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地対空ミサイル“BUK”とは

2014年7月29日 10:46

 マレーシア航空機が撃墜された事件は、ウクライナ東部で今も戦闘が続き、真相究明に向けた動きが進んでいない。撃墜に使われたとされるのは「BUK(ブーク)」と呼ばれる旧ソ連軍が開発した地対空ミサイルだ。マレーシア機はなぜ撃墜されたのか、このBUKを取材した。

 ヒマワリ畑が続くウクライナの首都・キエフ郊外。NNNは25日、特別な許可を得てウクライナ軍の基地を訪ねた。基地の中を案内してもらうと、ウクライナ軍が所有する地対空ミサイル・BUKがあった。白いミサイルが4つ付いていて、大きく見えるが車輪も付いているので機動力があるようにも見える。

 BUKとは、旧ソ連で開発された自走式の地対空ミサイル。高度2万メートル以上を飛ぶ航空機も攻撃できるという。現在、このBUKはロシア軍やウクライナ軍が保有しているが、親ロシア派も手に入れ、ウクライナ軍への攻撃に使っている可能性が指摘されている。

 298人が犠牲となったマレーシア機撃墜事件。24日、現場の調査を監視するOSCE(=ヨーロッパ安全保障協力機構)が新たな見解を示した。墜落現場で撮影された一枚の写真から、機体の残骸に小さい穴がいくつも開いているのがわかる。OSCEは、これが「弾痕のような穴だ」との見解を示したのだ。

 陸上自衛隊でミサイル部隊を指揮していた元陸上自衛隊高射学校長・武田正徳氏は、「機体の残骸に3、4か所弾痕がありますが、地対空ミサイルによる破片があたったためだと思われます」と話し、BUKのような地対空ミサイルによってできた穴によく似ていると指摘する。

 では、ミサイルはどのように発射されるのか。地対空ミサイルを発射するには、指令を出す車両、レーダー、ミサイルを積んだ3種類の車両のセットが必要だという。複雑な操作を行うため、多く人手を必要とするBUKは、十分に訓練された組織でなければ扱うのは危険だという。

 元陸上自衛隊高射学校長・武田氏「自衛隊の感覚からいけば半年から1年は最低限必要ですし、自信を持って装備として使うには2年くらいのオーダーでの訓練が必要」

 アメリカのオバマ大統領は事件発生後まもなく、ミサイルは親ロシア派の制圧地域から発射されたとの見方を示すとともに、その背後にはロシアによる訓練などの支援があると指摘した。

 さらにアメリカ政府は先週、「経験が不足している人物が誤って発射した」との見方を新たに示した。専門的知識が必要なのに、誤射をしてしまった可能性とはどういうことなのか。そのカギは、ミサイルの発射に欠かせないレーダーにあった。BUKのレーダーは、飛行機に信号を送りその返答によって敵と味方を識別するという。

 元陸上自衛隊高射学校長・武田氏「識別というのは非常に重要な手段ですので、指揮官も承知していなくてはいけないし、末端の実際に発射ボタン押す隊員も識別の重要性と識別が何かというのを知っている必要があるので、(それがないと)全体がシステムとして使えない。誤射する形になる。非常に重要な手段」

 一方のロシア側は21日に記者会見し、「親ロシア派に地対空ミサイルは供与していない」と関与を否定した。

 事件発生から10日。墜落現場は依然として激しい戦闘が続いており、国際調査チームはいまだ本格的な調査を始められずにいる。一日も早い原因究明が求められる。