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音楽で日中の懸け橋に ジャズバンドの思い

2013年6月28日 17:05
音楽で日中の懸け橋に ジャズバンドの思い

 「音楽を通じて相互理解を深められないか」

 中国で反日感情が続く中、そんな思いを抱いた日中の音楽家がジャズバンドを結成し、上海で演奏を行った。そのもようを藤田和昭記者が取材した。

 チャイナドレス姿の女性歌手の美しい声と共に、懐かしさを感じさせるジャズの名曲が響く。6月、日本と中国の音楽家で結成された“オールド上海ジャズバンド”の中国初公演が上海で行われた。尖閣諸島の国有化をきっかけに中国では、2012年、反日感情が爆発した。日中国交正常化からちょうど40年という節目だったが、記念行事が次々とキャンセルされるなど、政治や経済だけでなく文化交流にも影響が及んだ。「すごく無力を感じますね。国と国というくくりは、あまりよくないと思う」と語るのは、オールド上海ジャズバンドのボーカルで、日中両国で活動する上海出身の歌手・amin(アミン)さんだ。日中関係の悪化にショックを受けたという。

 ―日本と中国の間にある壁を、音楽を通じて乗り越えたい。

 aminさんは、思いを共有する日中の音楽家たちとジャズバンドを結成し、上海で演奏することにした。そこには「日本のミュージシャンたちがこんなに上海の音楽を愛して、上海の音楽を演奏しているということをみんなに感じてもらいたい」とういうaminさんの思いがあった。

 バンドのメンバーでトランペット奏者の黄啓傑さんは、兵庫・神戸市で生まれ育った華僑の3世だ。今回の公演で初めて上海を訪れた黄さんは「上海はもっとこぢんまりしているのかと思っていた。でも中国だからデカイですね」と語っていた。下町を散策した黄さんとバンドのメンバーは、上海の街を気に入ったようすだ。

 ライブ当日、会場の“SHANGHAI ROSE”には中国や日本のほか、様々な国籍の人たちが集まっていた。演奏前、バンドメンバーで円陣を組み「加油(がんばろう)!」と士気を高める。演奏が始まり、心地よいバンドサウンドが響いてきた。オールド上海ジャズバンドは、日本や西洋諸国の租界があった第二次世界大戦前の“オールド上海”がテーマだ。1920~30年代の上海黄金時代をほうふつさせる懐かしいジャズの名曲を披露してくれた。演奏終了後、観客からは「演奏はよかったわ。日中の交流を深めるのはいいと思う」「音楽に国境はないわ。いい曲で感じがよければ応援します」との声を聞くことができた。在上海日本総領事館・泉裕泰総領事は「いよいよ夏に向けて日本と中国の文化交流、国民同士の関係がよくなっていくのかなと期待が持てる夜だった」と語る。

 終了後の楽屋で黄さんに話を伺うと「楽しかった。やるたびに新鮮。これが上海。感動しました」と答えてくれた。そして、aminさんは今回のライブに手応えを感じていた。

 「上海に来てよかった。みなさんと一緒にできて本当によかったですね。音楽は通じるところがきっといっぱいあるし、色々なボーダー(境)を音楽は越えられる。ライブはその証拠だと思う」

 バンドは、中国でCDをリリース。国境を越えた活動が今後も続く。