ニッポンの「絹織物」を世界へ NYで“ランウェイデビュー” 着物の「伝統素材」を斬新なファッションに
今週、アメリカ・ニューヨークで「日本の伝統素材」をテーマにしたファッションショーが開かれました。着物に使われる織物を、あえて斬新なファッションに変えて世界を目指す、その狙いを取材しました。
今週、アメリカ・ニューヨークで、あるファッションショーが行われました。
NNNニューヨーク支局長 末岡寛雄
「この衣装の素材なんですが、日本の伝統的な絹織物が使われているんです」
海外のモデルが着こなす、個性的で鮮やかなデザインの衣装。実は、再利用されたデニムや、着物などに使われる「日本の絹織物」で作られているのです。
着物の素材を手がけているのは、100年以上の歴史をもつ新潟県の織物会社です。なぜ、ファッションの“聖地”ニューヨークへ“日本の伝統”を進出させたのでしょうか。
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25日、新潟県南魚沼市にある、製造元「やまだ織」を訪ねました。長い間受け継がれてきた伝統的な手法で、繊細な織物が作られています。
やまだ織 保坂勉代表取締役
「海外は、着物としては需要は少ないかもしれないけど、『生地』としては、非常に明るい将来があると考えています」
しかし、いま日本国内での着物の需要は年々減少しています。さらに、“後継者の危機”に直面しているのです。
やまだ織 保坂勉代表取締役
「非常に、後継者不足というのは、深刻な問題になっています。ものづくりという観点においては、昔と同じようにはできなくなってきつつあります」
「やまだ織」は町一番の織物会社で、かつて職人など500人以上が携わっていましたが、今はわずか9人。高齢者が中心だといいます。
そこで、この織物を絶やさないためにも、着物だけでなく、“ファッションの一部”として世界中の人に着てもらおう、と考えたのです。
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今回、ニューヨークでのファッションショーで衣装を制作したのは、世界10か国から集められた若手デザイナーたちです。
絹織物の斬新な使い方に、保坂代表取締役は「非常に衝撃的。ある意味、ショックを受けた部分もあります。素材の使い方という意味では、まだまだ幅があるんだなと感心した部分もあります」と話しました。
絹織物の生地に、デザイナーも…
デザイナー
「日本の伝統的なテキスタイルを取り入れるのは、とても楽しかったです。私たちにとって、また新たなインスピレーションの形となりました」
日本の伝統素材は、海外のモデルにも好評でした。
モデル
「とてもやわらかくて、着心地が良いです。これなら、クラブに行くときなど、外に着て行けそう」
「質感がとても気に入りました。歩いているだけで、とても気持ちが良いです」
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日本国内での需要が減り、事業の継承が難しくなるなか、まったく異なるセンスで世界を目指すことが、伝統産業の生き残る道だと主催者は指摘します。
サクラコレクション 田畑則子 代表理事
「今まで海外に出ていなかったものを出すことで、日本の経済発展につながればということと、モノを通じて人がつながっていくのも、おもしろいなと思っています」
世界に誇れるクオリティーをもつ、日本の伝統素材。若い世代によるグローバル化が、未来へとつなぐカギといえそうです。