですが、将来は台湾につながるのです」
将来、この線路を延ばし、福建省と台湾を結ぶというのです。中国政府が計画しているのは、北京と台湾を鉄道でつなぐ「京台高速鉄道」です。2035年までの開通を目指し、すでに中国本土の路線は完成しています。
工事は国家プロジェクトとして進められ、わずか2年間で町は大きく様変わりしました。あとは、台湾海峡を渡る橋かトンネルを造るだけという段階になりました。
さらに、中国では、ある歌が大流行しています。
「列車に乗って台湾へ行こう。2035年になったら(台湾の観光地)阿里山に行ってみよう。神秘の日月潭にも行こう」
“台湾の統一後”を見据えたような歌詞が中国で受けていて、SNSにはこの曲に合わせて踊る動画がいくつもアップされています。
さらに中国の地図アプリでは、まだ完成していない台湾海峡を渡る線路も表示され、北京から台北までの経路検索まで可能な状態になっていました。
この鉄道計画に、台湾側は一度も合意したことはありません。中国が一方的に進めている形ですが、中国国民の台湾統一への機運は着実に高まっています。
中国本土の人
「(京台高鉄に)期待しています。もっと便利になります。(台湾に)遊びに行きたくなったら、いつでも行けます」
中国本土の人
「台湾統一は、早ければ早い方がいい。できれば今年の年末に統一できることを期待している」
中国は武力による台湾統一も否定しておらず、今後も軍事演習など台湾への圧力を加え続けることが懸念されています。