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習近平体制へ移行する中国 外交の行方は

2012年1月2日 14:16

 政治や経済、軍事で影響力を増大し、国際社会で存在感を増す中国。今年、中国の外交がどう動くのか注目されている。

 中国では今年秋、5年に一度の中国共産党大会が開催され、胡錦濤体制から習近平体制へと最高指導部が交代する。権力が移行する敏感な時期にある中国が最も重視しているのは「安定」だ。国内を見れば、格差の拡大は依然として深刻な状態。党幹部の腐敗などへの不満から、各地で暴動が頻発している。また、経済成長をけん引してきた輸出もヨーロッパの信用不安を受けて低迷し、景気に減速感が出ている。

 内政上の様々な懸案の解決に全力で当たらなければならない中国は、安定した外交環境を望んでいる。今年の中国外交の展望をめぐり、楊潔チ外相は「さらなる良好な外部環境を作るべきだ」と強調した。中国が安定を維持する上で重視するのは、アメリカ、朝鮮半島情勢、日本との関係だ。

 アメリカとは去年、南シナ海をめぐる問題で対立が鮮明となった。南シナ海で資源を確保し、軍事的なプレゼンスを高めようと海洋活動を活発化させた中国に、アメリカは警戒を強めている。膨張する中国の動きに対抗し、オバマ大統領はアジア太平洋地域を安全保障上、最優先に位置づけると宣言。去年11月の東アジアサミット(=EAS)では、東南アジアの各国と連携し、南シナ海をめぐる問題で対中国包囲網を拡大した。

 アジアの安全保障で、米中の主導権争いが激しくなっている。中国は空母の開発など軍の近代化を推し進めるとともに、領土をめぐる問題やチベット・台湾など「核心的利益」で内政不干渉を主張し、アメリカを引き続きけん制していくとみられる。その上で、アメリカ国債の最大の保有国としての立場を生かし、重要な輸出先であるアメリカと経済面での協力強化を求めていく考えだ。習氏の訪米が今年初めに予定されており、対米関係への発言が注目される。

 朝鮮半島情勢は、北朝鮮・金正日総書記の死去を受けて緊張した。北朝鮮が崩壊に至るなどした場合、中国に大量の難民が押し寄せて国内の安定を損なうおそれもある。中国は、国境を接する朝鮮半島の安定を最も重要視する課題の一つとして位置づけている。金総書記の死去後、速やかに金正恩体制への支持を表明し、北朝鮮を支える姿勢を鮮明にした。北朝鮮の最大の支援国である中国の影響力に各国からの期待が高まる中、調整役の役割を誇示した形。今年初めにも、大規模な食糧支援を実施するとの見方が出ている。活発な中国の動きからは、北朝鮮情勢をテコにしてアジアでの影響力を拡大したいという思惑もうかがえる。

 日中関係は10年の中国漁船衝突事件で冷え込み、両国の国民感情は悪化した。しかし、11年末の日中首脳会談では、危機管理に向けた海洋協議の立ち上げから金融面での協力など、幅広い分野で進展があった。中国側も、東日本大震災の被災地へのパンダの貸与に前向きな姿勢を示すなど、友好ムードを演出した。日中関係は、改善に向けて動き出したといえる。

 中国の対日政策に詳しい清華大学・劉江永教授は、今回の日中首脳会談について「外交政策にブレがあった民主党政権と、戦略的互恵関係の枠組みを再確認できたのは成果だ」と評価する。

 こうした中、次期最高指導者の習氏は軍との関係が深いことから、対日外交で強い姿勢に出るのではないかとの見方が出ている。しかし、中国指導部にとっても、反日感情は政府への不満など若者らの抗議行動に発展しやすい不安材料だ。対日関係の悪化は国内の安定にも影響する。

 日中外交筋は「権力が移行する今年、中国は誰が指導部となっても、隣国・日本との関係を重視し、安定を求める。衝突をできるだけ避けるだろう」との見方を示している。

 東シナ海のガス田の共同開発など、双方の利害が衝突する問題での進展は依然として不透明だが、国交正常化40周年というタイミングを生かして日中関係の改善がどこまで進むか注目される。


★楊潔チの「チ」は竹かんむりの下にがんだれと「虎」