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イラン核問題 協議の行方は?

2015年1月1日 21:50

 イランの核問題をめぐる欧米など6か国とイランの協議は2014年11月24日に最終合意することを目指していたが、合意に至らず7か月延期された。本来は2013年7月が期限だったが、2度延期されたことになり、今年6月末に最終合意できるかどうかは予断を許さないものとなっている。

 これまでの協議の詳しい内容は明らかになっていないが、大きな焦点の1つは核兵器の製造につながるウランの濃縮活動を今後イランにどこまで認めるかだ。イラン側は原子力発電や医療など「核を平和利用する権利」を主張している。欧米メディアによると、約1万9000基あるとされるウラン濃縮のための遠心分離器のうち、現段階は半数近くの維持を求めているとみられる。

 一方で欧米側はさらなる削減を求めており、双方の主張の溝は埋まっていない。交渉関係者は、2014年11月の協議では「遠心分離器の問題で新たな提案がなされた」としている。遠心分離器の「数」をめぐって交渉を続けると双方の国内で不満と反発が出ることは避けられないことから、「数」ではなく核兵器を作れない程度の濃縮の「規模」など別の視点で合意点を探っているもようだ。

 もう1つの焦点は「経済制裁の解除」だ。イランでは厳しい制裁と最近の原油価格の下落などにより経済が低迷を続けているが、国民は2013年の大統領選挙で圧勝した穏健派のロウハニ政権に事態の打開を望んでいる。イラン側としては、体制を維持するためにも原油の輸出と銀行取引などに対する制裁の即時解除を勝ち取りたい考えだ。これに対し、欧米側にはイランに対する不信感は根強く、時間をかけて段階的に解除する考えを伝えているものとみられる。

 イランの核問題をめぐる協議では、IAEA(=国際原子力機関)とイランの枠組みもある。IAEAはイランの核開発について、平和目的だけの活動かどうかを技術的な面から検証するため査察などを行っている。2013年8月には天野之弥事務局長がイランを訪問し、ロウハニ大統領と会談。核爆弾の起爆実験を行ったとされる疑惑について意見交換を行った。IAEAとしては、その実験を行ったとされる首都・テヘラン近くの軍事施設パルチンの訪問を求めているが、いまだ実現していない。

 このほかイランの核問題は、欧米とイランの関係だけでは解決できない。イランと敵対関係にあるイスラエルは「悪い合意を結ぶよりも合意できないほうがいい」と述べ、欧米がイランにウラン濃縮活動を認めようとする動きに激しく反発している。また、イスラム教シーア派大国のイランに対して、スンニ派の大国としてペルシャ湾を挟んで対峙(たいじ)するサウジアラビアも警戒していて、アメリカのケリー国務長官はサウジアラビアの外相らと度々会談し、協議内容の説明に追われた。

 今後の見通しだが、6か国とイランの間で今年3月までに、最終合意の骨格となる「枠組み合意」ができるかが最大の焦点だ。協議ではその後、詳細を詰めて6月30日の最終合意を目指すが、協議関係者は「3月に枠組み合意できなければ6月の最終合意は相当厳しい」と話している。

 ただ、アメリカでは、2014年11月の中間選挙でオバマ大統領の民主党が大敗し、イランに対して厳しい姿勢を取ってきた野党・共和党が議会の上下両院で多数派となった。今後の協議でもイランに対して強硬な態度を取るよう求めるとみられる。イランの譲歩をさらに引き出すために、今年初めにも追加制裁をすべきとの声があがっており、アメリカ議会の動きも交渉の行方に大きな影響を与えそうだ。