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戦争終結も…“ヒーローたち”の厳しい現実

2012年10月23日 15:10

 アメリカ大統領選挙に向けた最後の候補者テレビ討論は日本時間23日午前、「外交」をテーマに行われた。民主党・オバマ大統領は、自らの実績としてイラク戦争の終結を掲げている。その一方で、戦争の終結で増える退役軍人をめぐるある問題が深刻化している。

 イラク、アフガニスタンに駐留経験のある退役軍人は約255万人で、今年9月の失業率は9.7%と高い水準が続いている。

 アンソニー・カンツォニエリさん(26)は、陸軍兵士としてイラクに駐留したが、足にケガをして、08年に退役した。戦争による心の傷でアルコール依存症に苦しんだ時期もあったが、回復後、大学に戻り、MBA(=経営学修士)を取った。しかし、就職活動を始めて約1年たつが、仕事は見つかっていない。カンツォニエリさんは「退役軍人には企業が求める資質が備わっているのに、なぜ失業率が高いのか」と話す。

 長引く景気低迷で雇用の回復が遅れる中、特に退役軍人の失業率が高い理由は、戦争での経験にあるようだ。就職説明会の主催者によると、退役軍人は海外からの任務から帰還後、数か月は気分が落ち込む。その後、一般社会への適応となると難しいのだという。

 国のために戦ったヒーローたちを待ち受ける厳しい現実。不満の矛先は、オバマ大統領に向かう。カンツォニエリさんは「希望とChange(変革)に期待したけれど、約束は何も果たされなかった。僕は共和党支持者だけど、(4年前の)熱気に浮かれてオバマ大統領に投票しました。4年後の今はその決断を後悔しています」と話す。

 10年に及ぶ2つの戦争が生んだ新たな課題が、次期大統領とアメリカ社会に重くのしかかる。