×

アメリカ外交 14年回顧と15年展望

2015年1月2日 20:57

 アメリカではオバマ大統領が任期の終盤に入る。2014年、アメリカの威信の低下は止まらなかった。ウクライナ問題ではロシアに歯止めをかけられなかった。制裁には「効果がある」と強調するものの、クリミア半島の併合は固定化され、返還される見込みはない。

 イスラム過激派組織「イスラム国」への対応でも後手に回った。大統領自身、プロバスケットボールチームの「二軍」に例えるなど、その脅威を過小評価していたことを認めている。イラクでの空爆に踏み切ったのは8月に入ってからで、シリアへの空爆はアメリカ人の人質が殺害されたことで硬化した世論に押されるまで決断できなかった。

 この「イスラム国」対策は2015年の外交でも最も大きなテーマとなることは間違いない。オバマ大統領は「有志連合」による包囲網作りを進めている。空爆によって「イスラム国」の勢いに陰りが出始めているという分析も出ているものの、空爆だけで壊滅を目指すのは限界がある。ただ、今のオバマ大統領にアメリカの世論を敵に回す「地上部隊の投入」という選択肢はない。

 シリアでの空爆は退陣を求めていたアサド政権を利することになるという批判もつきまとう。ブルッキングス研究所のマイケル・オハンロン上級研究員は「2015年、イラク情勢が改善される可能性は大いにあると思うが、シリア情勢が改善される可能性は残念ながらほぼない。まだ正しい戦略がないので時計の針は動いてすらいない」と話す。

 一方、北朝鮮をめぐってはこれまでの「核・ミサイル」や「人権」とは異なる新たな対立軸が出来た。映画会社へのサイバー攻撃について、北朝鮮の関与があったと断定したのだ。オバマ大統領は「国の安全保障上の問題」と位置付け、テロ支援国家への再指定も含め検討を進める考えを示したが、中国やロシアの協力を取り付けなければ北朝鮮から譲歩を引き出すのは困難だ。

 内政での「レームダック化」が避けられない中、オバマ大統領はキューバとの国交正常化やTPP(=環太平洋経済連携協定)の合意を達成するなどの「歴史に名を残す」ことに情熱を傾けているように見える。ただ、ネックになるのは国内政治だ。去年11月の中間選挙で大敗した結果、議会の上・下両院で共和党が過半数を握ることになったため、保守・強硬論に配慮せざるを得ないのだ。しかし、議会対策はオバマ大統領の不得意な分野。協力を取り付けるのは容易ではない。

 2015年は対話と理念を重んじ、力による秩序には否定的だったオバマ大統領の外交が「強い野党」の存在によって変化するのかを見極める年になりそうだ。