×

  • 日テレNEWS NNN
  • 国際
  • イギリス芸能界でも「性加害」の過去――同様の被害を受けた男性が日本の被害者に“伝えたいこと”

イギリス芸能界でも「性加害」の過去――同様の被害を受けた男性が日本の被害者に“伝えたいこと”

2023年9月10日 16:47
イギリス芸能界でも「性加害」の過去――同様の被害を受けた男性が日本の被害者に“伝えたいこと”
被害者のケビン・クックさん

イギリスのBBCが放送したドキュメンタリーをきっかけに、被害者らが声を上げ始めたジャニーズ事務所の「性加害」問題。実はイギリスの芸能界でも、過去に加害者が死亡した後に性加害の実態が明らかになったケースがありました。その被害者の1人であるイギリス人男性を取材し、同じ「性加害」の被害者に伝えたいことを聞きました。

   ◇

かつて、イギリスBBCなどでテレビ番組の司会を務め、国民的な人気を集めたタレントのジミー・サビル氏をめぐっては、2011年にこの世を去ってから、子どもたちなどへの性加害問題の詳細が明らかになり、イギリス国内に衝撃を与えました。警察当局の捜査に協力した被害者の数は450人にのぼり、200件以上の性犯罪が行われたことが認定されたほか、サビル氏は「イギリスで最も多くの罪を犯した性犯罪者のうちの1人である」と断じられました。

被害者の多くは少女でしたが、実は被害者の中には少年も含まれていました。私たちはサビル氏から「性加害」を受けた男性を取材し、被害の実態のほか、日本でも加害者が死亡後に性加害の問題が取り沙汰されていることをめぐり、同じ被害あった人に伝えたいことなどを聞きました。

■ジミー・サビル氏の「犯行」の実態 人気のグッズをエサに誘い出し…

イギリス東部に住むケビン・クックさん。現在は56歳で、妻とともに暮らしています。クックさん9歳の少年だった頃にサビル氏から性被害を受けました。当時のことについて、私たちに話してくれました。

――つらいご経験だと思いますが、話すことができる範囲で、ジミー・サビル氏から受けた被害について教えていただけますか?

当時、私は9歳で地域のボーイスカウトに所属していました。ある時、ボーイスカウトの中の誰かがジミー・サビル氏に手紙を書き、私たちは彼の子ども向け番組に出演したんです。私たちくらいの年齢の子どもにとって、彼の番組はとても人気がありました。番組内で「ミルクフロート・レース」という牛乳を配達するレースがあって、それに出たかったんです。その撮影自体はとても楽しく、素晴らしい1日だったと記憶しています。

そして別の日に、ロンドンにあるBBCのスタジオでの撮影がありました。出演後、私たちには全員分をまとめた大きなリボンがついた「バッジ」が贈られて、個人では「バッジ」がもらえなかったんです。彼の番組内ではバッジが子どもたちに人気のグッズで憧れの的だったのですが、サビル氏は私に「バッジが欲しいか」と聞いてきたんです。私が「欲しい」と言うと、彼はステージから降りて、私を楽屋に連れて行きました。

そこで行われたことは、当時9歳の子供だった私には、理解できないことでした。

サビル氏は自分の胸に手をやり、私の頭をなでたり全身を触ってきました。そして、はいていたズボンのチャックを下ろして、性器を私の口に無理やり押し込んだんです。私はもがいて泣きました。永遠に続くかのように長く感じました。実際は1分くらいだったと思いますが、最中にドアをノックする音がしました。そして別の若い男が入ってきて、私を殴り、私に彼らの性器を触るよう強要してきました。サビル氏はその男がそこにいる間、ただ見ていて、男が私を殴り性器を押し付けるように促していたんです。その後、サビル氏は彼の手をつかんで殴るのを止めて、何事もなかったかのようにその男は部屋を出て行きました。

サビル氏は私にティッシュを渡し、「もう泣くな、顔を拭け」と言いました。そして、何事もなかったかのように楽屋を出て、戻ったんです。

――この性的暴行の後に、サビル氏は何か言いましたか?

楽屋で脅しをかけてきました。自分自身のことを「キング・ジミー」だと言って、「誰もお前を信じないだろう。だから誰にも言うな。お前の家は知ってるんだからな」と言い放ちました。まるでテレビに出ている時とは別人のようでした。

■“40年間、自分を責めてきた” …疑惑が明らかになり「私は解放された」

――こうした被害を受けて、どう感じましたか?

被害を受けた直後は何が起こったのかよく理解できませんでした。9歳の少年だったので、何もわからなかったのです。

それから少し大きくなって、11歳頃からは何が起こったのか理解できるようになりました。その頃はただただ恐ろしくて、胸が締め付けられるようでした。そしてそれから40年間ほど、自分を責めてきました。そのせいで少年時代が台無しになったとまでは言えないものの、この被害のことが常に頭の中にありました。

ただ、今はこの件について以前より気持ちが楽になりました。皆がサビル氏が起こした事件の恐ろしさを知って、理解したからです。でも、それでもまだつらい気持ちを抱え続けています。このインタビューに答えた後、数日間は苦しみが続くと思います。初めて取材に答えてから9年たちましたが、その間、そうした状況に慣れてきたつもりです。

――被害にあったことを、家族も含めて誰かに伝えるのは難しかったですか?

最初は誰にも言えませんでした。サビル氏が死んだ後、疑惑が明らかになった時、他の人たちも苦しんでいることが分かって私は解放されました。そして少しずつ、日に日にそれぞれの被害者のケースが明らかになって、私の気分は良くなっていきました。当時は女性の被害者ばかりでしたが、もう1人、男性の被害者がいるという話が出てきたんです。妻に私の被害を話したのは、その時でした。妻はショックを受けていて、話してから10分もたたないうちに警察から電話がかかってきました。妻が警察に通報したんです。

両親に話すのはもっとつらかったです。今でもその時のことが頭から離れません。

■自身の経験を語ることで「人々の助けに」

――ご自身の経験をメディアに話そうと思われたのは、なぜですか?

他にも男性の被害者がいると知ったからです。“ここにも男性の被害者がいる”とマスコミに話したかったのです。それで当時、購読していた新聞社にそのことを伝えました。新聞記事が出ると、今度は他の新聞社やテレビ局もこぞって取り上げてくれるようになりました。

私が自分の経験を話せば、BBCがこのような事態を招いたことに対して釘を刺すことになりますし、少年でも性加害を受けるという話が広まれば広まるほど、人々の助けになると思ったからです。

――サビル氏の一連の性加害に関して、番組を制作していたBBCの責任についてはどう感じていますか?

私が被害に遭った当時の1970年代、BBC内にはこのことを知っている人がいたはずで、その人たちには今でも憎しみを持っています。このことが明らかになった時には加害者が死んでいたため、BBCにできることは被害者に補償金を支払うことだけでした。私はそのやり方が好きではなかったので、私に対するお金はチャリティーや他の人たちに寄付しました。

ただ、少なくともBBCはこの事件について気づき、責任を認めてくれました。被害者数人とともに当時の局長に会い、彼は私たちの話に耳を傾け、BBCを代表して謝罪してくれました。

――BBCがサビル氏に関するドラマを今年の秋にも放送する予定です。そのことについてはどう思いますか?

最初は少し疑っていました。ドキュメンタリーではなく、俳優が演じるドラマだったからです。最初は少し懐疑的でしたが、制作陣に対して私の経験について話をしたところ、“ドラマはBBCを擁護するために作られるのではない”ということで、私は安心しました。

撮影された映像を見ましたが、私の経験がそのまま再現されていて、当時の記憶がよみがえるほどに怖く、とてもリアルでした。彼らは本当に素晴らしい作品を作ったと言わざるを得ません。サビル役を演じた俳優の演技も素晴らしかったですし、9年前に私の経験が報じられたことを知らない人にも、この事件を知ってもらうきっかけになると思います。

――ジミー・サビル氏がまだ生きていたら、何を伝えたいですか?

「なぜ、なぜ私だったのか?」「まだ9歳の少年だった私になぜ?」と問いたいです。私が死ぬまで、この怒りは消えないでしょう。

■同じ被害者として日本の被害者に伝えたいこと――“あなたは間違っていなかった”

――日本でもジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による「性加害」問題が明らかになりました。日本でも同様に、加害者の死亡後に明らかになった性加害の問題が取り沙汰されていることについて、どう感じますか?

日本の法律についてくわしくありませんが、もし証拠があり、被害者が告訴しているとしたら、捜査されなければならないと思います。もし被害者の数がとても多いのであれば、法律がどうであろうと関係なく捜査すべきだと思います。こうした事案に警察が動くということを知らしめることで、未来の被害者を減らすことができるはずです。

――同じ性加害の被害者として、日本の被害者に伝えたいことはありますか?

もし怖くて名乗り出ることができない人がいれば、それは以前の私と同じです。体験したことを話すのは怖いと思いますが、名乗り出ることで今、感じている恐怖を和らげることにつながると思います。自分の声で何が起きたのか、話すことを勧めたいです。

メディアに話すことが難しければ、周りにいる誰かに話すことが一番大事なことだと思います。家族や友人でなくても、誰か1人に話すだけでもいい、民間の団体とコンタクトを取るのも良いでしょう。誰かに伝えて、1日1日を大切にすること。「自分がされたことは自分が間違っていたから起きたことではない」ということも、誰かに伝えてもらえたらと思います。あなたは間違ったことをしたから被害にあったわけではないのです。