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ロシアで“反LGBT法”が成立…当事者が語る「ロシアで起きていることを知ってほしい」

2022年12月8日 18:36
ロシアで“反LGBT法”が成立…当事者が語る「ロシアで起きていることを知ってほしい」
サンクトペテルブルク在住のアレクセイ・セルギーフさん

5日、ロシアで「LGBT宣伝禁止法」が成立した。テレビや書籍などでLGBTについて肯定的に取り上げることを禁止するもので、事実上の反LGBT法といえる。ロシア在住のLGBT当事者がオンラインインタビューに応じ、胸の内を明かした。

■何度も身柄を拘束され、仕事はクビに

――あなたについて教えてください。

アレクセイ・セルゲーフといいます。サンクトペテルブルク在住で、バイセクシュアルのLGBT活動家です。

――ロシアのLGBTはどのような状況におかれているのでしょうか?

場所によります。地方では「LGBT嫌い」がまん延しており、2013年にはLGBTであることをカミングアウトした青年が殺害される事件が起こりました。

一方で、大都市は比較的寛容です。近年の社会学的な調査では、18~24歳の50%以上が「LGBTの平等を支持する」と回答しています。若者たちは西側諸国のドラマや映画を見てきているので、LGBTの存在が正常なものであることを理解しています。

――これまでの活動で身の危険を感じたことはありますか?

私はこれまでの活動で8~9回警察に身柄を拘束され、罰金を支払っています。法的に問題のない1人での抗議活動でさえ拘束されました。2017年には、職場に警察がやってきて「このような人物が働いていて良いのですか」と言われ、その後解雇されてしまいました。

私たちの集会に特殊部隊がドアを破って乱入してきたこともあります。私たちは40分間も壁に押し付けられ、特務部隊のリーダーは「お前らは人間ではない」と暴言を吐きました。

また、私たちの仲間は抗議活動中に暴徒に攻撃され、片目を失明してしまいました。

■ロシアで起きていることを世界に知ってほしい

――デモや集会を行うことは禁止されているのでしょうか?

実はロシアの憲法では、平和的なデモや集会は事前に申請すれば開催可能となっています。しかし、実際には、当局が申請に難癖をつけて却下してくるのです。ですから私たちは、クリエーティブな手法で抜け道を使うようにしてきました。

たとえば、「LGBTプロパガンダ禁止法」を提案したミロノフ議員への皮肉を込めて、「ミロノフを讃えるアリア」を皆で合唱しました。

プーチン大統領の選挙キャンペーン中には、「ゲイはプーチンを支持する」と題した活動を行いました。これなら当局も却下できないですよね。

しかし、戦争(ウクライナ侵攻)が始まってから取り締まりがより一層厳しくなり、こうした活動はできなくなってしまいました。

――今回オンラインインタビューに応じてくれたのはなぜですか?

私は、ロシアで起こっていることを世界に知ってもらうことが重要だと考えています。オープンにすること、公開することが私たちの武器なのです。私たちが話さなければ、誰も話さないですよね。

2012年、私が初めて抗議活動に参加したときのことです。同性愛嫌悪者が集まってきて私たちに暴言を吐き、最終的には暴徒化して子どもや女性も殴られてしまいました。こうした惨事が起きたのは、私が育った町でした。

私の祖母は第一次世界大戦を生き延びたのですが、「ファシズムは人々を差別するところから始まる。そうしたことが絶対に起こらないように努力しなければならない」といつも言っていました。私はその言葉を思い出し、育った町のために戦わなければいけないと気づいたのです。

■ロシアのLGBTは二重の圧力を受けている

――危険を冒して国内に留まり続けるのはなぜですか?

残念ながら、ロシアのLGBT活動家は、2方向からの圧力を受けています。ロシア政府から、そして国外からもです。どういうことかというと、サンクトペテルブルクからフィンランドへはバスや電車で2時間ですから、これまでは何らかの脅威にさらされればすぐに国外へ避難することができたのです。

しかし、今となってはそれが可能かどうか分かりません。今年10月にブルガリアへ入国するときには、「ロシア人はスパイかもしれないので入国させたくない」と言われてしまいました。

LGBT活動家だけではなく、反戦活動家や人権活動家などの状況もかなり厳しくなっています。ただ、本当に命や自由への危険が迫るまでは、国内に留まり自分のできることをやらなくてはいけないと考えています。

――反LGBT法が成立したら社会はどうなると考えますか?

この法律の問題点は、プロパガンダとは何か、デモとは何かといったことが定義されておらず、影響が計り知れないということです。罰金も非常に高額ですが、人々に「自己検閲」させることが目的なのでしょう。

たとえば、私はある人権団体のホームページに、さまざまな家族に関する記事を投稿しています。最近そのサイトを見てみたのですが、LGBTの家族を取り上げた記事だけが削除されていました。まだ法律が施行されていないのにもかかわらずです。

こうした自己検閲によって、LGBTの人々の声が表に出なくなり、それによってLGBTのステレオタイプが広まることになるのではないかと危惧しています。

――「特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)」と反LGBT法の関係についてどう考えますか?

いまロシア国内では、ウクライナ前線での状況に対して不満が蔓延しつつあり、皆が「できるだけ早く終結してほしい」と考えています。ですから、ロシア政府には、ウクライナで起きていることから国民の目を逸らす何か、彼らの支持基盤の中心である保守層に訴えかける何かが必要なのです。そこで反LGBTという切り札が使われているのです。

■私たちは諦めない

いつの時代にも、世界の他の国々と同じように、ロシアにはLGBTの人々が存在していました。スターリン時代でさえも、人々は何とか生き延びて、愛し合ってきたのです。私たちは諦めるつもりはありません。

今回の反LGBT法についても、これまで当たり前だったコンテンツが禁止されるわけですから、「何かがおかしい」と思う人が増えるかもしれません。ロシアが真の民主国家になるためには、人々にはびこっている帝国主義を乗り越えて行かなければなりません。それは非常に苦しいプロセスですが、苦い薬を飲んで、健康を取り戻して行かなくてはならないのです。