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アメリカ「最高齢の大統領」バイデン氏vs「初の起訴された大統領経験者」トランプ氏――再対決に漂う“閉塞感”

2024年1月1日 9:00
アメリカ「最高齢の大統領」バイデン氏vs「初の起訴された大統領経験者」トランプ氏――再対決に漂う“閉塞感”
バイデン大統領対トランプ前大統領なら「高齢者対決」に

2024年11月に迫ったアメリカ大統領選挙。「史上最高齢の大統領」バイデン氏(81)と「史上初めて起訴された大統領経験者」トランプ氏(77)による再対決の可能性が高まっている。高齢不安や中東情勢、刑事裁判など両者ともに弱みを抱え、選挙戦の先行きは混沌としている。

■「高齢者対決」に閉塞感

24年11月に迫ったアメリカ大統領選挙は、「史上最高齢の大統領」バイデン大統領(81)と、「史上初めて起訴された大統領経験者」トランプ前大統領(77)の対決になる可能性が高まっている。23年12月に発表されたAP通信などの調査では、バイデン氏の再選に56%が不満を持ち、58%がトランプ氏の返り咲きを望んでいない。再選されても2期目の終わりに86歳を迎えるバイデン氏と、4つの事件・91の罪で起訴されているトランプ氏。両者ともに弱みを抱える「高齢者対決」に閉塞感が漂う。

■「打倒トランプ」でしか、まとまれない…

ある与党・民主党関係者は「現職大統領が立候補する以上、バイデン氏を支持するしかない。ただ、相手がトランプ氏でなければ若い候補を選びたい…とみんな思っている。『打倒トランプ』という理由だけでしか、民主党はまとまれない」と、ため息交じりに語った。

バイデン氏も23年12月「トランプ氏が立候補していなければ、私も立候補していたかどうか分からない」と、対抗馬がトランプ氏でなければ、立候補しなかった可能性に言及し、物議を醸した。

「トランプ氏に勝てる候補」として再選を目指すバイデン氏だが、苦戦を強いられている。世論調査では、バイデン政権の支持率は40%前後で低迷。大統領選がバイデン氏とトランプ氏の戦いとなった場合の支持率では、トランプ氏にリードを許している(リアル・クリア・ポリティクス[23年12月21日時点]バイデン氏44.5%/トランプ氏46.8%)

■ホワイトハウス高官「危険水域に入った」

バイデン氏の支持率低迷の要因の1つに、“非白人層”や“若者”など、従来の民主党の支持基盤を固め切れていない点が指摘されている。あるホワイトハウス高官は「支持率が上昇するきっかけがないことが最大の懸念。バイデン氏の支持基盤の中心である黒人とヒスパニック系の支持離れが深刻だ。危険水域に入ったと思う」と危機感をあらわにした。

非白人層は、人種的少数派の権利を重視する民主党の支持基盤とされる。ニューヨークタイムズによると、バイデン氏は、20年の大統領選の出口調査では非白人層の支持を70%以上獲得したが、23年9月までの調査では、支持が53%に低下しているという。

支持離れの要因の1つに、経済政策が評価されていない点がある。失業率は低下し、物価上率も鈍化したものの、日常生活に必要な食料品や自動車、住宅、子育て費用などの値上がりに、賃金が追いついていないと指摘されている。生活の苦しさからくる現状への不満の矛先が、バイデン政権に向いているとみられる。

さらに、イスラエルとイスラム組織「ハマス」による戦闘も、影を落とす。“イスラエルの自衛権”を擁護し、停戦に反対するバイデン政権の姿勢に、アラブ系アメリカ人の支持率は急落し、若者の間にも反発が広がっている。

こうした危機感からか、バイデン氏は23年12月、SNSにオバマ元大統領と共に撮影した動画を投稿した。今も民主党の支持層に高い人気を誇るオバマ氏にあやかり、従来の支持基盤を固めたい狙いが透けてみえる。

■トランプ氏 高支持率も、有罪判決が出たら…

一方のトランプ氏は、大統領経験者として圧倒的な知名度と岩盤支持層を持つ。加えて、エリートや既得権層と闘う姿勢をアピールし、現状に不満を持つ人々の支持を集める。こうした人気を背景に、4つの刑事事件で起訴されたにもかかわらず、「バイデン政権の政治的迫害だ」と“被害者”の立場を強調することで、今のところ高い支持率を維持している。

しかし、選挙戦と並行して行われる裁判で有罪判決が下された場合には、支持が急落する懸念が指摘されている。バイデン氏に勝利するために必要な、共和党内の穏健派や無党派層の支持が得られるかも不透明だ。

正式な共和党の候補にトランプ氏が選出されれば、トランプ氏の勝利を阻止しようと、民主党支持者が固まり、投票率が上がる可能性もある。また大統領選の前哨戦として注目された、23年11月に行われた知事選や州議会選では、バイデン政権の支持率が低迷する中でも、人工妊娠中絶の権利擁護を訴えた民主党が勝利した。大統領選でも人工妊娠中絶の問題が中心的な争点となれば、民主党への追い風になるとみられている。

■「トランプ再選にも備えよ」

投票日まで1年を切ったものの混迷が続く現状に、日米外交筋は「日本がやるべきことは、大統領選の情勢分析することではない。どちらが勝ってもいいように準備をすること。トランプ再選にも備えよということだ」と強調する。ある日本政府関係者は「貿易赤字の解消や在日米軍駐留経費の増額を迫られるかもしれない。あらゆる事態を想定しておく必要がある」とする一方、「事務レベルでの日米関係強化も重要だが、結局のところ時の総理大臣がトランプ氏とやりあうしかない。日本の政権が安定していることを願う」とも語った。

世界の安全保障、日米関係に大きく影響を与えるアメリカ大統領選は、24年1月、アイオワ州から長い戦いが始まる。