イギリス名物司会者の性加害 加害者死亡も…被害者の声で“異例の捜査”「社会正義の観点から考えて」
ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長による性加害問題をめぐり、事務所側が7日、会見を行います。かつて、イギリスの芸能界でも「性加害」問題が起き、加害者が死亡しているにもかかわらず、警察が“異例の捜査”を行いました。捜査によって、被害者に伝えようとしたこととは…。
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タレント、ジミー・サビル氏は、かつてイギリスBBCなどでテレビ番組の司会を務め、国民的な人気を集めていました。また、芸能界で華々しく活躍する一方、障がい児支援など慈善事業も積極的に行っていました。
ジミー・サビル氏(2008年)
「(勲章をもらって)誰よりも驚いているよ。光栄だ」
その功績が認められ、ジミー・サビル氏にはナイトの爵位も与えられましたが、ジャニー喜多川前社長と同じように、この世を去ってから子どもたちなどへの性加害問題の詳細が明らかになり、イギリス国内に衝撃が走りました。
被害者の多くは少女でしたが、矛先は少年にも向けられていました。被害者の1人、ケビン・クックさんは9歳の時、サビル氏が司会を務める子ども番組に出演していました。
ケビン・クックさん
「(番組の中で)バッジが子どもたちの憧れのグッズだったんです。それで彼は私に『バッジが欲しいか』と聞いてきました。私が『欲しい』と言うと、彼はステージから降りて私を楽屋に連れていきました」
楽屋の中は、サビル氏とケビンさんの2人きりになったといいます。
ケビン・クックさん
「私の頭や体をくまなくなでてきました。そして彼はズボンのチャックを下ろして、(性器を)私の口に無理やり押し込んだんです。私はもがいて泣きました。永遠に続くのかと思うくらい長く感じました」
性加害の末、サビル氏はこう言い放ったといいます。
ケビン・クックさん
「『誰もお前の言うことは信じない。だからこのことは誰にも言うなよ。お前の住んでるところは分かってるんだからな』と言ってきました。その恐怖にずっと苦しめられてきました。それから30年、40年と私は自分自身も責め続けてました」
2011年にサビル氏が死去し、ケビンさんら被害者たちは一斉に声を上げ始めました。こうした声に押され、イギリスの警察当局は大規模な捜査を開始したのです。
約450人の被害者から事情を聞き、サビル氏が番組収録の合間にレイプに及ぶなど200件以上の性犯罪を行っていたと認定。サビル氏を、「イギリスで最も多くの罪を犯した性犯罪者のうちの1人である」と断じました。
調査の陣頭指揮を執った元警察官が、当時について振り返りました。
ピーター・スピンドラー氏
「それまで警察は『適切に捜査しない』という失敗を犯していたのかもしれません。しかし、捜査によって、『社会正義がある』ということを被害者に伝えようとしたのです。それこそが非常に重要です。被害者たちは自分たちの声に耳を傾けてもらえたことをとても喜んでいました」
加害者が死亡しているにもかかわらず、進められた警察の捜査。スピンドラー氏は、日本について次のような指摘もしました。
ピーター・スピンドラー氏
「(日本の警察には)この事件を真剣に受け止めてほしい。『彼が死んで起訴できない』ということにとらわれず、社会正義の観点から考えてほしい」
10代のころ、テレビ番組の出演中にサビル氏から胸などを触られる被害にあったというシルビアさんにも話を聞きました。たとえ加害者が死亡している場合でも、警察による捜査が必要だと訴えています。
シルビア・エドワーズさん
「イギリスの警察ができるなら、日本の警察にもできるはずです。被害を受けた人たちを救済して、正義をもたらしてほしいです」
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日本でも、「ジャニーズ性加害問題 当事者の会」が刑事告発を検討していると明らかにしています。性犯罪に詳しい青木千恵子弁護士は、ジャニー前社長が死亡していても捜査が行われることに、意義はあると話します。
青木千恵子弁護士
「こういう形で世間に取り沙汰されている。その中できちんと声を上げれば、警察も動いてくれるんだということを社会に知らしめる。そういうふうな社会的意義は、特に今回に関しては出てくるとは思う」
性加害に長年苦しんできた被害者たちの声を、私たちの社会はどこまですくい取ることができるのでしょうか。