フェイスブックが発表“仮想現実”で交流?
日本でもすっかりおなじみの“フェイスブック”が“仮想現実”の技術を使ったまったく新しい交流方法を発表した。その狙いはどこにあるのだろうか。柳沢高志記者が取材した。
3月、アメリカ・サンフランシスコの会議場に、世界中のメディアや技術者が集まっていた。ここでフェイスブックの発表会が開かれるのだ。世界で14億人が利用するといわれる交流サイト最大手の“フェイスブック”が開催した発表会。ここで、ザッカーバーグCEOが明らかにしたのは…
「5年前、人々はフェイスブックで“文字”を共有していました」「それが今“写真”や“動画”を経て、今後は“仮想現実”を共有することになるのです」
コンピューター内の仮想の空間で、現実のような体験をする仮想現実の共有をフェイスブックに取り入れていくという方針だった。実は去年夏、フェイスブックは仮想現実の世界を目の前に映し出すゴーグル型機器を開発するベンチャー企業“オキュラス”を、日本円にして2000億円以上で買収していたのだ。オキュラスを使うとどんな世界を体験できるのだろうか。アメリカ・カリフォルニア州のある会社では、オキュラスを使って体験できる様々なプログラムを開発している。特別な手袋を両手につけ、オキュラスを装着、そして両手を前に突き出すと…実際に、ニューヨークの街をスーパーマンのように自由に飛ぶ感覚を体験することができるのだ。自由自在に空を飛んでいく感覚だ。体を傾けることで、上下左右に方向を変えることができる。
ワールド・ビズのピーター・シュルエー社長は「今、仮想現実の業界はワクワクするような、大きな転換点を迎えています。フェイブックやマイクロソフト、ソニー、サムスンなど大手企業が参入し、巨額の投資をしたことで、製品のコストが劇的に安くなったからです」と話す。
こうした仮想現実、利用されるのはゲームの世界だけではない。仮想現実の技術を開発している大学の研究室を取材した。オキュラスの創設者もこの研究室の出身だ。体験させてもらったのはアメリカ海軍から依頼を受けて開発した仮想現実プログラム。軍艦を操縦するトレーニングのためのプログラムだ。軍艦に実際に乗船しなくても、現実さながらの訓練ができるという。この研究室ではアメリカの政府や、大手IT企業からも依頼を受けてプログラムを開発しているということだ。
南カリフォルニア大学のデイビッド・クラム博士は「仮想現実を使えば、新しい状況や存在しなかった新しいものを創造することができるようになります。エンジニアリングや科学の世界でも利用することができます。つまり仮想現実とは、人間の想像力の補助装置のようなものです」と語る。
こうした仮想現実の市場は、2018年までに、世界で約6兆円の規模になるといわれている。こうした仮想現実の世界が、今後のフェイスブックの交流の中心となると明言したザッカーバーグ氏。どうやって仮想現実をフェイスブックに結びつけていくのか、直撃してみると「できるよ!また改めて」ということだった。
フェイスブックでは、将来的に、他の利用者が投稿した映像を、ゴーグルを使ってよりリアルに共有できるようにするとみられる。アメリカでは、若者のフェイスブック離れが指摘される中、仮想現実の技術によって利用者をつなぎ止めることができるのか、注目される。