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どうなる中国経済の行方、日本への影響は?

2013年1月10日 16:12
どうなる中国経済の行方、日本への影響は?

 経済面においても深刻な影響を与えた2012年の日本と中国の政治的対立。今年の中国経済はどうなるのか。その行方と日本への影響を上海支局・藤田和昭記者が取材した。

 世界第2位の経済大国・中国と、第3位の日本が対立した尖閣諸島をめぐる問題。政府関係者によると、店の焼き打ちや商品略奪などの被害に加え、休業などによる間接的な損失までを含めると、日系企業の被害額は、約100億円にのぼるという。デモは収まったものの、中国での日系メーカーの乗用車の販売台数は一時、6割減(2012年10月、中国自動車工業協会調べ)と大きく落ち込むなど、経済への影響は現在も深刻だ。2012年11月の広州モーターショーでは、訪れた人から「日系の車を買って、壊されるのではと心配です」との声も聞かれた。“日本車は襲撃される”という懸念は消えず、関係者は「業績回復には1年はかかる」と嘆いている。

 自動車だけでなく、日本製品が全般的に売れなくなった影響で、日本から中国への輸出額は7.6%減少している(2012年1~11月、中国税関当局調べ)。さらに、2012年12月の上海マラソンは、反日デモの影響で、予定されていた日系企業の協賛を外しての開催となった。上海マラソン組織委員会の担当者は「(日系企業の協賛を外したのは)大会を順調に行い、日系企業の利益を守るためです」と話す。日中の政治的な対立は、経済やスポーツなど多方面に影響を及ぼした。

 2012年の中国経済は、反日に伴う日系企業の不振やヨーロッパの信用不安などもあり、成長率は7%台にとどまると見込まれている。専門家らは、2013年の中国経済の成長率を8%前後と予測。前年を上回る高い成長率が見込まれている。また、中国共産党のトップには習近平氏が就任。経済面では「持続的で健全な成長」を目標に掲げている。

 中国では2011年に起きた高速鉄道の事故後、新たな鉄道建設が一時凍結されたが、2012年後半からは工事が本格化し、投資額が急激に伸びている。今後も、公共工事などの投資が中国経済のけん引役になるとみられている。また、農村の都市化を進めることで消費を増やす方針も示され、停滞する日本経済とは対照的に急成長を維持しようとしている。

 その成長の勢いを取り込もうと日系企業も懸命だ。2012年12月に上海にオープンした「高島屋」は、伊勢丹などほかの百貨店が立ち並ぶ繁華街ではなく、中心部からは離れた高級住宅地に店を構えた。高級感のある店づくりを目指し、周辺に住む富裕層の旺盛な消費力で売り上げを伸ばそうという戦略だ。また、反日デモで襲撃された湖南省の「平和堂」は、被害を受けた店の営業を再開させたほか、今年の春には新たな店舗を開くなど中国事業の拡大に力を入れている。内需の拡大や農村の都市化という中国政府の狙いは、日系企業にとってもビジネスチャンスなのだ。

 一方で、懸念材料もある。2012年、江蘇省で起きた王子製紙の排水計画に反対するデモでは、環境への影響を懸念した市民の怒りが爆発。計画は撤回に追い込まれた。日系企業が中国の法律を守り、地元政府と協力していても、市民感情が悪化すれば事業がストップするリスクがあるのだ。また、反日デモに便乗し、「日系企業で働くのは危険だから」などの理由で、中国人従業員による賃上げストも起きた。工場のような労働集約型の企業では、人件費の上昇でコストも上がり、“中国離れ”を引き起こしている。

 さらに大きな課題は、改めて反日感情が爆発することへの不安だ。中国側は尖閣諸島の監視船の派遣に加え、領空侵犯に踏み切るなど海と空から日本に対する圧力を強めている。何らかのトラブルがきっかけで日中関係がさらに険悪化すれば、経済面への影響は避けられない。

 経済は、政治に大きく左右されることがあらわになった2012年。日本、中国ともに新たに発足した体制が、どのような“かじ取り”をするかが、2013年の経済の行方にも影響を与えることになりそうだ。